初めまして、インドと中国で働いているTATSUYA(@asia_kaigailife)と申します。
海外駐在や海外就職をすると、現地スタッフとのコミュニケーションで悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
私はインドで4年間働いたあと、中国で働いています。
インドでも中国でも日系企業をクライアントとする仕事をしているため、仕事の半分は日本人とのやり取りですが、残りの半分は現地スタッフとのやり取りです。
現地スタッフとは色々な誤解やトラブルを経験していますが、深刻な感情の摩擦が生じて人間関係のトラブルになり、仕事がやりにくくなったことは一度もなく、中国でもインドでも現地スタッフとは信頼関係を構築できていると自負しています。
そして、コミュニケーションの基本は世界中どこでも変わらないという印象です。
そこでこの記事では、外国人と信頼関係を築いてコミュニケーションを取るために必要な考え方を3つご紹介します。
Contents
外国人と働くコツ1:ローコンテクストなコミュニケーションを取る
アジアは欧米に比べてハイコンテクストな文化と言われますが、その中でも日本は突出してハイコンテクストだと言われます。
- ハイコンテクスト:言葉以外のコミュニケーションを重視
- ローコンテクスト:言葉によるコミュニケーションを重視
分かりやすく言うと、ハイコンテクストは「空気を読め」という文化で、ローコンテクストは「言いたいことがあればハッキリ言え」という文化です。
外国人とのコミュニケーションはローコンテクストが基本
ハイコンテクスト文化同士でも、文化が異なると通じません。
例えば私はインド人の同僚から新築祝いの招待状をもらいましたが、なんとセレモニーの開始時刻が午前4時と書かれていました。
他の同僚に「午前4時はタクシー捕まるの?交通手段がなさそうなんだけど...?」と相談しました。
すると「そういうセレモニーは、午前4時と書いてあったら午前10時くらいに行けばいいんだよ」と言われました。
そして、午前10時に行ったところ、2時間近く待つことになり、他の人達が集まってきたのは正午頃でした。
日本でもこういうことはありますよね?
例えば、就活の説明会で「服装自由」と書かれていたので私服で行ったら、自分以外は全員スーツだったという話を聞いたことがありますが、これがハイコンテクストです。
新築祝いに関するインド人の習慣は典型的なハイコンテクスト文化だと思いますが、たとえ日本人が世界一のハイコンテクスト文化だとしても、インドのハイコンテクスト文化は理解できません。
新築祝いはプライベートなイベントだったので、私が現地で2時間待てば良いだけのことだったのですが、仕事の場合はそうはいかない場合も多いです。
例えば、重要なお客さんと一緒に現地へ行って2時間も待たせたら大変なので、以下の通り確認します。
- 皆さんは午前10時以前に集まりますか?
- 大事な客さんを連れていき、待たせるわけにはいかないので、遅れるリスクがあるなら教えてください
- 遅れた場合、何かペナルティはありますか?
- もし待たせてしまう可能性がある場合、快適に待てる場所はありますか?
