海外就職希望者が増え続ける理由【円安だけではない】

2022年は円安が進んだため、海外就職が注目され、テレビでも大きく取り上げられました。

円安が進んで海外就職希望者が増えた経緯については2022年の今こそ海外就職をするべきタイミングである3つの理由の記事をご参照ください。

テレビでは円安の側面のみが注目されましたが、コロナ後の今、海外就職の希望者が増えている理由は円安だけではありません。

為替レートは変動するので円高になる可能性もありますが、たとえ円高になったからと言って海外就職のメリットが消えるわけではありません。

海外就職の希望者が増えている理由は円安ではなく、もっと長期的な理由です。

そこで、2022年に入って海外就職希望者が増えている理由について、海外就職の歴史とともに海外就職のプロGJJ海外就職デスクの田村さつきさんに伺いしました。

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「円安だから海外就職」という誤解

最近テレビで海外就職が注目される機会が多いですが、なぜでしょうか?

円安になると、海外で給料を受け取っている人は日本円へ換算した時の金額が大きくなります。

そこで、「円安の機会を活かして給料を増やそうと考えて海外就職をする人が増えている」と誤解している方が多いようです。

しかし実際には、「円安だから」という短期的な理由で海外就職を決断する人は殆どいません。

1年くらいのワーキングホリデーなら短期的な視野で決断しても良いと思います。

しかし、海外へ就職するということは、現地で仕事や家を探して少なくとも数年間は生活するということです。

たとえ現地で生活している間に円高になったからといって簡単に帰国できるわけではないので、長期的なキャリアを考えて決断する必要があります。

海外就職を目指す人が多い本当の理由

海外就職の希望者が増える理由が円安ではないとすると、本当の理由は何でしょうか?

私は、実力のある人が評価されない日本社会の閉塞感にあると思います。

日本の閉塞感はコロナで始まったことではなく、バブル崩壊からの長い歴史があるので、歴史を紐解いてみたいと思います。

専門性を活かせない日本企業

2007年頃に「ハケンの品格」というドラマが流行りました。

とても優秀な女性が年功序列を破り、時給3000円という破格の金額で活躍するというドラマです。

実際、専門性を活かして活躍したいという優秀な人は大勢いましたが、日本の企業では活躍の場を得られませんでした。

日本企業で活躍できない理由は、終身雇用制度と年功序列型賃金、ジョブローテーション制度、新卒一括採用などにあります。

  • 新卒一括採用

日系企業は社会人経験のない新卒を一括で採用し、様々な仕事を経験させて育てていきます。

従って、新卒のタイミングが就職氷河期だと優秀な人材でも再起するチャンスを中々得られません。

  • 終身雇用制度と年功序列型賃金

日本の企業は新卒で一括採用した社員を定年まで雇用する終身雇用制度が基本です。

しかし女性の場合には妊娠や出産で仕事を休まなければなりません。

昔は産休や育休も取りづらかったため、女性が妊娠をすると会社を辞めざるを得ず、キャリアを断絶しなければなりませんでした(M字型キャリアと呼ばれます)。

企業からは「女性は結婚して子供ができるんだから、どうせ3年しか働かないよね?」などと言われました。

  • ジョブローテーション

日本の企業では、「総合職」として新卒から採用した社員を定年まで雇う中で、様々な部署をローテーションさせます。

このジョブローテーション制度は社内で様々な部署を経験できるものの、3~4年毎に仕事が変わるため、専門性を伸ばすことは難しい仕組みでした。

2000年代、日本は長い不況から抜け出せずにいたので成果主義の導入が叫ばれていました。

しかし、成果主義を導入する人達自身が新卒一括採用、終身雇用制、年功序列型賃金、ジョブローテーションの風土で育ってきたため、終身雇用制を完全に壊すには至らず、中途半端な導入で終わってしまったのです。

