海外就職にUSCPA(米国公認会計士)はどう役立つか?

いま人気が上がっている資格の一つにアメリカ公認会計士(USCPA : United States Certified Public Accountant)があります。

世界で通用する資格なので、海外就職を目指している人達の中でも勉強をしている人は珍しくありません。

そこでこの記事ではUSCPAを取得すると海外就職で有利に働くかについて書きたいと思います。

こんな人にオススメ!!
  • 会社の命令ではなく、自分のタイミングで自分の好きな国に住みたいけど、キャリアの迷子にもなりたくない
  • 海外に住み続けるスキルを身に着けたい
  • 海外就職に興味があって、USCPAを取得するか迷い中

駐在であれば待遇は良いものの、国や期間は会社次第で自分の意思で住む場所を選べません。

一方で現地採用は待遇が悪く、中にはキャリアに繋がらない仕事ばかりさせられて専門性が身につかず、会社から使い捨てにされるリスクもあります。

そこで、住む場所は自分で選びたいが収入も上げたいという方にUSCPAをお勧めします。

なお、私は現地採用として2018年からインドの会計事務所で働いており、2021年11月にUSPCA全4科目合格しました。

2022年10月にワシントン州でUSCPAライセンスを取得しました!

私がUSCPAを受験することに決めた理由

豊かな生活

私は日本で8年ほど財務経理の経験を積んだ後、海外で働きたいと思いインドへ渡航しました。

私は「海外子会社の財務経理部門長になれますよ」と聞いて日系グローバル企業の財務経理部門で働いていたこともあるのですが、海外子会社の業績悪化により海外駐在の可能性はなくなってしまいました。

人生を会社か任せにしていたらいつ海外に住めるか分からないし、自分の住みたい国に自分の行きたいタイミングで行きたいと思ったので、自分の意思で海外就職する道(現地採用)を選びました。

しかし自由には責任が伴うので現地採用は非常に茨の道で、日本社会の決められたレールから脱線することになります。例えば

  • 厚生年金から外れる
  • 海外駐在と異なり各種手当はない
  • 日本に戻ってこられない可能性もある

などの問題があります。こういったリスクを最小化して安全に海外就職をするための選択肢の1つとしてUSCPAはお勧めです。

多くの国でUSCPAの求人がある

インドで仕事を見つけるとき、インドだけでなく中国、香港、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイなど様々な国の転職エージェントに登録しました。

その時、殆ど全ての国・地域の求人で「USCPA歓迎」という求人があり、USCPAがあると海外現地採用であっても給料や待遇が上がることが分かりました。また各国の転職エージェントから

転職斡旋人
USCPAは取得しないんですか?取得したら応募できる求人の幅も広がるし、給料も上がりますよ!それに、海外で働いたあと「日本で仕事が見つからないから日本へ帰国できない」なんてこともありません。

というアドバイスも頂きました。

USCPAは日本の会計士や税理士資格に比べると簡単な試験ですが、USCPAの試験は全て英語で行われるため、海外でもそのまま使うことができるという点が高く評価されます。

外国でも人気の資格

その後インドの会計事務所で3年ほど働く中で、インド人から

会計事務所で働いているなら、USCPAくらい持ってないと話にならないよね

と言われたことがあり、優秀なインド人の中にもUSCPAを取得している人が大勢いることを知って驚きました。

なぜ驚いたかと言うと、USCPAの受験料は最低でも30万円かかり、日本で予備校へ通うと、受験料と予備校代を合計して約100万円ほどかかります。

それに対しインドは大卒初任給でも月3万円程度、またインドは大学進学率がまだまだ低いので、多く国民はもっと安い収入で生活しています。

USCPAを受験できるようなインド人は中間層以上ですが、インド人にとってUSCPAの取得は、日本人の感覚では数百万円の投資をする感覚です。

多くのインド人がそれだけのコストをかけてでも取得する価値をUSCPAに感じているということです!