などなど・・・です。
解釈の違いが生まれないよう、絶対に誤解のない表現で伝えることが大事です。
海外では「空気読め」「この程度のことは言わなくても分かるだろ」は厳禁で、言葉は全て額面通りに受け取るという前提で行動するのが鉄則です。
オブラートに包まない
どの文化でも率直に言ってはならず、オブラートに包まなければならないことはあります。
しかし、その文化に詳しくない初心者外国人が、曖昧な表現を曖昧なままにしておくと誤解が生じます。
例えば、深刻な赤字が続いて暇な従業員が大勢いるという状況で、外国人のマネージャーに
現在の経営状況を踏まえて、人員も含めた経営計画の見直し案を検討してください
などと言っても、まず伝わらないです。
これを外国語へ直訳しても意味不明ですし、たとえ日本語ができる現地スタッフでも、日本に長く住んでいる人以外は意味を理解できないと思います。
日本のビジネスマンはこういう婉曲な表現を好む傾向がある印象ですが、現地スタッフに理解してもらうには
「業績が悪く、人件費の削減が必要なので、従業員解雇の計画を○月○日までに立案してください」
とハッキリ伝える必要があり、これなら世界中の誰でも理解できます。
もちろん国によってはキツ過ぎる表現と受け取られる可能性もありますが、まずは絶対に誤解を生まない表現でハッキリ伝えたうえで、現地で相応しいとされる表現を現地スタッフから学ぶのが良いと思います。
内容を誤解されてしまうと仕事が進みませんが、表現がキツいだけの場合は「外国人だから表現力が足りないのは仕方ない」と思ってもらえるので、とにかく誤解を生じさせない正確な表現を心がけるのが良いと思います。
5W2Hを意識する
日本のビジネスでも5W2Hは重視されますが、海外では特に重要です。
- 何のために(Why)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- どこで(Where)
- いつ(When)
- どのように(How)
- いくらで(How much)
「何のために」が特に重要です。
一部の日本企業では「上司がやれと言ったらやれ」「上司の命令にNoと言うな」という文化がありますが、これは外国人には通用しません。
個人的には、日本でも辞めた方が良い文化だと思っています。
そこまで極端な例ではなくても、日本では一般的なことが外国人にとっては一般的ではないことがあります。
例えば、日本人の感覚だと「何があるか分からないから早めに対応しておきましょう!」と言えば十分です。
しかしインド人には「なぜ、何があるか分からないから早めに対応しなければならないのか?」が理解されません。
インド人はむしろ「何があるか分からないからこそギリギリに対応した方が良いのではないのか?」と考えます。
例えば、インドでは法人税の申告期限が9月と決まっていますが、申告期限ギリギリになって政府から優遇措置が発表されたりことがあり、早めに申告してしまうと申告が二度手間になるからです。
だからインド人は「何があるか分からないからこそギリギリに対応すべき」という考えるわけですが、早めに対応して欲しいならきちんと"Why"を伝えないと伝わりません。
他によくあるケースとして、中国人やインド人からは「明日までに本社の社長の印鑑をもらってください」などと言われることがあります。
中国もインドもトップダウン式なので、トップの居場所さえ掴めればハンコはすぐにもらえるわけですが、日本の「稟議を通して決済印をもらうだけで2週間もかかる」という企業文化は理解されません。
「急に言われても困る!」と言っても外国人には伝わらないので、なぜ当日に社長の印鑑をもらえないのかを説明する必要があります。
ペナルティの有無をハッキリ聞く/伝える
上記の「何のために必要か?」とも関連しますが、外国人に動いてもらうためにはペナルティを明確に伝えることも必要です。
- 期日までに終わらないと契約を切られる可能性が大きい
- 0.1円だけでもズレていると日本の本社のシステムでエラーになるから、0.1円単位でバシっと数字を一致させて欲しい
- 日本本社は役員会の承認プロセスに2週間かかるから、「明日日本本社の社長のハンコが必要です」と急に言われても困る
などです。
日本だと「参加は自由です」と言いながら全額自腹の実質強制飲み会のようなイベントがあります。
私は「自由参加」「任意」と言いながら参加しないと「失礼だ」「空気読め」と言ってくる一部の日本文化が本当に苦手なのですが、こういうのも外国人には通用しません。
「他の人が残業しているから、自分の仕事は終わっているのに定時で帰るのが気まずい」みたいな空気は外国人には理解できません。
仕事が終わってなければ残業をしますが、仕事が終わっていれば定時で帰ります。
意識改革をするために「意識を改革しろ」と言わない
これもハイコンテクストなコミュニケーションの一種ですが
もう少し社会人としての自覚をもって仕事をして欲しい
などと曖昧な指示を出しても良い結果には繋がりません。
「社会人としての自覚を持って欲しい」「プロとしての意識が足りない」というのは正論かも知れませんが、内容が抽象的で曖昧ため、言われた方は何をして良いか分かりません。
「異性からモテたいならもう少し工夫しましょう」「もう少し自己を大切にしましょう」というアドバイスと同じで、「それができれば苦労はないけど、具体的にどうすれば良いのか分からない」という中身のないアドバイスです。
言われた方は
私は社会人失格だ。もう生きている価値がない。
と、人格攻撃をされているように受け取る可能性もあり、結局のところ意識が変わる可能性は低いので
前日に日本本社社長の押印を求められても間に合わないから、次回から3日前に連絡してください
などと改善点を淡々と具体的に伝えれば良く、メンバーの仕事に対する意識の高低などに言及する必要はありません。
具体的な改善点を伝えたあとの「次回からはもう少し社会人としての自覚を持ちましょう」という一言は、相手を無駄に委縮させるだけの余計な一言で、その一言がなくても言いたいことは伝わります。
同じミスを繰り返す人に対しては
この間も同じことを言ったじゃないか!人の話を聞いてるのか!やる気あんのか!