「女性の活躍を推進しよう」という掛け声もありましたが、年功序列の風土が残る中で女性が活躍するのは難しい現実がありました。

高度なスキルを持つ派遣社員の普及などで日本企業の雰囲気も徐々に変わっていくかと考えていましたが、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災で日本経済は更に停滞します。

リーマンショックの時には、やはり派遣社員が真っ先に契約打ち切りとなり、「年越し派遣村」などが話題となりました。

こうして「専門性を活かして派遣社員として働く」というスタイルも行き詰ってしまいました。

そこで私が注目したのが海外就職でした。

優秀な人材が海外就職をする理由

どうして海外就職に注目したのでしょうか?

東日本大震災のあと香港へ行くと、多くの日系企業で英語の話せない駐在員が現地スタッフのマネジメントに苦労していて、日本人の人材を欲しがっていました。

香港だけでなく、シンガポールやインドネシアなどでも経済発展に伴って多くの日系企業が進出していましたが、日本人が不足していました。

この現状を見たとき、「ハケンの品格」に出てくるような、専門性が高く日本で活躍する場を得られない人たちも海外へ出ればチャンスを得られると考えました。

そして、リーマンショックや東日本大震災で日本経済に限界を感じた日系企業の多くがアジアへ進出し始めたため、海外で日本人の需要は広がるに違いないと考えました。

日本人の海外就職先の多くはアジアの国になりますが、アジアは日本よりも物価が下がるため、給料は下がるケースが多いです。

また、日本で正社員として働けば受け取れる厚生年金や雇用保険、健康保険もないため、日本の企業で総合職として働く場合に比べて待遇は悪くなります。

従って、収入のことだけを考えるのであれば日本企業で働いた方が得です。

しかし自分の得意分野を活かして専門的なスキルを身に着けたいと考えたときに日系企業では難しいため、その閉塞感から抜け出して新しい経験を積みたいと考える人が多いので海外を目指すのです。

従来の出稼ぎは海外で高い収入を得て本国の実家へ送金するのが一般的でしたが、今の日本で海外就職を目指す人たちはお金よりも経験を優先するという点で新しい出稼ぎ労働者と言えます。

例えると、日本は下りのエスカレータで海外は上りのエスカレータです。上っていくなら、上りのエスカレーターの環境に身を置いた方が短期間でキャリアアップをしていくことができます。

「新しい出稼ぎ労働者」という言葉は、2013年に出版した「アジア海外就職」という本でも紹介しました。


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海外就職で得られる経験

海外就職ではどのような経験を得られると思いますか?

海外就職で得られる経験としては、専門性の向上、語学力の向上、外国人のマネジメント経験が挙げられます。

専門性の向上

日本の企業ではジョブローテーションで様々な職種を経験していくのに対し、海外の企業では特定の専門性を深く伸ばしていきます。

自分の専門外の仕事を割り当てられることはなく、もし「この会社では専門性をこれ以上伸ばせない」と判断すれば転職をすることになります。

日本の企業に総合職として入社し、ジョブローテーションで様々な経験を積んだ人が海外就職をしたい場合には、自分が経験した仕事の中から専門性の原石を見つけてアピールする必要があります。

語学力の向上

日本人が海外で働く場合、9割の人は現地の日系企業もしくは日系企業と取引のある現地企業で働きます。

日系企業には英語でビジネスをできる人材が少なく、日本語のできる外国人は少ないので、日本人の現地採用には日本本社と現地スタッフとのブリッジ役を求められるケースが多いのです。

現地の日系企業には「英語は業務を通じてスキルアップすれば良いから、日本のビジネスを知っている日本人を採用したい」と考えている会社も多いので、現地での仕事を通じて語学力を伸ばしていくチャンスがあります。

