インド人の日本に対するイメージ5選【元インド在住者の感想】

2024年現在、日本のメディアではインドの成長が大きく取り上げられ、インドへ進出する日系企業も日増しに増加しています。

日本人にとってインド言えば仏教・カレー・ヨガ・バックパッカーの聖地・数学・IT人材などのイメージがあると思いますが、インド人は日本に対してどのようなイメージを持っているのでしょうか?

私は2018年から2022年までインドの会計事務所で働き、その後は中国の広州で暮らしています。

中国人・東南アジア人・インド人それぞれ日本に対するイメージは異なりますが、この記事では多くのインド人と交流した私が感じたインド人の日本に対する印象を、現地でのエピソードも交えつつご紹介します!

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インド人は親日的だが日本のことをあまり知らない

日本とインド

インド人の日本に対するイメージは総じて好印象です。

外務省のホームページに掲載されている2023年の対日世論調査でも、約96%のインド人が日本のことを「信用できる」と回答しています。(海外における対日世論調査)。

インドで「日本人です!」と名乗って嫌な顔をされたことはなく、どこでも歓迎されます(金を持っていると思われて詐欺師に狙われることは多いです)。

しかし、インド人が日本について詳しく知っているかというと知りません。

ちょうど、日本の北欧に対するイメージと同じなのではないかと私は思います。

北欧と言えばノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランド辺りかと思いますが、何が思い浮かびますか??

私は「北欧」と言えばサンタクロース、IKEA、オーロラ、福祉国家くらいしか思い浮かびません。

でも「北欧」と聞いて悪い印象を持つ日本人は少ないですよね?

インド人の日本に対するイメージも同じで、日本に対して良いイメージは持ってるけどよく知らないです。

一方、中国や東南アジアの日本人に対するイメージは、日本人のアメリカやイギリス、フランス、ドイツに対するイメージと同じで、かなり詳しいです。

中国や東南アジアでは日系企業や日本文化がよく浸透していて、イオンやセブンイレブン、ドン・キホーテなど何でもあるし、日本のオタクコンテンツも溢れています。

今の中国の会社では、日本語ができない社員ですら大河ドラマの「光る君へ」を見ている人が何人もいます。

インド人はさすがにそこまで日本のことは詳しくないです。

「中国人は日本のことが嫌いじゃないの?」と思うかも知れませんが、中国人の日本に対するイメージは非常にアンビバレントで、複雑なので別の記事で詳しくご紹介します。

インド人が「日本」と聞いて思い浮かぶイメージ5選

広島

ここからは私の経験ですが、「日本から来ました!」と言ってインド人から言われたことをご紹介します。

自動車

インドへ行くと、走っている車の2台に1台はスズキの車で、それ以外にもトヨタ、日産を始め多くの日本車を見かけます。

二輪車もホンダやヤマハをよく見かけ、日本車大国と言っても過言ではありません。

14億人の市場のポテンシャルに支持されていることは嬉しい限りです。

同じ14億人の市場でも、中国では日本車の存在感は年々低下し、大都市では中国産のEV車ばかり見かける状況なので、たまにインドへ行って日本車をたくさん見かけると嬉しくなります。

テクノロジー

自動車が筆頭ではありますが、ダイキンやPanasonicなど自動車以外のメーカーでもインド市場で広く歓迎されている会社があります。

IT業界については全く存在感がありませんが、工業分野でのテクノロジーについては日本に対する信頼は厚いです。但し

インド人

日本製品は高品質なんだけど、高いんだよね~

という声はよく聞きました。

多くのインド人は中国のことを嫌っていますが、携帯電話は中国製を使っています。

「高品質な日本製を買いたいけど、高くて手が出ないんだよね」という声も聞きました。

ドラえもん・クレヨンしんちゃん

インドでもドラえもんやクレヨンしんちゃんは至るところで見かけました。

インドの本屋に日本のマンガも多数おいてあります。

ただ中国や東南アジアだと、週末にイオンモールへ行くとアニメのキャラクターに扮したコスプレイヤーが自撮り写真をたくさん撮っている光景をよく見かけますが、インドではそこまでのオタク熱は感じませんでした。

統計を取ったわけではなく私の感想に過ぎませんが、世界中どこの国でも熱狂的な日本アニメオタクは一定数おり、インドも例外ではないものの、一般層に普及している日本のアニメは国民的アニメに限るかな?という印象でした。

信用できる

インド人に日本人や日系企業の印象を聞くと

  • 信用できる
  • 時間厳守
  • チームワーク

など、ポジティブな印象を聞くことが殆どです。

日本人の私が聞いているのでお世辞を言っている可能性もあるのですが、私は初対面のインド人(レストランの店員やタクシードライバーなど)から

「君の英語は訛っていて聞き取りづらい」

「君はガリガリだからもう少し筋トレして筋肉を付けた方がいいんじゃないか」

とズケズケと言われたこともあります。

インド人の中には遠慮なく本音を言ってくる層が一定数いることを考えると、社交辞令ではなく本音で日本に対して良い印象を持っていると考えて良いかと思います。

広島と長崎の原爆投下

原爆投下直後の焼け野原の写真はインドでも有名だそうで、原爆投下のことはインド人ならほぼ誰でも知っています。

英語ができない露店のおじさんにも、ジャパニーズだと言ったら「ヒロシマ、ナガサキ!」と言われたこともあります。

インド人は日本がアメリカと戦争に至った経緯は理解しておらず、真珠湾攻撃のことなどはあまり知られていないので、アメリカが一方的に日本を侵略して原爆まで落としたと理解されているようです。

