インド現地採用のEPF(従業員積立基金)還付手続きまとめ【成功談】

インドには従業員積立基金(EPF:(Employees’ Provident Funds)という強制積立の制度があります。

現地在住の日本人の間ではPFと呼ばれます。

積み立てるときは給与天引きで会社が積み立ててくれるので問題ないのですが、問題は還付です。

インドで働く外国人は退職して帰国する時にPFが還付されるのですが、これが還付されて引出が完了するまでハラハラドキドキなのです。

「家に着くまでが遠足」ならぬ、「PF還付金の引き出しが完了するまでがインド就職」です!!

PF還付手続は、インドを離れる最後の最後までインドらしさを感じさせてくれます。

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従業員積立基金(EPF)とは?

最初に、インドのPFの概要についてご紹介します。

PFの負担金額

PFは給与の一部を強制的に積み立てる制度で、雇用主と従業員がそれぞれ12%ずつ負担します。

例えば、月の額面給与が20万ルピーであれば、以下のようになります(所得税などは無視します)。

手取りの計算

額面給与:20万ルピー

雇用主負担PF:2.4万ルピー

従業員負担PF:2.4万ルピー

手取り:20万 - 2.4万 = 17.6万ルピー

毎月4.8万ルピーのPFが積み立てられます。

駐在員はPFの支払不要

日本とインドが2016年に締結した社会保障協定により、一時的(5年以内)にインドへ派遣される駐在員については日本年金機構へ申請書を提出すればPFの支払いは不要です。

それまでは日本とインドで二重に支払わなければならなかったので、派遣元企業の負担は莫大なものでした。

従ってPFを納めなければならないのは現地採用のみです。

今この記事を読んでいただいている皆さんも、基本的には全員現地採用だと思います。

もしくは、5年以上インドで働いている駐在員の方かも知れません。

PFは20名以上の従業員を雇っている会社に適用されるので、たとえ現地採用でも従業員数20名未満の小さな会社で働いている人には関係ありません。

本帰国時に還付を受けられる

通常PFは58歳になるか、重度な障害を負わなければ引き出せません。

PFはインドの銀行口座に返金されるのですが、外国人は就労ビザ(FRRO)が切れると銀行口座も閉じられてしまうので、インドで58歳まで働かない限りPF還付は不可能(つまり取られっぱなし)でした。

ところが日本政府とインド政府との間で社会保障協定が締結されて以降、日本人はインドを離れるタイミングで還付を受けることができるようになりました!

PFの還付手続き

経理

ここからは還付手続きについてご紹介します。

とはいえ、実際は会社のインド人スタッフにやってもらったので、細かい実務というよりは、全体像と銀行とのコミュニケーションのまとめになります。

PF還付はインドの銀行口座閉鎖との勝負

インド現地採用の間でPF還付がなぜホットトピックになるかと言うと、PFが還付される前に銀行口座が凍結されると引き出せなくなるからです。

銀行口座は外国人登録(FRRO)と紐づけられるので、FRROの有効期限が切れると銀行口座も自動的に凍結されてしまうのです!

特にICICI銀行は厳しいことで有名で、私の知り合いでICICI銀行の口座を持っている方は軒並み凍結されています。

逆にAXIS銀行やHDFC銀行は統制が緩いと言われていて、退職後もしばらく放置してくれます。

私はAXIS銀行だったのですが、いつまで経っても口座は凍結されず、2022年9月末に退職後、2023年1月末に無事PFを受け取ることができました!!

なので、AXIS銀行はオススメです(もちろん凍結されないという保証はありませんが、インド在住者のTwitterなどを見ていても凍結されたケースは聞きません)。

月収の24%が毎月積み立てられていくので、かなりの額になります。

もし銀行口座が凍結されてしまったら、もう一度インドで仕事を見つけて転職し、FRROを取得してから口座凍結を解除するしかありません!

PF還付手続は退職の1か月前から

PF還付手続きは会社が自動的にやってくれる場合もありますが、人事総務担当が忘れている場合もあるので、必ず言いましょう。

また、会社とケンカをしてしまうと会社が還付手続きをやってくれず、自分で対応しなければならなくなる可能性もあるので、円満退職を目指しましょう!