とブチギレたくなる気持ちも分かります。
しかし本人が本当に忘れている場合に「もっと意識を持ってください!」と言っても、メンツを潰すことになり、委縮させるだけで効果はありません。
同じことを何度指摘しても忘れてしまう人に対しては、口頭ではなくチャットやメールで内容を伝えて、また同じ間違いをしたときに
「〇月〇日〇時〇分のメールで伝えた内容を参照して至急改善してください」
と伝えれば良いです。これを4~5回やるとさすがに本人も
私は同じ指摘を何回も受けているような気がするな?
と気がついて意識が改善されます。
それでも意識が変わらない人については、そもそもその役割が向いてない可能性もあります。
例えば、人柄が温厚で、他の同僚達がやりたがらない地味な仕事を引き受けてくれるけど、注意力が散漫でケアレスミスを頻発しているスタッフAさんがいたとします。
Aさんに「もう少し注意深くミスがないように仕事をしてください」と言うと、緊張してしまって仕事が遅くなるうえに、確認型の強迫性障害のようになってしまって逆にミスが増える可能性もあります。
そこで、人のミスを嬉々として指摘するBさんに登場してもらいます。
Bさんは一般的には嫌がられる性格かも知れませんが、BさんにAさんの仕事をチェックしてもらいます。
Aさんには「間違えてもいいから、とりあえず期日までに終わらせてください」と伝えて、Aさんの成果物をBさんにチェックしてもらいます。
Bさんは人のミスをチェックする仕事が苦痛ではない性格なので、Aさんのミスを高速で全て指摘して直してくれます。
結果的に、早く正確な成果物が出来上がります。
Bさんは「Aさんは注意力が散漫でミスが多いから困ったもんだ」と愚痴りますが、Bさんには「Aさんへの愚痴は私がいくらでも聞くので、直接Aさんには言わないでね」と伝えます。
Aさんに任せず、始めからBさんに仕事を任せてしまうと、「なんでこんな地味な仕事を私がしないといけないんですか?」と反発される可能性もあるので、最初はAさんに任せて、Bさんにチェックしてもらうのがポイントです。
これは一例ですが、わざわざスタッフの意識を改革しなくても仕組みで改善できることもあります。
外国人と働くコツ2:善悪でジャッジせず好き嫌いを伝える
犯罪やコンプライアンス違反のように明確にNGな場合を除いて、善悪で判断することをできるだけ避けるのもポイントです。
この点は性格の問題もあるので難しいかも知れませんが、日本で考えられない問題が発生したときに状況を楽しめるかどうかがポイントです。
私が経験した例をいくつか紹介します。
遅刻しているのに途中で朝ご飯を食べるインド人
朝11時にクライアントのインド人と会議があり、社内のインド人と一緒にクライアントへ向かっていたのですが、大渋滞で大幅に遅れてしまいそうになったことがありました。
既に10時なのに、まだ1時間半以上はかかりそうな見込みなので焦っていたところ、同行していたインド人が
あの店のモーニングは11時までやってるから、まだ間に合うはずだ
と話していてビックリしたことがありました。
訪問先が日本人の場合にはさすがに許されないことですが、その日はインド人しかいないので、まぁそんなもんかと思い、クライアントに遅刻する旨を電話をしたところ
それだけですか?(そんなことでわざわざ電話してきたんですか?)
