経理

海外就職で需要の高い職種は理系の技術者だそうですが、文系出身者がすぐに目指せる職種ではないと思います。エンジニアではない文系の人が海外就職をする場合には営業の求人が圧倒的に多いですが、営業が苦手or専門知識が欲しいという方も多いと思います。文系である程度専門知識が必要というと管理系職種(財務・経理・法務・総務・人事など)を希望する方が多いと思いますが、管理系職種の中でもお勧めなのが経理です。

※記事のタイトルは「文系の人に会計がおススメ」と書いていますが、営業が得意 or 大好きであれば営業の方が海外求人は多いです。

海外就職で経理がおススメの理由

海外就職で経理がおススメの理由は大きく分けて3つあります。

求人数が多い

管理部門系の職種の中では経理の求人が最も多いです。国内転職でも経理は求人数が多く「経理は潰しが効く」と言いますが、海外でも同様です。

海外の場合、人事や法務はローカルのルールに従うことになるので基本的には日本人が駐在や現地採用として海外子会社に在籍するケースは少なく、本社の人事や法務が現地の専門家と連携して業務を進めるケースが少なくありません。海外現地採用での求人に限定して考えると、法務の求人はほぼ見たことがありません。

一方、経理では連結決算があるため何でもかんでも現地スタッフ任せにした結果として締日までに決算が締まらなければ本社が困ります。「締日までに資料が出揃うかどうか、当日までのお楽しみ」というのは本社の経理にとって恐怖以外の何物でもありません。

また、連結決算においては海外と日本との間での会計基準の調整なども必要となり、その際に現地の会計基準がどうなっているのかを本社の経理担当も理解をする必要があります。

そこで、経理部門では全て現地人スタッフに丸投げはせず、現地に駐在か現地採用で日本人を配属するケースが少なくありません。

海外子会社の経理担当だけでなく、会計事務所も日系顧客への対応担当として日本人を採用するケースが少なくありません。

国内でも海外でもそこまで事情は変わらない

法務などの場合には、国が変わると法律も大きく変わってしまい、日本の知識がそのまま使えないケースも多いと思います。アジア諸国は法制度の発達が日本に比べて遅れている国も多いため、特にそうだと思います。

一方、経理は海外へ行ってもそこまでは大きく変わりません。もちろん、世界の全ての国の経理制度を調べたわけではないので北朝鮮やイランの経理がどうなっているのかは知りませんが、少なくとも日本人が現地採用として働くような国であればそこまで変わりません。

  • 複式簿記
  • 会計の税引前利益に加算・減算をして税金を計算する
  • 法人税・所得税・消費税などの基本的な仕組み

などは変わりません。

もう少し細かい例を挙げると、固定資産の減価償却率や耐用年数などの細かい基準は国によって違いますが、「固定資産」という概念は世界中どこでもそこまで変わりません。

もちろん税制などは国によって変わり、インドの場合には日本では見たことも聞いたこともない税金が色々あり戸惑いますが、多くの企業で海外子会社の経理担当者に期待される役割は現地の税制を細かく正確に理解することではありません。

海外子会社の経理担当者に期待される役割は現地の会計の専門家が言っていることをきちんと理解し、一方で現地の専門家に日本本社の期待水準を伝えて動いてもらうことにあります。

そのために基礎的な会計と税務の理解は必要になりますが、それ以上に進捗管理や調整といったマネジメントの力が要求されます。

スキルを説明しやすい

経理のスキルは説明しやすいですが、その理由は2つあります。

資格が豊富

人事や総務などの場合、資格などでスキルをカチッと証明するのは中々難しいと思います。法務には司法試験や司法書士といった資格はありますが極めて難関ですし、「ビジネス実務法務検定」は海外はおろか国内でもそこまで知名度はありません。