インド人だけでなく、インドで働いている日本人のうち現地採用で日系企業の財務経理部門マネージャーとして高級を取って働いている方は軒並みUSCPAを取得していたので、「なんか凄そうな資格だぞ」と感じました。

USCPAはアメリカの国家資格なので、取得したからといって日本で独占業務ができるわけではありません。

しかしカナダ、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、香港、アイルランド、スコットランドとは相互認証制度があるため、これらの国では改めて会計士資格を取得しなくても、会計士として独占業務に従事することができます。

私は2022年11月から中国で働き始めましたが、中国でもUSCPASCPAは権威と知名度があります。

いざとなれば日本に戻れる

最近はマシになりましたが、一昔前は「現地採用は片道切符」などと言われ、日本社会のレールから外れたら戻ってこられないと思われていました。

実際、現地採用として働いていた期間を「逃げた」「遊んでいた」などと評価され、日本へ帰国する時の転職活動で苦戦する人も少なからずいます。

しかしUSCPAを取得して海外で事業会社の財務経理部門や会計事務所で働いていれば、日本へ帰国する際の転職活動でも専門性を評価されますので、スムーズに帰国できる可能性が高いです。

日本でUSCPAは国家資格として認められていませんが、それは「監査証明書に署名をする権限がない」というだけのことであって、会計の専門家として日本で活躍することは可能です。

なぜUSCPAはアメリカ以外の国でも評価されるのか

香港の夜景

USCPAってアメリカの資格だから、アメリカの会計や法律を学ぶんでしょ?私はアメリカには興味ないんだけど、アメリカ以外の国でも役に立つの?

USCPAはアメリカの国家資格ですが、日本での評価も極めて高く、USCPAを取れれば日本でも高収入の業務に従事できます。

日本で監査法人へ就職するには日本の公認会計士試験に合格するのが一般的ですが、USCPA合格者も監査法人への転職は可能です。

USCPAは財務会計(FAR)、監査(AUD)、ビジネス環境と諸概念(BEC)、税法とビジネス法(REG)の4科目から構成されていますが、全科目とも世界中の会計実務で役に立ちます。

「USPCAの試験に落ちたら受験勉強の時間が全部無駄になる」という人がいますが、関連実務を仕事にしている方の場合は、たとえ試験に落ちても勉強は無駄になりません。

なぜUSCPAはアメリカの資格なのに他の国でも役に立つのでしょうか?1科目ずつご説明します。

財務会計(FAR)はアメリカ国外でどのように役立つか

財務会計(FAR : Financial Accounting and Reporting)ではアメリカの会計基準(USGAAP)を勉強します。

会計基準は国ごとに異なり、日本には日本基準(JGAAP)、ヨーロッパでは国際会計基準(IFRS)が使われていますが、そこまで大きくは変わりません。

今は経済活動のグローバル化が進んでおり、海外の財務諸表を見る機会も増えていますが、国ごとに基準がバラバラだと比較検討がしにくいため、国際的に会計基準の統一化が進んでいます。

基準の国際化を最も積極的に押し進めているのがヨーロッパ(IFRS)ですが、アメリカの規準もIFRSと大きくは変わりません。

もちろん日本基準とアメリカ、ヨーロッパ基準が異なる部分は多々あるのですが、USCPAは会計初心者向けの資格なので、大きな問題にはなりません。

例えて言うと、フィリピンのセブ留学を検討している人の中でたまに

フィリピンで英語なんて勉強して訛った英語が身についたらどうしよう

などと心配している人がいますが、訛りの違いを気にするようなレベルになってから心配すれば良いことです。

それと同じで、会計未修者が会計基準の違いなどを心配する必要はなく、アメリカ基準を理解すればIFRSでも日本基準でも理解しやすくなります。

私は仕事上、インドの会計基準を読むこともありますが、USCPAを学習してから格段に理解が早くなりました。

もちろん、合格後に日本で監査法人や会計事務所へ入社すると、日本基準を理解していない分だけ日本の公認会計士に比べて圧倒的に不利になり、日本の会計基準や仕訳について膨大な学習をしなければなりませんが、それは合格後に頑張りましょう。