と言われ、さらにビックリしました。
結局、12時半くらいに到着したのですが、今度はクライアントのインド人が外出していて、戻ってくる気配がないので13時から私達も昼ご飯を食べ、結局打ち合わせは14時から何事もなかったかのように普通に始まりました。
まだインドへ来たばかりで「こんなに遅刻して怒ってるのかな?」と内心ビクビクしていましたが、何の問題も発生していません。
「問題はそれを『問題だ』と思うから問題になる」というのを実感した瞬間でした。
問題は私の頭の中だけで発生していて、現実には何も問題が発生していなかったのでした。
挨拶をしない中国人
先日下記のツイートをしました。
出勤時に挨拶をしてくれない同僚がいて、「嫌われてますかね自分?」と他の人に相談したら、「いや、この会社の中国人は日本式に慣れてるけど、中国では忙しいといちいち挨拶しないのも普通で、彼女は中国系企業が長かったから中国式なだけです」と言われ、そう言われて慣れてみたら特に気にならない。
— たつや@インド→中国 (@asia_kaigailife) August 21, 2023
日本では幼稚園・保育園の時代から挨拶の大切さを教えられます。
欧米も挨拶を重視しているようですし、インド人も毎朝必ず挨拶をするので、挨拶をするのは世界共通の礼儀だと思っていました。
中国でも挨拶はしますが、「毎日顔を合わせてるのに会うたび挨拶する必要がある?」という感覚があるのか、日本人ほど挨拶はしません。
「いただきます」「ごちそうさま」などの挨拶もなく、黙って食べます。
私の同僚たちも、私には挨拶をしていますが中国人同士は挨拶をしないばかりか目も合わせず黙って仕事を始めますし、仕事が終わったら黙って帰ります。
最初は「みんな仲が悪いのかな?」と思っていましたが、職場の人達はとても仲が良く雰囲気も極めて良好です。
私が「会ったら挨拶をするものだ」という日本の常識でジャッジしていたから「挨拶してくれない=自分は嫌われている」という妄想が成り立ちました。
もし私が「私って嫌われてますかね?」と他の同僚に確認しなかったら、ずっとモヤモヤしていたと思います。
確かに挨拶をすることは様々なメリットがありますが、日本のように「挨拶をしない人は人間失格だ」という雰囲気があると、それはそれでデメリットがあるのではないかと感じました。
- 「後輩から先に挨拶をすべきなのに、挨拶をしない後輩は失礼だ」などとイライラする
- 気づかなくて挨拶できなかっただけなのに「無視された」「嫌われた」と誤解を生む
- 相手から期待した挨拶が返ってこないとイライラする
中国にいて「挨拶をしないのが普通」という環境に慣れると、それはそれで社会は回るものだと感じます。
インドにいて「遅刻をするのが普通」という環境に慣れると、遅刻されても日本ほどイライラしないのと同じです。
遅刻することや挨拶をしないことは犯罪でも重大なコンプライアンス違反でもないので、いちいち善悪でジャッジせずに「これでも社会は成り立つのか。ふーん。視野が広がった」と受け止めると海外での人間関係のトラブルは減ると思います。
嫌なことは嫌と伝える
文化の違いを善悪で判断するのはトラブルの元ですが、だからと言って我慢できないことを我慢する必要はありません。
善悪でジャッジする必要はありませんが、好き嫌いの意思表示は非常に大切です。
「善いか悪いか」「何が正しいか」ではなく「好きか嫌いか」です。
ここを我慢すると無意識のうちに現地スタッフに怒りを感じるようになって人間関係でトラブルが生じます。
例えば私の場合、インド人は夜型の人が多く、午後3時くらいから仕事のスイッチが入る人が多い印象でした。
毎月15日に提出しなければならない資料がある場合、15日の午後7時に私へ送ってきたりします。
そこから私がレビューしなければならないので、私も必然的に夜が忙しくなります。
特にコロナ期間中、日本からリモートワークをしていた時には時差が3時間半あるので、日本時間の午後10時半からレビューをしなければなりませんでした。
これが非常にしんどかったので「遅くとも午後2時までに送ってください」と伝えるんですが、なかなか改善されず、毎月鬼のように「早く送って!」と言うとプレッシャーになり鬱陶しがられることもありました。
そこで「日本とは時差が3時間半あって、午後10時半から作業をすると、私の睡眠リズムが乱れるから体調を崩してしんどいから困るんです」と率直に本音を伝えてみたところ、翌月から劇的に改善されました。
ここで「もう少し後工程のことを考えて早めに送るように意識してください」などと説教くさい感じで伝えてしまうと、反発を受けてしまうのではないかと思います。
アンガーマネジメントの分野でよく言われることですが、自分の怒りを伝えたいときはアイメッセージで伝えることが重要です。
「アイ」というのは愛ではなく、英語の一人称のI(私)です。つまり、私が主語のメッセージという意味です。
「私の睡眠リズムが乱れて苦しいです」がアイメッセージです。
