という疑問にお答えします。私は30代で海外就職を実現しました。
現地採用として海外就職をする場合には日本社会のレールから脱線することになるので、多かれ少なかれリスクはあります。
- 海外就職をして結婚の時期が遅くなるのが不安
- 結婚・出産後に海外へは行くのは難しいのではないか
- 30代を過ぎてから海外へ行っても求人はあるのか
- 20代のうちは海外へ行くよりも日本で仕事の基礎を学ぶべきではないか
など、心配の種は尽きませんよね。
20代だと「早過ぎるんじゃないか」と言われたり、30代以降だと「遅過ぎるんじゃないか」と言われたりします。
私の知人でも40代で現地採用としてインドで活躍している方もいます。従って年齢制限などは特にありませんが、年齢に応じてリスクもあります。
結論としては20代後半が最も最適ではありますが、他の年代でもチャレンジできます。
下記ツイートは、海外就職コンサルタントとして800人以上の海外就職を支援してきたグローバル人材塾の田村貴志さんのツイートです。
海外就職って、20代~30代前半の若者だけが対象となるイメージ強いけど、実はあまり年齢は関係なくて、しっかり経験や専門性がある方だと、40代、50代、60代でも海外で働くことはできます。
— GJJ Takashi 🌏海外就職デスク (@tamura_t) July 18, 2018
そこでこの記事では、年齢毎に海外就職で直面する問題と気をつけるべきことをご紹介します。
この記事を読めば、海外就職へチャレンジすべきタイミングが分かります。
Contents
新卒での海外就職
新卒で現地採用として海外就職をするのは正直なところ中々ハードルが高いです。
- 新卒に対して就労ビザを発行する国が年々減っている
- 日本のビジネスマナーを理解していることが求められる
- 海外の企業は新人を教育する余裕がない
新卒に対して就労ビザを発行する国が年々減っている
まず、アジア各国も年々ビザの要件が厳しくなっており、新卒で就職できる国はかなり限定されます。
2019年現在、ビザの条件は以下の通りとなっています。
中国 | 大卒+2年以上の職歴が原則 |
香港 | 大卒+5年以上の職歴 高卒+10年以上の職歴 |
シンガポール | 大卒 職歴もあると望ましい |
マレーシア | 大卒+5年以上の職歴 |
タイ | 特になし |
ベトナム | 4大卒+5年以上の職歴 |
インド | 特になし |
インドネシア | 大卒 + 5年以上 |
ベトナム、インドネシアのビザはグレーなところも多い(つまり、上記の要件を満たしていなくても発給されることがある)ようです。
しかし、要件は年々厳しくなっているようなので、新卒でベトナムやインドネシアへ就職するのは少し難しいかも知れません。
一方、インドとタイは就労経験が就労ビザ取得の必須要件とされていません。新卒が狙う国としてはインドとタイになると思います。
タイとインドのどちらにするか迷った方は海外就職先としてのタイとインドの比較をご参照ください。
日本のビジネスマナーを理解していることが求められる
日本人に対しては、たとえ現地採用であってもローカルスタッフより高い給与が支払われるケースが多いです(インドの場合は、日本人の給与は3~5倍近くにもなります)。
なぜそこまで高い給与を払って日本人を採用するのかというと、「日本語ができること」に加えて「日本流のビジネスマナーを理解していること」を求めているからです。
専門的な職歴がありシンガポールや香港などで高度なスキルを活かして働く場合は別ですが、アジア海外就職の多くのケースでは日系企業の日本人をクライアントとした仕事か、日本の本社と海外子会社との橋渡し役です。
日系企業のクライアントや日本本社の日本人は、日本語が話せるだけでなく日本流のビジネスマナーを理解していることに価値を見出します。
例えば、インド人は納期を遵守せずにズルズルとスケジュールが延びてしまう傾向がありますが、海外現地採用の日本人に求められている役割は、日本の会社が求めている納期までに仕事を完了させるようインド人をマネジメントすることです。
従って、日本で働いた経験がないと日系のクライアントや日本本社の求めている期待値が分からずに苦労する可能性はあります。