会計専門家としてのスタートラインに立てるだけでもUSCPAには価値があります。

監査(AUD)はアメリカ国外でどのように役立つか

監査(AUD : Audit)というのは、経営者が数字を誤魔化してないか第三者の立場からチェックする仕事です。

不正のパターンや不正の発見方法、監査手順などは世界共通なので、USCPAのAUDで学んだことはそのまま世界中の実務で役に立ちます。

アメリカの監査基準や監査報告書の様式を学びますが、財務会計以上に国ごとの差は少ないです。

USCPA合格者が日本の監査法人として監査人として採用される理由もココにあります。

ビジネス環境と諸概念(BEC)はアメリカ国外でどのように役立つか

ビジネス環境と諸概念(BEC : Business Environment & Concepts)は、会計士として最低限知っておくべきビジネスの教養を学びます。

具体的には管理会計(工業簿記)、ファイナンス、経済学、IT、コーポレートガバナンスなどを学びます。

これらの分野は「アメリカ基準」などがあるわけではないため、正に学んだことがそのまま世界中で通用します。

この科目だけは選択式問題や計算問題だけでなく、英作文の問題もあります(2024年から試験問題が変わるようです)。

英作文の内容は、「会計士としてクライアントからの問い合わせに(英語で)同回答するか?」ということですが、これはインドの会計事務所で正に私が担当していることのため、英作文で練習したことを実務でそのまま生かすことができます。

税法とビジネス法(REG)はアメリカ国外でどのように役立つか

税法とビジネス法(REG)ではアメリカの法律を学ぶため、4科目の中ではアメリカ国外で最も役に立たない科目です。

アメリカの低額所得者控除や扶養の条件などアメリカに住まない限り一生使う機会はないので、「ふ~ん」で終わりです。

例えば減価償却資産の償却年数について、自動車やコンピュータは5年、設備は7年、居住用不動産は27.5年、非居住用不動産は39年...などの細かい数字を覚えなければなりませんが、こんな数字を覚えてもアメリカ以外で使う機会はありません。

しかし「課税所得を算出して、税率を掛けて税額を計算する」という税金計算の基本的な手順はどこの国も同じです(北朝鮮やアフガニスタンは知りませんが・・・)。

今どき、奈良時代の班田収授の法や租庸調制度みたいな方法で税金計算をする国はないので、USCPAの勉強でアメリカの基本的な税金計算の手順を知っておけば他の国でも応用ができます。

USCPAを海外の実務で役立てた私の事例

外国人 会議

USCPAがアメリカ以外の国でも評価されることはご説明しましたが、具体的に実務でどのように役立つのでしょうか?

インドの会計事務所に勤めている私の事例をご紹介します。私が入社したころ、あるお客さんから

お客さん
TATSUYAさん、前期は税務上の減価償却額が会計上の償却額を上回っていたのに、なぜ繰延税金資産が計上されているのですか?

という質問を受けました。

私は日本の会社でも経理をしていましたが、繰延税金資産の仕組みは簿記2級でちょっと齧った程度で実務経験はなく、そもそも日本では会計と税務で減価償却費差異は発生しないので、お客さんが何を質問しているのかさっぱり理解できませんでした。

様々なウェブサイトや簿記の本を調べてこのお客さんの言ってることを理解するのに4時間くらいかかり、それを英語に訳すのにも2~3時間くらいかかりました。

そして英語でインド人に質問すると、翌日の夜にインド人から

インド人
DTA of accumulated tax losses exceed depreciation DTL.

という短文の英語が返ってきました。

この英語がまた意味不明でした。これはTOEIC満点や英検1級の方でも難しい内容なのではないでしょうか?なぜなら会計の知識がないと日本語でも理解できないからです。

たとえGoogle Translateで翻訳しても、お客さんから「どういう意味ですか?」と電話がかかってきた時に説明できなければ話になりません。

そこで、また丸1日かけてこの英語を理解して、何とか回答しました。

この回答をするのに、調べたりインド人へ聞いたりして、当時は丸3日かかりました。

しかしUSCPAに合格した今なら、インド人に確認するまでもなく3分で即答できます朝起きてベッドから起き上がる前にメールで返事できてしまうレベルです。

自分でチラッと英文の財務諸表を見て「あ~そういうことか」と理解して回答できるので業務時間が圧倒的に短縮でき、短縮した時間でもっと他の仕事や勉強をしたり、余暇の時間に充てたりできます。

しかも、同じ回答をするのに3日かかっていたのが5分で回答できるようになれば、お客さんからも喜ばれます。

仕事は早く終わるし、お客さんからも喜ばれるし、正に一石二鳥です。

インドでの実務経験だけでもある程度はカバーできるのですが、騙し騙し断片的な知識を積み上げたところで根本から理解していないと応用が効かず、あまり時間短縮になりません。

USCPAは会計・監査・税務などを基礎から英語で学べるので圧倒的に役に立ちます。

インド人に確認せず「繰越欠損金が大きいので、減価償却分の繰延税金負債は全て繰延税金資産と相殺され、財務諸表上は繰延税金資産のみ純額表示されています。」とバシっと電話で即答できるようになると、現地採用だからと言って駐在員に見下されることもまずありません。

そしてインド人とコミュニケーションを取る時も、USCPAを取得する前は

自分が使っている英語は正しいのだろうか?ニュアンスは伝わっているだろうか?

