今回は、アメリカ就職のコツについて、グローバル人材塾(GJJ)の田村さつきさんにお話を伺いました。
GJJ田村さつきさん
なお、主にアメリカの話ではありますが、イギリスを筆頭とするヨーロッパ諸国でも状況は同じです。
GJJは創立以来10年強、累計960名以上の海外就職をサポートしてきました。
以前から欧米就職の希望者は多かったのですが、欧米就職の壁は高く、近年になってようやく欧米就職の実現者が増えてきました。
そして、欧米就職を実現している人の多くが中国や東南アジアなどでの就労経験を評価されて欧米就職を実現しています。
本記事では、なぜアジアで働くと欧米就職が実現しやすくなるのか?の謎に迫ります。
Contents
アメリカ経済から見たアメリカ労働市場の現状
アメリカではコロナ以前から労働市場の二極化が進んでおり、「あなたじゃないとダメ」という仕事と「誰でもできる」という仕事への需要が高まる一方、中間の仕事がなくなりつつあります。
具体的には対人サービスが中心の低スキル労働と、高い思考力が必要な高スキル労働の求人は増加する一方、定型的な仕事に従事する中間スキル層の求人が減少しています。その傾向がコロナにより一層加速しました。
失われる中間層の雇用
2019年3月に田村さんが海外就職セミナー開催のためUCバークレーを訪問した際、フードデリバリーの機械が実験として設置されていました。2022年になると、それが居酒屋などで実用化されていました。
これは、レストランでのウェイター・ウェイトレスの雇用を奪っていると言えます。このように機械の進化により中間層の仕事が奪われつつあります。
ホワイトカラーの仕事でも、データ入力や編集などの単純事務作業はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により消滅しつつあります。
これは企業が、機械で代替できるような仕事に対して高い給料を払う価値を感じられなくなっているということです。
増加する低スキル労働者の雇用
一方、機械を導入するよりも人を雇用した方が安く済むような低スキル労働への求人は高まっています。
アメリカ全体で低スキル労働の求人が高まっていることは、アメリカで物価が上昇していることからも分かります。田村さんは2019年の3月と2021年の11月にアメリカへ渡航していますが、その間だけでも物価の急上昇を感じ、特にロサンゼルスでは在住者が異口同音に「物価が上昇した」と言っているそうです。
それだけ低スキル労働への需要が高まっていて、待遇が良くなっているということです。だからと言って、低スキル労働に対して就労ビザは発行されないので、日本人がこのポジションを狙ってアメリカ就職を目指すわけにはいきません。
また将来的に技術革新が起こり機械の価格が下がると、人を雇うより機械を購入した方が安くなるため、このような低スキル労働は現在の中間層と同様に雇用が失われてしまう可能性があります。
最後に残るのは高スキル労働者の雇用
先行きが暗い低所得者、中間層に対して、AIプログラムを組むような高度人材への求人は高まっています。コロナ以降、この傾向に更なる拍車がかかりました。
当然、高度人材でなければアメリカで就労ビザを取得するのは難しいので、アメリカ就職・ヨーロッパ就職を実現するためには高度人材を目指さなければなりません。
だからと言って、必ずしもAIエンジニアとして世界のライバルと戦って勝ち抜かなければアメリカ就職ができないというわけではありません。
では、具体的にどのような高度人材を目指せば良いのでしょうか?
アメリカ就職でアジアのリーダーが求められる3つの理由
アメリカやヨーロッパで求められる高度人材は、アジアでの就職を経験したアジアのリーダーです。ではなぜ、アジアの事情に精通したリーダーが必要とされるのでしょうか?その理由は3つあります。
理由1:アジアに精通した人材の希少性
アメリカのビジネスリーダーもアメリカ在住の日本人財界人と同様に、東南アジアやインド情勢に関心はあるものの、実戦に十分なほどはアジアの事情に精通していません。
アメリカ人、日本人を問わず、財界人の方々が「アジアってまだまだお腹壊すでしょう」「ボッタくられるでしょう」と普通に言うそうです。
確かに地域によってはお腹を壊したり、ボッタクられたりすることもあります。
しかしインドや東南アジアでもITサービスなどでは日本よりも遥かに便利だと感じる点もたくさんありますし、バンコクやクアラルンプールなどは高層ビルが立ち並び清潔です。
このように、アメリカには東南アジアやインドについて詳しい人が少ないため、需要があるようです。
理由2:アジアの高度人材はアメリカを目指す
アジアの高度人材は例外なくアメリカを目指しているため、アジア人をマネジメントした経験をアメリカで活かすことができます。
この項目は田村さんのお話に加えて私の意見を補足させて頂きます。私はインドの会社で3年半ほど働いていますが、確かにインドのIT高度人材はほぼ間違いなく100%アメリカを目指します。インドは親日的な国で、自動車業界を始めとする製造業に対しての敬意はあるのですが、少なくともIT業界においては日本の存在感は全くありません。
インド人のIT人材が日本を目指さない一方、日本のITスタートアップの多くはインドではなくベトナムでオフショア開発をします。
インドに進出する日系企業はメーカーが多く、IT企業はまだまだ少ないのですが、なぜ日本のIT企業が世界屈指のIT大国であるインドへ進出しないのでしょうか?