このあたりの事情は、インドで働いている方ならよくご理解いただけると思います。

で、もともとPF還付手続きは退職後60日を過ぎてから可能になるのですが、日本人は退職日の1か月前からオンラインでPFの還付手続きが可能です。

・・・という情報をインターネットでたくさん見かけ、知人からも「退職の1か月前から還付可能だよ」と言われたのですが、私が会社に手続してもらった時は退職後60日までは申請不可でした。

会社の担当者からチェンナイのPFオフィスに電話をしたら「まだダメだ」と言われ、仕方なく退職後60日を経過してから手続きを始めました。

PFオフィスの役人の理解が間違っているのかも知れませんが、「退職の30日前から還付申請可能」という情報について根拠法令や通達などをご存知の方はコメントをください。

必要な書類

PFの還付手続きにあたって、以下の書類が必要になりました。

  • PFマイポータルのログイン情報(UAN番号とパスワード)
  • Form 19 (PF settlement claim form)
  • Form 15G
  • Form 10C
  • キャンセル小切手(Cancelled Cheque)
  • パスポート、PANカードのスキャンPDF
  • Aadhaar Card
  • 会社からの退職証明(Resignation Letter)
  • 雇用契約書(Employment Contract)

Aadhaar Cardを作っていない方は退職前に作っておきましょう。

あと、フォームを提出する時にAadhaarやUANと紐づいている携帯電話番号へ送信されたOTP(ワンタイムパスワード)が必要になります。

もしOTPを受け取れない場合は、特別なフォームに署名をして原本をPFオフィスへ提出すれば代替できるそうです(どんなフォームかは知りません)。

ですが面倒なので、PFが還付されるまで携帯電話は解約しないようにしましょう。

私は海外にいてOTPを受け取れなかったのですが、携帯電話が会社契約だったので、会社のスタッフにVodafoneショップへ行ってもらって、同じ番号でSIMカードを再発行してもらいました。

海外でOTPを受け取れない人は、会社の総務など信頼できる人にSIMカードを渡してから出国した方が良いかも知れません。

上記の情報と書類を揃えて退職後60日を経過してから申請をすれば、通常は2週間で還付されます。

しかし私の住んでいたチェンナイは南国気質でモタモタしていることから、会社のスタッフに毎日のようにストーカー並の鬼電で催促してもらい、1か月くらいで還付を受けられました。

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外国の銀行口座へも還付を受けられる?

Bank

先ほど、「PF還付はインドの銀行口座閉鎖との勝負」と書きましたが、日本の銀行口座へ還付することはできないのでしょうか?

ルール上は日本の銀行口座へも還付可能

日本年金機構のホームページには、以下のように書かれています。

8.インド年金の受取方法
日本に在住している人は、日本国内またはインド国内の銀行口座により、インドの年金を受け取ることができます。

協定相手国別の注意事項(インド)

駐在員はインド年金を払っていないので、この項目は現地採用に関する話ですね。

インターネットを漁ってみたところ、EPF Organizationが発行していると思われる文書を見つけました(EPF_Bank Procedure for overseas bank AC of IW Emp.pdf)。

1ページ目の下の方に以下のように書かれています。

International Workers and their beneficiaries from the SSA contries shall be seeking payment of benefits to their overseas bank account.

EPF_Bank Procedure for overseas bank AC of IW Emp.pdf

SSA countriesというのは社会保障協定を締結している国を指しており、日本も含まれます。

つまり日本人は日本の銀行口座へPFが還付されるという意味です。

以下の解説ページにも詳しく書かれています。

Also, where an IW (International Workers) is covered under a SSA, withdrawal proceeds may be credited to his bank account outside India based on the terms of the SSA.

Can a foreigner working in India withdraw Provident Fund?