しかし、この点は採用されてしまえば海外でもキャッチアップできるところかとは思います。
海外の企業は新人を教育する余裕がない
日本の場合は「新卒であること」に極めて価値があり、新卒入社をするとビジネスマナーなども教えてもらうことができます。
しかし職務経歴が重視される海外の場合には(日系子会社であっても)新卒であることに価値がありません。
自分自身で日本のビジネスマナー等も含めキャッチアップしなければなりませんので、個人的には2〜3年ほど日本で働いて25歳くらいで海外就職をした方がスムーズではあるかなと思います。
とはいえ、日本で終身雇用制、年功序列型の賃金体系を採用している昔ながらの日系企業に就職してしまうと、入社後3年で退職しようとするときに揉めるかも知れません。
全員が新卒入社で離職率も極めて低い会社は極めてホワイトな企業であると言えますが
と言われ、海外就職のハードルは上がってしまう可能性があります。
だからと言って、あまりにも離職率の高いブラック企業へ入っても消耗するだけでスキルが身につきません。
もし現地採用での海外就職を狙うのであれば、新卒での就職は大手よりも中小ベンチャーの方がオススメです。
IT業界などは、エンジニアに限らず営業や管理部門であっても、業界全体が人材の流動が激しいです。
そういった業界は、入社してすぐに成果を求められるため「3年で一人前」という業界より忙しくスピード感が求められますが、その分だけ成長も早いです。
また、大手だと大きな仕事の一部を担当することになりますが、中小ベンチャーであれば何でもかんでも自分でやらなければならないため、幅広い業務を経験でき、その経験を海外で活かすことができる可能性が高いです。
例えば経理の場合、大手では「債権担当」「債務担当」などといった形で担当が分かれており、それぞれのパートを深く掘り下げることができますが、1つの会社の決算全体を締めるという経験を積むのは難しいです。
中小ベンチャーであれば、個々の業務の難易度は大手上場企業ではないものの、会社の決算や税務の流れ全体を把握することができます。
中小ベンチャー、とくにIT業界などであれば会社の側も定年まで雇用するつもりで新卒採用をしているわけではないと思うので、短期で成長して海外就職をしたとしても、大企業ほどの後ろめたさは感じない可能性が高いです。
リスクを理解してチャレンジしましょう
新卒での海外就職については、海外就職の専門家の間でも意見が割れています。
「新卒で海外就職したら、いつか日本に戻って転職する時に、日本で働いたことがないことがデメリットになることってありますか?」ってよく質問されるんだけど。
どちらかといえば、答えはNO。
他人の目を気にすることからやめにしよう。— nami @自由なキャリア研究家/GJJ海外就職デスク (@yoshida_nami) December 8, 2019
僕も新卒は基本的に日本採用をオススメしています。 https://t.co/dKEYTnrpef
— タク🇵🇭@海外就職の専門家 (@tokamoto1979) December 9, 2019
新卒での海外就職に限った話ではありませんが、1人の意見だけを聞いて決断せず多くの人の話を聞いてください。
新卒での海外就職も不可能ではなく、一般の社会人が受ける新卒教育なども自分自身でキャッチアップできるということであれば、新卒から海外へ飛び込んだ方が急成長は出来るかも知れません。
たとえば海外で働きつつ自分でプログラミングなどを学び起業したいといった場合は、日本で新卒として働く2~3年が無駄と感じるかも知れません。
新卒で海外就職をし、20代にして既に月収1000万円近くを稼ぎ事業家として大成功しているマナブさんなどの例もありますので、「日本で就職したら絶対に後悔する。海外就職をして失敗しても後悔しない」と断言できる方はぜひチャレンジしてください。
自分が新卒での海外就職にチャレンジできるかどうか迷った方はぜひ新卒でのインド就職に成功する秘訣とは?会計事務所勤務Y.S.さんという記事をご参照ください。
Y.S.さんは新卒で海外就職へチャレンジし、インドの会計事務所で活躍されています。