それは、インドには日本語のできる高度人材が少なく、英語ができる人材のいる日系IT企業も少ないからです。一方、ベトナムを筆頭とする東南アジアには優秀な日本語人材がまだまだ大勢おり、特にベトナムはITオフショアの誘致を積極的にやっているので、多くの日系IT企業がベトナムへ進出しています。
しかしこの先、英語が全くできないというのは日本の海外進出にとって致命的であるように思われます。インドへ進出する日系企業の中には、「日本語ができるから」という理由だけで中途半端な専門性のインド人を雇用して酷い目に遭ったという話もよく聞きます。
インドには英語人材なら優秀な人が山ほどいるのに、自社の英語力に不安があるので採用ミスをしてしまうのです。このような事情からかベトナムへ進出する企業が多いのですが、この先10年、20年後もベトナム人が日本語を学習してくれているかどうかは疑問です
ベトナムの経済が成長していけば、自然とベトナム人も世界最先端のアメリカを目指すようになり、日本語学習者は減少していくのではないでしょうか?
今後、日本語だけで海外進出をするのは限界があると思われますが、逆に英語ができるとチャンスが広がります。
「日本人」という枠だけだとなかなか仕事がないものの、アメリカにアジア人は大勢いるため、アジアでの経験があり「アジア人のリーダー」というポジションであれば仕事のチャンスが大きく広がります。
田村さんがシリコンバレーへ訪問した時には、アジア人を大勢見かけました。それだけチャンスがあるということです。
理由3:フィンテックやブロックチェーンの領域で遅れがある
田村さんが現地の方に聞いた話によると、アメリカではフィンテックやブロックチェーンの分野でアジアよりも後れを取っているそうで、アジア人材に対する需要があるため、アジアのリーダーとしてマネジメントができるとアメリカで働くチャンスが広がります。
アメリカ在住のアジア人の多くは中国系やインド系で、日本人の割合は少ないのですが(そもそも母国の人口が桁違いなので当たり前ですが)、アジア人の一員として欧米で役割を果たすことが欧米就職の鍵になると言えます。
以上3つの理由により、アメリカ就職を果たしたい方はアジアで5~10年を目途にキャリアを積むことがオススメです。
なぜ日本人がアメリカでアジアのリーダーになれるのか?
アメリカでアジアのリーダーが求められているのは前項の通りですが、なぜアジアの国で経験を積んだ日本人がアメリカでアジアのリーダーとなれるのでしょうか?
質問を変えると、アメリカでアジア人スタッフのリーダーとして活躍できるのがインド人でも中国人でもベトナム人でもなく、日本人なのでしょうか?