などと不安でしたが、USCPA学習後は

もし話が伝わってないなら、インド人の方が勉強不足でしょ

と自信満々に話せるようになり、正確な会計英語をいちいち調べる時間も省けるようになったので、仕事が圧倒的に早くなりました。

海外就職とUSCPAの合格はどちらが優先か?

在宅

私は日本で働いていた時、「日本でUSCPAに合格したら海外移住しよう」と考えていました。

しかし結果的に、合格する前にインドへ移住してしまいました。

日本で勉強してUSCPAに合格してから海外移住をすべきか?

海外移住をしてから海外でUSCPAの勉強をすべきか?

を迷っている方がいると思うので、その点について考えてみたいと思います。

海外でUSCPAを勉強することには、日本で勉強する場合と比べてメリットとデメリットがあります。

なお、アジアで現地採用(または駐在)として働く場合のことのみを想定しています。

アジアの国でUSCPAを勉強するメリット

英語を業務で使う

アジアの国の会計事務所で働いている場合には、勉強で習った英単語と業務で使う英単語が重複するので相乗効果があります。

アジアの多くの国(中国を除くほぼ全ての国だと思います)では、英語ができれば会計・経理は問題なく業務をすることができます。

インドの場合には100%英語です。インド人同士がタミル語やヒンディー語を話しているのを聞くことはありますが、インド人がビジネスメールや文書で英語以外の言語を使っているのは見たことがありません。

会計基準や税法、決算書類や監査報告書などは全て英語で書かれています。また、インド人の経理、特にインドの会計士であればUSCPAは簡単なので、仲良くなって質問すると教えてくれたりします。

勉強時間を確保することができる

日本で働いていると、残業や通勤時間で時間を使ってしまうことが少なくないと思います。体力的にも消耗します。

そして、経理の場合には四半期決算や期末決算になると深夜残業や休日出勤が重なりなかなか勉強時間を確保できないことも少なくないのではないかと思います。

一方、海外で働いていると、基本的に定時退社が原則です。

もちろん四半期・期末は忙しくなりますが、日本ほどではない印象です。

また日本のような長距離通勤をすることも少ないため、通勤で時間が奪われることも基本的にありません。

平日2時間・週末5時間の勉強時間を確保することは比較的容易です。

アジアの国でUSCPAを勉強するデメリット

受験のたびに日本へ帰国しなければならない

USCPAはアメリカの他には日本、韓国、インド、UAE、ヨーロッパ、ブラジルなどで受験することができます。

日本人が多く就職するアジアの国で受験できるのはインドくらいです。

中国や東南アジアで働いている場合、受験のたびに日本へ帰国するかアメリカへ行かなければなりません。

USCPAは3ヶ月に1度、1科目ずつ受験する方が多いので、ヶ月ごとに4回日本へ帰国することになります。

勉強仲間を見つけるのが難しい

日本にいると、予備校などで勉強仲間を見つけることができ、それが励みとなってモチベーションの維持に繋がるかも知れません。

しかし、海外でUSCPAを勉強している人は(どこの地域にもいますが)日本に比べると見つけるのが少し難しく、孤独に勉強する側面が強くなるかも知れません。

海外就職をしてからUSCPAの勉強をするのはアリ

上記の通りメリット・デメリットありますが、キャリアアップを最重視するのであれば、海外へ来てからUSCPAを勉強するという選択肢はアリだと思います。

USCPAはコスパの良い資格

USCPAは受験料が高いですが、それ以上に得られるものが大きいのでコスパの良い資格だと思います。

しかし皆さんが実際に気になるのは、USCPAを取って海外へ転職した後、どんな仕事をして、どういうキャリアを築けるのか??ではないでしょうか?

海外の会計事務所や事業会社の経理職でどのような仕事ができるのかについては以下の記事で詳しく説明していますので是非ご一読ください。

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