一方、経理の場合には国内であれば日商簿記検定という有名な検定があり、日本人に対しては日商簿記のレベルでスキルを説明できます。

海外の場合、日本の検定試験は誰も知りませんがUSCPA(米国公認会計士)という世界的に有名な資格があります。

別の記事で改めてご説明しますが、この資格は日本国内でも優遇されるだけでなく海外でも圧倒的な知名度あります。インドでも会計関係の人なら誰でも知っています。

このUSCPAも難関資格ではありますが、日本の公認会計士と異なり働きながら1~2年で取得する人が多いです。

インドで働いている日本人でもUSCPAの勉強・資格取得をしている人は少なくありません。USCPAについては下記記事をご参照ください。

実務もスキルセットを明確にしやすい

経理の場合、「〇〇の実務経験があります」という形でスキルを明確化しやすい特徴があります。

経理スキルの例
  • 単体決算を締められる
  • 連結決算を締められる
  • 税金計算をすることができる
  • 内部統制を構築・運用できる

上記のスキルはとてもザックリしていて実際はもっと細かいですが、経理はどこの会社でもやることは同じなので、かつ「締日までに正確に数字を出せるか」という点で結果も明確なので、このような形で「何ができるのか」を明確にしやすいです。

一方、採用担当などの場合には結果が目に見えて分かりやすいものではないので、スキルを客観的に説明するのが難しいのではないかと思います。

海外で経理担当を目指す上での注意

海外で経理を担当する場合には国内と比較して違いがある場合があるので注意が必要です。ただ、私はインド以外の国については転職活動時にエージェントから聞いた話の範囲でしか分からないので、その点についてご留意ください。

専門性は日本ほどつかない

海外の場合、仕訳の入力作業などは現地のローカルスタッフが行い、日本人は本社とのやり取りや現地人スタッフのマネジメントに徹することが多いです。

インドの場合ですが、インド人の大卒初任給は月給2万ルピー(3.2万円)程度、それに対して日本人は最低ビザ支給基準でも月給13.5万ルピー(21.6万円)程度です。インド人スタッフは中堅経理社員でも月給6万程度なので、インド人スタッフでもできる(仕訳などの)作業を日本人がやることはありません。

また、監査の作業なども同じで、現地の会計基準に従った監査の作業はインド人の会計士が行うことなので、給与の高い日本人がインド人でもできる監査作業を担当することはありません。

日本人に任されるのは、日系顧客との折衝やインド人スタッフのマネジメント(進捗管理や品質管理)になります。もちろん、業務を通じて会計に関する知識も向上していきますが、会計の専門性以上にマネジメントや調整力が問われる印象です。

私の場合、日本で経理を担当していたのでインド人スタッフの作業内容やミスが発生したときの原因なども理解ができます。

しかし経理(仕訳入力)未経験でインド就職をされた方からは、「細かい業務が分からないので、問題が発生したときにインド人が話している内容を理解できない」といった話も聞いたことがあります。

インドは未経験でも採用してもらえることが多いですが、採用されたからと言って採用された後に大丈夫かどうかはまた別問題です。その点は、面接で十分に期待値を確認する必要があります。

会計事務所の場合、クレーム対応に終始する場合がある

これはインドに限った話ではないですが、会計事務所の場合には1人の日本人で何百というクライアントを持つ場合があります。

そうすると、日常的にはローカルスタッフが直接クライアントとやり取りを行い、問題が発生したときだけ日本人が呼ばれるという事態が発生します。

特に大きな会計事務所の場合、社内での日本人(ジャパンデスク)の位置づけは完全に営業です。従って、売上のノルマがあったりする場合もあるようです。

経理や会計といったイメージからはだいぶ離れた業務を行う場合もあるので、本当にやりたい業務なのかどうかは面接で確認する必要があります。

海外就職のために経理を選ぶことについて

本来、仕事というのは自分の興味に従って決めるべきで、人事に興味があれば人事を目指すべきかも知れません。しかし私は「会計には興味ないけど、海外で仕事を探したいから経理職を目指す」というのはアリかなと思います。

私も元々は法務系の仕事だったのですが、海外で管理部門の求人と言えばせいぜい経理くらいしかないと分かったので経理系のキャリアへ舵を切りました。

特に会計に強い興味があるわけではないのですが、どうしても海外に行きたかったので消去法で会計を選んだ形です。インドでは会計系の日本人は極めて少ないので(そもそも経理を志望する人は営業などに比べて保守的な人が多く海外には出たがらないので)売り手市場になります。

インドの場合は転職者も少ないですが企業の求人も多いわけではないので1年中常に経理の求人が出ているわけではないのです。経理の経験者がインドにある日系転職エージェントに登録して1年くらい待っていれば何かしら求人の紹介があるのではないかと思います。