それに対して、主語を「あなた」にして「○○すべき」という形式で怒りを伝えても伝わりません。
悪い例:あなたは○○すべきです
良い例:私は○○と感じています
これは上司に伝えるときも同じで、例えば上司が業務量の管理をしっかりしていないから、隣の同僚が毎日職場でネットサーフィンをしているのに自分の仕事ばかり増えてしまい、上司に怒りを伝えたいときには以下のように伝えましょう。
悪い例:上司であるあなたは各従業員の業務量を把握して適切に管理すべきです
良い例:私の業務量が他の人と比べて多すぎるのに気づいてもらえなくて寂しいし、自分が軽んじられてる気がして悲しいです。だから私の業務について相談させてください。
経験上、後者の伝え方の方が確実に伝わります。
怒りは二次感情と言われ、怒りの下には必ず悲しさとか寂しさとか苦しさなどの一時感情があります。
その一時感情を「○○すべき」「○○が正しい」「○○が常識」という自分の規範意識でコーティングしてしまうと、怒りが生まれます。
特に男性の場合はメンツの問題もあって?自分の気持ちをそのままダイレクトに伝えるのを恥ずかしいと感じる人が多く、「○○すべき」という伝え方をしてしまう人が多いような気がするのですが、そうすると確実にトラブります。
「○○すべき」というのは規範意識の話をしていますが、常識というのは日本人同士でも異なるものなので、「あなたの考えは非常識だから、私の常識に従え」という命令として伝わり、反発を受けます。
それに対して「私は○○と感じています」というのは単なる事実なので相手も否定しようがなく、とりあえず受け止めるしかありません。
外国人と働くコツ3:人類共通の価値観と日本特有の価値観を知る
とはいえ「ローコンテクストなコミュニケーションをしましょう」「ジャッジするのを辞めましょう」と言われても難しいと思います。
なぜそれが難しいかと言うと、どこまでが日本特有の道徳で、どこからが人類共通の倫理なのかを判断するのが難しいからです。
例えば「言葉で感謝の気持ちを伝える」というのは人類共通の価値観のように考えがちですが、中国の特に北部では、あまり仰々しく頻繁に感謝を伝えると却って他人行儀だと感じられ失礼になることもあるようです。
日本国内ですら、南関東の人は頻繁に誉め言葉を言うのが礼儀だと考えていますが、関西では褒めすぎると「褒め殺し」と受け取られ、胡散臭いと警戒されることがあります。
私は東京生まれ東京育ちですが、関西人同士が初対面からお互いをディスり合っているのを生まれて初めて見た時には衝撃を受けました。
このように、自分が「人類共通の倫理だ」と思っていることが実はローカルの道徳に過ぎないということは多々あります。
そこで重要になるのが日本のことを深く知ることです。
計画的な日本と臨機応変な中国とインド
日本では「人類共通の正義」と思われていることが実は日本の常識に過ぎないという例をご紹介します。
日本では、約束を破ることは絶対にあってはならないと考えられています。
特に小さな約束を破ることは信用を失墜させることで、絶対に回避されるべきこととされています。
一度約束をしたら絶対に守らなければならないので、日本人や日本の組織は意思決定にとても時間をかけます。
あらゆる角度からリスクを検討して、絶対に問題がないと判断した時にだけ”Yes”と言います。
それに対してインド人や中国人は臨機応変に変更するため、とても臨機応変です。先日下記のツイートをしました。
中国もインドも臨機応変なところは似てるんだけど、中国は組織トップの意思が末端まで貫徹されて、トップの臨機応変な方針変更に末端が根性で対応してる印象なのに対して、インドは上から下へ伝言ゲームする間に内容が変化し、トップの方針は何も変わらないのに末端が勝手に臨機応変に対応してる印象。
— たつや@インド→中国 (@asia_kaigailife) August 18, 2023
このように中国とインドは臨機応変ですが、それぞれの国にも違いはあります(インドと中国の違いについては
【中国とインドの比較】違うようで似ている2つの人口大国の記事をご参照ください)。
インド人の場合、「できるかどうか分からないけど、やってみよう」と思ったら簡単に"Yes"と言います。
しかし実際にやってみたらうまくいかず、「やっぱりできなかった」ということがよくあります。
これを日本の常識に当てはめて考えてみると「約束を破った」ということになりますが、インド人からすれば難しいことに挑戦するチャレンジ精神が素晴らしいと思うわけです。
逆に、日本のように「100%できると確信できない限り"Yes"と言わない」という姿勢は、インド人にとっては保守的に映ります。
日本の特徴を理解するのにお勧めの書籍「異文化理解力」
このように、日本では正しいと思われていることが海外では必ずしも正しくないという例はたくさんあるのですが、どうすればこの違いに気づくことができるでしょうか?