日印社会保障協定を読むと、第5条第3項に以下のように書かれています(和文英文)。

他方の締約国の領域内に居住する受給者に対するこの協定に基づく給付の支払は、自由に交換することができる通貨により直接行われる。いずれか一方の締約国が外国為替取引又は海外送金を制限する措置を実施する場合には、両締約国の政府は、この協定に基づく当該一方の締約国による給付の支払を確保するために必要な措置について、直ちに協議する。

社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定

つまり、インド政府が海外送金(日本の銀行口座へのPF還付)を制限する場合は、日本政府とインド政府で相談しましょうということです。

ネットで調べましたが「インド政府が海外送金を制限したので、日本政府と相談しました」などという情報は全く見当たらなかったため、インド政府はPF還付の国外送金を制限していないはずです。

従って、PFが還付されないことは有り得ないということです。

もしPFオフィスからゴチャゴチャ言われたら、とりあえず上記社会保障協定の英文や、解説ページなどを参考にPFオフィスを説得しましょう(会社のスタッフに説得してもらいましょう)。

それでも日本の銀行口座へは還付してくれなかった

私は会社のスタッフに頼んで、上記の社会保障協定を根拠に日本の銀行口座へ送金してもらうようPFオフィスを説得してもらいました。

しかしPFオフィスからの回答は「既にインドの銀行口座で登録してあるからダメ」ということでした。

つまり、日本の銀行口座へ還付してもらうためには、事前にPFポータルサイトで日本の銀行口座を登録しておく必要があるということですね。

もしインド側の手続で埒が明かなかったら、日本年金機構に助けてもらった方が良いかも知れません(助けてくれるかは知りません)。

インドの銀行口座から口座凍結の予告メールが来る

PFの申告に着手する前に、AXIS銀行から以下のような銀行口座凍結予告メールが届きました。

口座凍結されていまうとPFを受け取れないので、恐怖でしかありません。

Dear Customer,
We would like to inform you that it is mandatory for you to update your valid Visa details in bank records at all times. However, we found that your Visa details against your Customer ID xxxx have expired .
We request you to furnish your latest valid Visa details to the bank within 15 days to fulfil the basic documentary requirement of the NRI account.

つまり「FRROの情報を更新しなかったら、15日以内に口座を止めますよ!」というお知らせでした。

AXIS銀行の支店担当者に電話したところ、「3ヶ月待ちます」という回答がありました。

やれやれ一安心です...と思っていたら、2週間後にAXIS Bankまた同じ"Dear Customer, We request you to furnish your valid Visa details within 15 days"のメールが届きました。

もう一度AXIS銀行へ電話してもらうと、今度は「自動送信されてるメールだから、支店ではどうしようもない」という回答でした。

それじゃあ1回目の「3ヶ月待ちます」という回答はなんだったんだ?と思いましたね。

AXIS Bankの良いところは内部統制が緩いのでFRROが切れても口座凍結されない点です。

一方、AXIS Bankの悪いところは内部統制が緩いので支店担当者の言うことが信用できない点です。

で、更に放置したら1か月後に3回目のメールが来たので、「中央の本店とかに連絡して、どうにか口座凍結は避けられないの?」とお願いしてもらいました。

そしたら支店担当者は「私だと権限がないので支店長にメールしてください」と言われました。

で、支店長にメールで「インドを離れるのでVISAの更新ができずPFが...」と経緯を説明したら「有効なVISAをアップデートしてください。そうしたら口座は凍結しません」という返答がありました。

支店長のくせに英語が読めないのか!」と言いたくなりました。

その後、AXIS銀行から長文メールが来たので「いよいよ口座凍結か?」と緊張したのですが、「海外在住の方にオススメの医療保険のご案内」のメールでした。

そのあと担当者からWhats App Callもかかってきて「インド国外にいれば税金も免除されてお得です!○○サービスに加入しましょう」と言われたので拍子抜けしました。

AXIS Bankは口座開設の頃からずっとこういう調子で、大丈夫なのかな?とは思っていましたが、最後の最後まで不信感しかありませんでした。

AXIS銀行の問題点については【AXIS Bankがオススメ】インドで銀行口座を開設する注意点の記事をご参照ください。

無事にPF還付完了

その後、結局口座が凍結されることはなく、無事にPFの還付を受けて口座から全額引き出すことができました!

そのまま口座を放置していたら、AXIS Bankから「口座残高が最低額を下回っているので口座維持手数料を払ってください」というメールが来ました。

PF還付が終わったらすぐに口座を閉じた方が良いかも知れません。

PF還付を成功させるためのポイントまとめ

繰り返しになりますが、インドでPF還付を成功させるコツは以下の3点です。

退職してから慌てても遅いので、早めに準備をしておきましょう。

  • Aadhaarカードを作っておく
  • インドの携帯電話は念のためPF還付が完了するまで解約しない
  • PFポータルで日本の銀行口座を登録しておく

 

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