Y.S.さんの記事を読んでいただくと、新卒で海外就職へチャレンジしたときにどのくらいの負荷がかかるのかが具体的に分かるので、この記事を読んで「ワクワクした!自分もチャレンジしたい!」と感じるのであればチャレンジした方が良いかも知れませんし、「これは心が折れそうだ」と感じたら2~3年は日本で働いてから20代後半で海外就職へちゃんレンジした方が無難かもしれません。
20代後半での海外就職
海外就職に最適なのが職務経歴3~5年程度の20代独身です。
26~28歳くらいで海外就職をし、30歳で日本へ戻ってくる方が多い印象です。
メリットとしては
- 30歳で日本へ戻ってきても、転職も結婚も出産も問題ない(日本社会のレールからそこまで脱線しない)
- 職歴があるので海外でも就職しやすい
- 20代なので未経験職種などへのチャレンジもしやすい
などが挙げられます。
「〇〇の資格やスキルをつけてから海外就職をしよう」と考える方もいるかも知れませんが、海外就職のハードルは年齢と共に上がっていくので、まず海外就職してから資格やスキルを身につけることをお勧めします。
海外の方が残業も通勤時間も少ないので、資格の学習時間なども確保しやすいのではないかと思います。
例えば経理関係で米国公認会計士(USCPA)という資格がありますが、この資格についても海外で就職してから現地で学習している人が大勢います。詳しくはアジア海外就職とUSCPA(米国公認会計士)をご参照ください。
という時代錯誤のようなことを言う人がまだいるようなので不安になるかも知れませんが、日本には何百万社も会社がありますので、そういう会社へ行かなければ良いだけのことです。
20代の海外就職であれば新しい職種へもチャレンジができます。
但し日本語のみを使用する仕事だったり、単純作業や駐在員の下働きのような仕事だと日本へ戻るときに転職活動で苦労するかもしれませんので、キャリアアップできる仕事を選ぶように気をつけましょう。
また、これはどの年代でも共通ですが、目的に合った国を選ぶことも重要です。
国の選び方については 【海外就職の動機別】オススメのアジアの国リストの記事をご参照ください。
30代での海外就職
30代独身で海外就職をされる場合には、何よりも結婚や出産とのタイミングとの兼ね合いがかなり気になるのではないでしょうか。
独身の場合
バンコクなどであれば日本人が4万人近くいるため、現地でも婚活パーティーが行われているようです。しかし私が住んでいるインドの場合には現地で婚活はほぼ見込みがありません。
女性の場合には出産年齢との兼ね合いもあるため、30代以降にインドへ来ている女性の多くは独身を貫くかインド人と結婚をしています。
結婚や出産をすると海外就職のハードルは更に上がるので、十分な検討が必要です。
後述しますが、40代でも50代でも海外就職を実現している人はいますので、結婚や出産を優先したいのであれば無理をして焦る必要はないのではないかと思います。
既婚の場合
私の場合は既婚の子どもなしで、32歳で妻と一緒にインドへ来ました。既婚で海外就職をする場合には
- パートナーが海外移住に同意するか
- 同意しない場合は単身赴任でも行くか
- パートナーと一緒に移住する場合、パートナーも働けるか(就労ビザなどの都合上)
- パートナーが働かない場合、1人の稼ぎで2人が生活できるか
- パートナーも海外の生活に馴染めるか
などの問題を検討する必要があり、独身の場合に比べて考えるべきことが多くなります。
しかし、もし家族で一緒に来られるのであれば慣れない海外生活を一緒に乗り切るパートナーとして精神的な支えになります。
なお家族の生活についてインド駐在・現地採用の家族(駐在妻と子ども)の生活という記事でまとめています。
記事はインドに関することですが、インド以外で働かれている方にも当てはまるところがあるのではないかと思います。
子持ちの場合
お子さんがいる方で海外就職を実現されている方もいます。
この場合は、相当に優秀な方で現地採用でも家族を養える給与をもらえる方か、共働きということになります。
現地採用同士で結婚された方で、幼稚園までは現地に通わせることができたもの、小学校へ上がる段階で学費を払うのが難しくなり日本へ帰国したという話も聞きます。