日本の常識を理解するためには、エリン・メイヤーの「異文化理解力」という本がお勧めです。
この本では
- ローコンテクストか?ハイコンテクストか?
- ネガティブなフィードバックは直接的か?間接的か?
- 組織の意思決定はトップダウンか合意志向か?
など8つの指標について、世界の各国がどのような特徴を持っているのかを詳しく説明しています。
世界各国といっても、さすがに約190か国の全ての国を解説しているわけではありませんが、欧米とアジアを中心とする主要国については網羅的に説明されており、日本は全ての項目で登場します。
日本は合意形成に時間がかかり、一度合意されたら変更できないという特徴がありますが、その具体例として日本企業特有の稟議書システムや「空気を読む文化」などが詳しく紹介されています。
この本を読むと、今まで「正しい」と思っていたことが実は日本の常識に過ぎなかったことを理解でき、外国人の振る舞いに対していちいち善悪のジャッジをしなくても済むようになります。
海外で働く人に限らず、外国人と働く機会のある人全員の役に立つ本だと思います。
世界共通の倫理を理解するのにお勧めの書籍「7つの習慣」
エリン・メイヤーの「異文化理解力」が各国の違いを理解するのにお勧めの書籍であるのに対して、世界共通の倫理観を理解するにはスティーブン・コビーの「7つの習慣」がとてもお勧めです。
この本はビジネス関係の自己啓発書だと思われますが、ビジネスに限らず、幸せに生きるための人格の磨き方について書かれた本です。
なので、ビジネスマンに限らず、学生だろうとニートだろうとFIREを達成した資産家だろうと、読む価値があります。
世の中には様々な自己啓発本が並んでいますが、私はこの本がとても網羅的で分かりやすいと思いますし、7つの習慣は世界中どこへ行っても通用します。
例えば1つ目の習慣である「主体性を発揮する」については「刺激と反応の間には隙間がある」ということが書かれていますが、それはマインドフルネスや仏教などの東洋思想にも通じる考え方で、決してアメリカ人に特有の文化ではありません。
特に海外で働くうえで重要だと思うのが第5の習慣であるまず理解に徹し、そして理解されるです。
海外の文化を「おかしい」と否定するのは簡単なのですが、どういう背景でそのような価値観を持っているのか理解する方が100倍難しいですが楽しく、理解する姿勢を持っていると外国人とも信頼関係を築くことができます。
この本1冊だけで世界中どこへ行っても大丈夫だと思います。
日本国内でもコミュニケーションの基本は同じ
以上、外国人と信頼関係を構築するためのコツをご紹介しましたが、実は日本国内でも同じです。
「同じ日本人同士だから、言わなくても理解できるだろう」と思いがちですが、やはり人によって価値観や性格が異なるため、日本人同士でも価値観の相違は発生します。
結局、どんな場合でもコミュニケーションの基本は同じだと思いますが、それが海外だとより極端な形で表れるので分かりやすいのです。