外国人のマネジメント経験

日本の会社で管理職になるのは30代後半以降だと思いますが、日系企業の現地法人へ就職すると、若いうちから現地スタッフをマネジメントする経験を積むことができます。

従来は駐在員が現地のマネジメントをするケースが殆どでしたが、コロナや円安によるコスト背景の後押しもあり、現地採用の権限が増加しています。

駐在員とは会社の業務命令により海外で働くケースで、新卒で採用した総合職がジョブローテーションの一環として海外へ駐在することが殆どでした。

会社の業務命令なので引越費用や渡航費用などの必要経費は全て会社負担となり、日本の厚生年金や雇用保険も加入のまま、駐在手当なども得られるため経済的なメリットは大きいです。

しかし赴任する国や期間は会社が指定するため、自分の意思だけで海外へ行くことはできません。

一方の現地採用は現地法人と直接雇用契約を結ぶパターンで、自分の意思で国や期間を選ぶことができる反面、日本の厚生年金や雇用保険からは外れます。

駐在員は会社の負担が極めて大きくなるため、最近は駐在員のポジションを現地採用へ置き換えるケースも増えています。

最近では、駐在員と現地採用の両方から内定を得た学生が、「現地採用の方が多くの経験を積めそう」と考えて、敢えて現地採用を選ぶケースもあります。

海外就職の経験を日本で活かす

かつては「現地採用は片道切符」などとも言われていましたが、海外就職の経験は日本でも役に立てることができますか?

海外就職で得た経験は、日本へ帰国した後も様々な形で活かすことができます。

日本本社から海外子会社を直接マネジメントする

多くの日本の企業の本社には英語を話せる人材がいないため、海外子会社に日本人を駐在させたり、日本人の現地で採用する必要があります。

アメリカなどのビザが下りにくい国へ進出したい場合には、現地に日本人を置けないことがビジネスのボトルネックになります。

もし日本の本社から現地のアメリカ人スタッフを直接マネジメントすることができれば、日系企業もビザの制約を受けずにビジネスを海外展開することができます。

アジアの国であっても、現地に日本人を置くのはコストがかかるため、もし本社から直接現地法人をマネジメントすることができれば効率的にビジネスを進めることができます。

日本国内へ進出する外国企業で働く

円安の後押しもあり、多くの外国人や外国企業が日本企業を買収しています。

その時に問題になるのが、外国人上司の下で働ける日本人が少ないということです。

日本では実務で英語を使った経験のある人材はまだまだ貴重であることから、海外就職の経験者は外国企業から高い評価を受けます。

日本で働く外国人をマネジメントする

逆に、日本で働く外国人をマネジメントする仕事に就くこともできます。

日本で働くには日本語が必要になることから、日本での就労を希望する外国人は減少しています。

しかし日本は人材不足のため、日本語を話せない外国人を英語でマネジメントできる人材が求められています。

英語でビジネスができる人材は世界中に無数にいますが、日本語のスピーカーは極めて限定されています。

一方、いくら日本が衰退しているとはいえ日系企業はまだまだ世界で活躍していますし、日本へ進出する外国の企業も増加しているので、英語でビジネスができる日本語人材への需要は増加しているのです。

「海外で働くことは日本を捨てること」と誤解されていますが、海外で活躍する日本人が増加することは日本の発展にも貢献するのです。

海外就職から日本の労働環境が変わる

優秀な人材が海外へ出ていくと、日本の労働環境も変わらざるを得ません。

現地採用として活躍していた人が日本へ戻る時、日本の年功序列型の組織に馴染むことができず、フリーランスとして業務委託で仕事をしたり、起業したりするケースもあります。

日本社会の枠組みを飛び出して活躍する人材が増えていくことで、日本の閉塞感が変わっていく可能性があるのではないでしょうか。

海外就職に興味があるものの、どこから手をつけて良いか分からない方は、グローバル人材塾の田村さんの無料カウンセリングを受けてみるのがオススメです。

これまでのキャリアや得意分野により戦略は変わってくるので、豊富な成功事例を基にプロの目で最適な提案を受けられます。

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