

ずっと海外に住んでみたいと思っていたけど、このさき駐在の機会もなさそうだし、40歳を過ぎた自分に海外での仕事できるチャンスはあるのかな?
私の知り合いに、60歳を過ぎてからインドで仕事を見つけて働き始めた方がいます。
また、海外就職のプロであるグローバル人材塾の田村貴志さんが以下のポストをしています。
海外就職って、20代~30代前半の若者だけが対象となるイメージ強いけど、実はあまり年齢は関係なくて、しっかり経験や専門性がある方だと、40代、50代、60代でも海外で働くことはできます。
— GJJ Takashi 🌏海外就職デスク (@tamura_t) July 18, 2018
50代、60代でも海外で働けるチャンスはあります!
そこで本記事では、シニア世代の海外就職事情と、海外就職するためのポイントについて、グローバル人材塾(以下「GJJ」といいます)に伺った話を基にご紹介します。
Contents
海外就職を希望するシニア世代が増えている背景
最近、シニア世代の海外就職希望が増えている背景には何があるのでしょうか?
人生100年時代の到来
最近では「人生100年時代」と言われるようになりました。
寿命が長くなるにつれて健康寿命も長くなり、最近は70代でも活発な人が多く、80代以上でITを使いこなしている人も増えています。
100歳まで生きると考えると、65歳で定年した後に引退生活を送るにはあまりにも長く、50代や60代から新しいことにチャレンジしたいと考える人が増えてきました。
90歳のおばあちゃんが、60歳の頃にバイオリンを習おうと思ったけど「今さら新しいことに挑戦するのって…」と諦めてしまい「でもあの時始めていれば30年もできた」と後悔した話を聞いたことがある。どんな事でも遅いことはなく「やりたい!」と思った「今」が自分にとって一番若い瞬間なんだなぁと😌
— マノマノ🌾 (@manomano_farm) August 29, 2022
このツイートの通り、50代や60代から海外を目指しても遅いということは全くありません。
終身雇用制度の崩壊
現在のシニア世代が新卒として入社した頃は終身雇用制度が当たり前の時代でした。
その後、徐々に終身雇用制度や年功序列型賃金制度が崩壊し、会社から早期リタイアを迫られるケースも増えています。
つまり、会社を信じて頑張ってきたが、会社から捨てられてしまったということです。
再就職をせざるを得ない、もしくは役職定年を迎えて平社員に戻った時に、閉塞感のある日本に残るではなく、成長する海外で活躍したいと考える人が増えています。
海外生活に対する憧れ
これまでの日本では1社で長く勤めあげるのが当たり前の時代で、海外で働きたいと思っても会社の配属に任せるしかなく、「自分で海外の仕事を見つける」という選択肢を検討するのは難しい状況でした。
しかし、ここ10年ほどで日本国内の状況も変わり、転職エージェントなども整備されてきたので、海外就職が一般化してきました。
- 海外でのキャリアを積みたい20代・30代
- 結婚・出産後、海外で子供を育てたいと考える30代・40代
- 子育てや住宅ローンなども一通り終えた50代、60代
の皆さんが、どんどん海外就職へチャレンジしています。
シニア世代が海外就職をするメリット
では50代以降で海外就職にチャレンジすると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
現地の人脈を作りやすい
日本で働いていると、どうしても家と会社の往復生活になりがちです。
特に男性の場合、会社を定年退職して職場の人間関係が途切れると、孤独になってしまうという話もよく聞きます。
しかし海外へ行くと、現地人の友達だけでなく、日本人の友達も作りやすいです。
海外の各都市には日本人コミュニティがあり、出身の都道府県や出身大学、趣味(スポーツや写真、語学、映画など)のサークルがあります。
会社の業務命令で来た人も多いですが、自分の意思で海外へ来た人も多いため、同じ志や価値観を持つ人達との繋がりを作りやすいです。
私自身が経験したことですが、日本に住む友人にはよく