また、もし共働き夫婦で子育てをベビーシッターに任せる場合には、現地の治安も確認する必要があります。
ワイの友達のインド人の金持ち、当然家では何人もメイドやベビーシッター、ドライバー雇ってるんだけど「子どもの学校の送り迎え」だけは自分か両親、もしくは奥さんにやらせるって言ってた。理由は「誘拐される可能性」があるからと。もう10年以上雇っているドライバーすら信用してないって言ってた。
— 野瀬大樹 (@hirokinose) November 11, 2019
子どもが誘拐されてしまったら取り返しがつきませんから、このような点も考慮する必要があります。
30代で海外就職をしても日本へは戻れる
一般には35歳転職限界説などと言われますが、労働人口が減少する中でハイクラス人材であれば35歳を過ぎても転職する人は増えています。
インドの場合ではありますが、私の周囲でも30代で日本へ戻って転職を成功させている人は少なからずいます(インドの場合には「日本へ戻るときの転職で苦労した」という話はあまり聞きません)。
たとえばJAC Recruitmentなどのハイクラスに特化した人材紹介会社であれば転職者の74%は35歳以上だそうです。
30代から海外就職をする場合には、もし日本へ戻る計画があるのであれば、海外でどのようなスキルを身につけて日本へ戻るときにどのような職務経歴をつけておきたいのか、事前にキャリアプランをイメージしてから行かれることをお勧めします。
20代であれば勢いで「エイヤー」でどうにかなるかも知れませんが、30代になるとよりキャリアの一貫性や計画性が問われます。
しかし年齢を経てからこそチャレンジできるポジション、得られる経験というものもありますので、現地採用の海外就職は若い人だけに与えられた特権ではありません。
30代後半からの海外就職の成功例としては「日本での経験を活かして30代後半からベトナム就職」T.K.さんのインタビュー記事をご参照ください。
40代以降の海外就職
正直なところ、40代以降の海外就職については30代の私が詳しく語れる領域ではありませんが、取引先などで40代以上の現地採用の方にお会いする機会はあります。
インドに限定すると、60代に至るまで幅広い年齢で海外就職を実現している人がいます(参考サイト:【スライドで見る】2018年インド現地採用 トレンドまとめ!)。
「海外就職 年齢」と検索すると、35歳以上での海外就職がほぼ無理であるかのような書き方をしているブログも見かけるのですが、何の情報を根拠に書いているのかよく分かりません。
40代以降に海外就職をする方は「海外でキャリアアップをして日本へ戻る」というよりは、日本で築いたキャリアを活かして、ハイクラスのポジションで海外就職を実現するというイメージかと思います。
日本で管理職経験などがある方であれば、現地採用といえどもかなりの待遇で雇用される場合もあります。
さらに50代以降になると、キャリアアップというよりは「子育てがひと段落した段階で、やりたかった海外就職を実現したい」という動機が多いかと思います。
定年以降にリタイアメントビザなどでマレーシアへ移住することを検討する方も多いですが、少し早めに移住することができます。
まとめ
現地採用の場合には日本の厚生年金、健康保険、雇用保険からも外れてしまうので、海外就職にはお金の心配が常につきまといます。
しかし、お金の心配ばかりして海外就職にチャレンジできないまま、人生の最期を迎える直前に後悔することになったら本末転倒です。
年齢にかかわらず海外就職にチャレンジできる可能性はありますので、本気で海外就職を実現したい方はリスクを把握したうえでぜひチャレンジしてください。
年齢に関わらず、後悔しない海外就職をするためには情報収集とキャリア計画が重要ですが、1人でキャリアを計画するのが心細い場合にはプロの力を借りることをオススメします。
グローバル人材塾のキャリアカウンセリングでは、海外就職に必要なキャリアプランを一緒に考えてくれるので、キャリアで悩んでいる方にはオススメです。
詳しくは海外就職の希望者は必見!グローバル人材塾をオススメする3つの理由の記事をご参照ください。