それは、日本人がチームワークの得意な国民性であるためです。
私がインドで働いていて強く感じるのは、専門性が高く個人プレーが得意なインド人は大勢いるものの、マネジメントが上手なインド人は決して多くありません。
インド人の上司は部下の状況やモチベーションを考えずに命令を下すだけで、部下は上司に対して絶対服従、不服があれば転職・・・というケースばかりよく耳にします。
インド人は普段とても論理的なのですが、ボスの前では突然思考停止してイエスマンになってしまう人が大勢いる印象です。
その点、日本人はチームワークが優れている国民性なので相手の気持ちを察するのも得意で、メンバーのモチベーションを考慮しつつ上手にマネジメントすることに長けていると言えるのではないでしょうか。
私自身、中国人やインド人から「日本人のチームワークは凄いね!」と言われた経験は1度や2度ではありません。
専門性だけで中国人やインド人に勝つのは難しいかも知れませんが、「優秀な中国人、東南アジア人、インド人のメンバーが最大限に能力を発揮してもらえる環境を整える」という点において日本人には優位性があるので、日本人がアジアのリーダーとしてアメリカで活躍する機会を得られるのではないかと思います。
アジア海外就職をする一番のメリットは、現地採用であってもマネジメントの経験を積む経験を得られることです。
日本の会社で管理職への昇進を待っていても時間がかかりますし、管理職になれたとしても日本語で日本人をマネジメントする仕事しか経験できません。
しかしアジアを見渡すと20-30代の現地採用でも英語で現地スタッフのマネジメントを任されている日本人が多くいます。
「マネジメント」とは、必ずしも肩書がマネジメント職であるというだけではありません。
平社員であっても、現地スタッフに動いてもらうためにスケジュールを組み、進捗を把握してリマインドを行い、遅れそうであれば調整を行う...などの業務をしていれば立派なプロジェクトマネジメントと言えます。
人に動いてもらうのは、時として自分自身で動くことよりも難しいです。
特にシンガポール、香港、上海など広域の拠点となる場所で就職できれば、広範囲の拠点をマネジメントできる仕事に就ける可能性もあるので、アメリカやヨーロッパでも評価されやすくなります。
但し香港・シンガポール・上海などはそもそもアジアの中でも就職の難易度が高い地域なので、経歴に自信がない方はまず最初にインドやベトナムなどで経験を積み、シンガポールを経てから欧米を目指すのも良いかも知れません。
このような具体的な国の選び方については海外就職のプロに聞いた国別の就職実現者推移の記事をご参照ください。
本ブログのテーマは「アジアで暮らす」なのですが、「アジアの一員としてアジアに暮らしている」という発想を持つことで人生が大きく広がるというメッセージを込めています。欧米就職にも「アジア人として」という考え方が鍵になると考えています。
従って、本ブログでは欧米就職についても積極的に取り扱っていきたいと考えており、欧米就職を実現した方の体験記事も掲載する予定です。
日本人として勝てる場所
未来仮説として、絶対に日本人として勝てる場所はやはり日本食業界です。
一流の寿司、ラーメンなどの日本食関係のシェフなどの職種であれば世界中どこでも活躍できます。そして、飲食系のところではビザが取りやすいです。
写真は田村さんがアメリカで撮影した日本食です。日本では1食1000円の定食がアメリカでは3~5倍にもなります。日本食の値段が高い分だけ給料も上がり、現地政府へ納税することになるため、現地政府からは歓迎されます。
では味の方はどうかというと、ひょっとしたら日本の下町の手頃な定食屋さんの方が日本人の舌には合うかも知れません。
つまり、激烈な競争に勝ち抜いた超一流のシェフでなくても欧米の日本食レストランで勝負できる可能性はあるということです。
ITのデータサイエンティスト等であれば世界中の優秀なライバルと戦わなければなりませんが、日本食業界であればライバルは日本人だけなので、競争相手が少ないと言えます。
なお、飲食業界だからといって必ずしも料理人である必要はありません。
飲食業界の中ででも、例えば海外進出コンサル(ビザの手配や法人設立サポート)など、料理人ではなくてもビザを取れるポイントがあります。
自社で豊富な海外進出ノウハウを蓄積している大手自動車メーカーや総合商社が海外進出などとは異なり、中小零細や個人の飲食店にとって海外進出は一大決心で、外部のコンサルタントに大金を支払って依頼せざるを得ない状況です。
逆に言うと、飲食業界の海外進出のサポートをできるのであればビザが下りる可能性もあると言えます。
もちろん海外進出サポート業務に限らず、様々な職種でチャンスがあるかと思います。
欧米で働きたい場合には、飲食業界の中で自分の経験を活かせる職種を探してみるというのがアメリカ就職への一番の近道と言えます。
英語力×専門性で勝負
人気の高いアメリカやイギリスへ就職するには、英語力と専門性のいずれもが必要になります。寿司職人など高い技術があれば英語力が多少欠けていても必要とされる場合もありますが、多くの職種では英語力が必要となります。
現在、英語力にも専門性にも自信がない方は、これからキャリアアップをしていきましょう!
という個別のケースの疑問については、海外就職のプロであるグローバル人材塾の無料カウンセリングを受けてみるのがオススメです。
これまでのキャリアや得意分野により戦略は変わってくるのですが、豊富な成功事例を基にプロの目で最適な提案を受けられます。
無料カウンセリングの際に「"アジアで暮らす"を見た」
- 入会金永久無料
- 3,000円分のAmazonギフト券プレゼント
最初のカウンセリングは無料ですし、スカイプでも受講できます。グローバル人材塾の詳細については海外就職の希望者は必見!グローバル人材塾をオススメする3つの理由の記事をご参照ください。