どうして海外なんて行くの?海外へ行ってどうするの?
と聞かれましたが、海外に住んでいる日本人に「そのうち日本へ戻ろうと考えている」と話すと

日本へ戻って何かやりたいことでもあるの?なんで日本に住みたいの?
と聞かれます。
価値観の合う人達との繋がりは、生活をとても豊かにしてくれるのではないでしょうか?
視野が広がる
海外で生活すれば、当然ながら仕事でも生活でも外国語を使います。仕事は主に英語で、生活は現地語を使います。
そして海外生活はカルチャーショックの連続です。
私がインドで体験したカルチャーショックの数々をインドで経験した人生観が変わるレベルの仰天エピソード5選という記事でご紹介しています。
GJJメンバーで60歳から初めての海外就職へチャレンジした方(Mさん)がいますが
- 人生初の転職
- 初めての海外勤務
- 初めての印刷業界
- 初めての工場管理
を経験し、毎日が新しい挑戦だったそうです。
同じことを繰り返す日々を送るより、新しいことにチャレンジして視野を広げた方が脳の老化を防ぐとも言われています。
海外就職は20代後半でチャレンジする人が最も多いですが、20代だとキャリアアップや将来の不安が先行して、海外生活そのものを楽しめない人も多いです。
シニア世代は20代と比べて、将来の収入やキャリアアップへのプレッシャーは少ないですから、異文化体験や日々の海外生活そのものを純粋に楽しむことができます。
転職や起業の力がアップする
60歳からパソコンを習い始め、80代でアプリ開発をした世界最高齢のプログラマー若宮正子さんが話題になっていましたが、60代以降でも新しいビジネスを始めたり起業したりするのは遅くありません。
キャリアアップや起業のためのステップとしても海外就職は良い経験になります。
- 海外で働くと日本にはないビジネスやサービスを目にしてビジネスアイディアが思いつく
- 現地で築いた人間関係のお陰で新しいビジネスを思いつく
- 海外で新しく始めた趣味から仕事を見つけられる
など、起業のタネがたくさんあります。
日本の大手企業であれば部署ごとに業務が細分化されていますが、海外であれば幅広い業務を1人で回さなければならないことが多いです。
トラブル対応能力も鍛えられるため、起業に必要な能力が身につきます。
生活コストが下がる
日本では数年前に老後資金2000万円問題が話題になっていましたが、いくら円安やデフレで日本の物価が海外と比べて下がっているとはいえ、まだ東南アジアの方が(シンガポールを除き)日本よりは物価が安いです。
実際、定年後に日本の年金を受け取りながらリタイアメントビザでマレーシアやタイへ渡り優雅な生活を送るシニア世代も増えています。
海外就職をすれば、定年前から現地で仕事をしつつ海外生活に慣れつつ、貯金をすることもできます。
年金受給年齢の引き上げも話題になっていますが、人生100年時代では50代でやっと折り返しですから、50代からでも海外で生活する力をつけるのは将来の役に立つのではないでしょうか。
シニア世代が海外就職をする際の注意点
一方、シニア世代の海外就職には注意も必要です。ここからは、シニア世代が海外就職をするにあたって気をつけておかなければならないポイントをご紹介します。
職種はマネジメント職が中心になる
50代以上でも海外就職を実現している人は大勢いますが、若い世代に比べると求人が少ないのは事実で、全ての職種で募集があるわけでもありません。
しかしグローバル人材塾では毎年、50代以上で海外就職を実現している人がいます。
シニア世代の募集はやはり管理職が中心で、特に工場管理の求人が多いです。
営業であっても、フロントの営業専門と言うよりは営業スタッフのマネジメントが多く、自分で営業をするケースでもプレイングマネージャーとなる場合が多いです。
では、シニア世代の海外就職先の最有力候補として挙げられる工場長とは、具体的にどのような業務なのでしょうか?
60歳でインドネシア就職を実現したMさんによると、アジアにおいてもメーカーの競争力は以下の3点です。
- 低コスト
- 正確な納期
- 安定した品質
そこで、工場長に求められる役割は、とにかく上記の3項目を達成して競争力をつけるため、また従業員の安全のため、ISO9001(品質管理マネジメントシステム)と5Sを十分に理解し、完璧に行うことだそうです。
また、いくら努力してもトラブルは避けられないため、トラブルで顧客を失わないよう得意先と良好な関係をつくっておくことも重要です。
そして購買部門、関税担当、総務関係は汚職に巻き込まれやすいので、余分な支払いがないか、単価は適切かを常に細かくチェックする必要もあります。
工場長の経験がないと心配になるかも知れませんが、Mさんによれば、工場経験のない商社マンが立派に工場経営をしている例もあり、経験がなくても一時期頑張ればキャッチアップできため、あまり経験にこだわる必要はないそうです。
海外のビジネスは日本よりもスピード感があり、日本本社のゆっくりしたスピードで仕事をしていたら競争に負けてしまうこともあるため、海外の状況を日本本社に説明してサポートを得ることも重要です。
海外就職先はアジアの国が中心
これは20代でも同じですが、初めての海外就職での渡航先はアジア(特に東南アジア)が中心になります。
海外就職といえども、これまで日本語で仕事をしてきた日本人が就職するのは日系企業の海外子会社か、日本人や日系企業をクライアントとする外資系企業の営業職が大半です。
いくら外国語ができても、日本語を全く使わない仕事、例えばアルゼンチンに進出するフランス系企業で海外未経験の日本人が仕事を得るのは難しいでしょう。
日系企業の多くが進出しているのはアジアや欧米ですが、欧米は人気が高くビザの要件が厳しいため、比較的ビザが下りやすいアジアの日系企業で就職するケースが大半です。
最近は、インドネシアやベトナムでシニア世代の求人が多いです。
家族の合意が必要
家族がいる方の場合には、家族の合意も必要です。
Mさんの場合は海外就職の前にインドネシアで語学留学をしましたが、留学の条件は、単身で行くこと、退職金には手を付けないことだったそうです。
海外移住には、引っ越し代などで最初にまとまったお金も必要ですし、語学力不足であれば事前に語学留学をしなければならないケースもあるので、家族との事前相談が必要になります。
シニア世代が海外就職で成功するポイント
ここまで、シニア世代の海外就職のメリットと注意点をご紹介しましたが、それを踏まえてシニア世代が海外就職で成功するポイントをご紹介します。
成功=納得感
海外就職をすると
- 厚生年金や雇用保険から外れる
- 役職手当がもらえなくなる
- 日本よりも解雇されるリスクが上がる場合がある
- 物価が低い分、手取り給与が日本より下がる
という事情があります。
40代までは海外での経験を基に日本でキャリアアップを図ることも可能かも知れませんが。
しかし、50代以上で海外就職をした方が日本へ帰国してから昇格・昇給するのは現実的ではありません。
シニア世代の場海外就職は、お金よりもやりがい、人間関係、好奇心、豊かなセカンドライフを始めることなどを目的とするのがオススメです。
先ほど「海外就職で転職や起業の力がアップする」とも書きました。
しかしビジネススキルのアップは現地での生活や人間関係、趣味などを大切にした先にあるものです。
始めからお金だけを目的にしてしまうと、豊かな海外生活の可能性を台無しにしてしまう可能性があるので注意が必要です。
新しいことを学ぶ気持ちを大切にする
日本国内では各業界で人手不足が問題になっていますが、これは海外の日系企業も同じで、日本人の採用に頭を悩ませている会社は多いです。
マレーシアやタイなど住みやすく人気のある国は応募も多いですが、ベトナム、インドネシア、インドなどの国では人が集まらず苦労している企業が多いです。