インド人からは「日本人は悔しくないのか?アメリカにリベンジしたいと思わないのか?」と言われたこともあります。

また現在の広島や長崎はインド人には知られていないので、「今では広島や長崎は人が住めるのか?まだ焼け野原なのか?」と聞かれたこともあります。

中東でもインド人と同じように理解されているようで、白井聡氏の「永続敗戦論」によると、中東を旅行した時に「日本が次回アメリカと戦争をするときは一緒に戦おう」と言われたそうです。

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インド人が親日的な理由4選

ハンピ ヴィッタラ寺院

どうしてインド人は非常に親日的なのでしょうか?親日的な国は多いですが、日本を信頼しているインド人が96%もいるというのは非常に高い数字です。

色々な理由があると思いますが、私は4つあると思っています。

日本軍はインドまで侵攻しなかった

歴史上、日本とインドは殆ど交流がありませんでした。

仏教が中国経由で日本へ伝わってきたくらいで、奈良時代に奈良の大仏の開眼供養をしたのはインド人だったそうですが、その程度の細々とした交流でした。

交流がないということは悪い歴史もないということです。

戦時中、日本軍は東南アジアまでは侵攻しましたが、インドまでは到達しませんでした。

東南アジアは非常に親日的ですが、日本人が東南アジアで「日本軍が欧米の植民地から東南アジアを解放してあげたんだ」という態度を出して無条件で歓迎されるかというと複雑だと思います。

香港も非常に親日的ですが、日本軍に親族を殺害された人もいるので、第二次世界大戦中の話は非常にセンシティブです。

欧米も、旧日本軍による捕虜虐待の問題がありましたが、インドとは過去のわだかまりがないので、日本人がインド人と交流して地雷を踏みぬく可能性は殆どありません。

アジアの国としての親近感

インド人はイギリスの植民地を受けてきた歴史もあり、欧米に対しては人によって色々な感情がありますが、日本人に対しては同じアジアの仲間だと考えてくれているようです。

東南アジアは日本の影響が強く、マレーシアのルックイースト政策に代表される通り日本を目指して発展してきた経緯もあり、率直に言って日本に対しては格上の国だと思ってくれている印象を受けます。

最近は円安で日本の国力低下も著しく、一部の人達はアジアの国に抜かれたと言っていますが、それでも過去の遺産があるので、日本は存在感があると私は思います。

一方、欧米へ行けば日本人もアジア人として人種差別を受けることがあると思います。

多くのインド人は日本人のことは対等なパートナーだと思っており、インドでは日本人が見下されることもなければ、特別扱いされることもありません。

日米豪印クワッド

2020年にインドは中国と国境紛争を起こしており、またコロナウィルスのデルタ株でインド人が大勢亡くなったことから、2020年頃からインド人の対中感情が極めて悪化しています。

一方、(このブログは個人ブログなのでストレートに書きますが)日本人の対中感情は20年以上前から悪いですよね。

最近は日米豪印クワッドの形成などの事情もあり、インド人の日本に対する親近感は年々強くなっている印象です。

それは日本人のインドに対する親近感も同じかもしれません。

多くの日本人はインドに対して、「不衛生でお腹を壊しそうだし、イライラしそうけど、スピリチュアルで神秘的で、数学やITが強くて頭のいい人が多そうな国」というイメージを持っていると思います。

お互いに悪いイメージを持っていない両国の絆が、中国を共通の敵として強まりつつありますね。

なお中国人のインドに対するイメージは日本人とは全く異なって非常に悪く、中国へ引っ越してからビックリしたので、別の記事にまとめたいと思います。

インド人は日本のことをあまり知らない

インド人は日本のことを知らないから良いイメージを持っているのではないかと感じることもあります。

例えば、インドではホワイトカラーは全員英語がネイティブ並みに流暢で、英語を喋れない人はブルーカラーの仕事にしか就けません。

日系企業の駐在員が、英語を全然話せないのに高給取りな様子を見て「英語を話せない高給取りが地球上に存在したのか!」と言わんばかりのカルチャーショックを受けていたインド人もいました。

日本に来たことがなくリアルな日本を知らないので良いイメージを保ってくれていますが、実際に日本へ来ると

  • 英語が通じない
  • 日本食はスパイスが効いてなくて不味い
  • 日本はベジタリアンに対応している店が少ない
  • 日本人の話は裏表があり分かりにくい
  • 日本社会は同調圧力が強く入りづらい

など、イメージとのギャップを痛感するようです。

中国の方が、日本へ来たことがなくてもリアルな日本の雰囲気を詳しく知ってる人が多いなぁという印象です。

高まるインドの存在感

日本へ仏教が伝来した飛鳥時代から日本人はインドの存在を知っていたと思いますが、日本とインドは歴史的に交流が浅く、お互いによく知りません。

お互いによく知らないからこそお互いのイメージもそこまで悪くなく、友好関係を築きやすいと思います。

逆説的ですが、今は日本とインドの関係が歴史上最も緊密になりつつあるので、文化的な違いによるトラブルも増えるかも知れません。

インドと良い関係を維持するためにもお互いの理解が不可欠です。

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