20代や30代を採用しても、みんな2~3年で退職するんですよね。40代の人達の方が長く働いてもらえます。
但し、シニア世代で海外就職する場合にも
- 新しい仕事や環境への適応能力
- 現地スタッフや年下の日本人との協調性
- 泥臭い仕事
を厭わない姿勢は求められます。

どうして俺がこんな雑用をしなければならないんだ!!
という態度だと嫌われてしまいます。
日本での経験を活かしつつも新しいことにチャレンジする姿勢をアピールすることが、豊かな海外生活を実現するポイントと言えます。
新興国での健康等のリスク
先ほどお伝えした通り、シニア世代に限らず、日本人が初めての海外就職をする場合の渡航先は東南アジアであるケースが多いです。
60歳でインドネシア就職を実現したMさんによると、シニア世代の新興国生活では以下のような点に注意が必要です。
- 地方では満足な医療を受けられない可能性がある(大都市の一流病院を選ぶ)
- 高齢になってからの海外一人暮らしになるため、何かあった時の備えが必要(大都市での居住が望ましい)
- インドネシアではアパートから職場の玄関まで車での送迎があるため運動不足になる(意識的に運動する)
- 野菜不足で栄養が偏る(朝食で補う)
- 交通事故が多発する(外国人が事故を起こすと面倒なので、信頼できる運転手に頼む)
シニア世代でも海外就職の可能性はある
以上、シニア世代の海外就職事情についてご紹介しました。
30代の私から見ても、新しいことにチャレンジするシニア世代の方はとても尊敬できます。
海外就職に興味があるものの
- 自分の語学力で海外就職にチャレンジできるのか分からない
- どうやって求人を探したら良いのか分からない
- 自分にはどんな仕事が向いているのか分からない
など、様々な悩みがあると思います。
そんな方にはグローバル人材塾の田村さんの無料カウンセリングを受けてみるのがオススメです。
2023年現在、年間登録全体(約3700名)の約10%強が50代以上のシニア世代の方で、毎年シニア世代で海外就職を実現している方がいます。
初めての海外、初めての転職であれば不安なことが多いと思うので、キャリアのプロに相談することが大切です。
これまでのキャリアや得意分野により戦略は変わってくるので、豊富な成功事例を基にプロの目で最適な提案を受けられます。
無料カウンセリングの際に「"アジアで暮らす"を見た」
また、50代で海外就職を実現した宮永保文さんの書籍もお勧めです。