記事中の※は日野さんのコメントではなく、ブログ管理人による補足事項です。
この記事では、1リンギット(RM)=25円として計算します。
多様性があり英語が通じるマレーシアへ
私は外国語大学出身で、学生時代に韓国へ1年間留学していたこともあり、「まず海外で働いていみたい、そのためにはどうすれば良いか?」と考えていました。
海外で働くことを実現するためには駐在で行くのが理想的ですが、女性で駐在員を目指すのは厳しいと思いました。
日本で5年ほど働いていましたが、社内で駐在を目指すのは難しく、日本国内で別の企業へ転職した上で駐在員を目指しても海外へ行けるまでに2〜3年はかかります。
私は日本の物流企業で働いたあと、日本国内でグローバルなイメージがある有名なIT企業で働きましたが、それでも海外駐在できる確率は0.01%もありませんでした。
そこで、現地採用として行くことに決めました。
私はマレーシア、シンガポール、タイで仕事を探していましたが
- 英語を使える国
- 文化的に多様性のある環境
- 自分一人で暮らせる
という3つの条件を満たすマレーシアを選びました。
まず、タイについては求人を見ていくうちに、日系企業の力が強く、タイで働く環境は日本と変わらないと感じました。
私は異文化に身を置いて働きたかったので、タイは私の理想とギャップがあると感じました。
※タイの環境が日本と変わらないという点については、「今の環境で長く勤めたい」バンコク現地採用20代男性S.M.さんの体験記事を読んで頂けばイメージがわくと思います。タイの日系企業で働いているS.M.さんは「上司が帰るまで帰りづらい」といった日本的な文化を感じるそうです。
シンガポールとマレーシアで求人を探していましたが、シンガポールは家賃が高いので1人暮らしをするのが難しくルームシェアになります。
マレーシアは金銭的にも1人暮らしが十分可能で、「せっかく海外に住むなら余裕のある暮らしをしたい」と思っていたところ、マレーシアから良いオファーがあったのでマレーシアに決めました。
マレーシアは人種、宗教、言語が入り混じり、様々な価値観が混在する面白い環境です。
ビザ基準は5,000RM(125,000円)が最低ラインですが、マレーシアでの生活を考慮すると最低でもRM6,000以上は必要かと思います。
日本人のポジションであればRM6,000(150,000円)以上は給与は提示されるのではないかと思います。
コールセンターの場合は今は需要が高いのかRM8,000(200,000円)以上の求人を見たことがありますがその仕事がキャリアに繋がるのか、今の自分に合っているか等、熟考して決めた方が良いと思います。
外資系の物流会社(海運会社)へ就職しました。
日本でも5年ほど物流企業で働いており、好奇心から本当は別の業界で働いてみたいという気持ちもありました。
しかしマレーシアでは仕事内容がこれまでの学歴や職歴と一致していないとビザが下りにくいため、日本での仕事と同じ職種となりました。
物流会社で5年間働いていたバックグラウンドがあることが評価されたため、面接はスムーズでした。
家族と離れて大丈夫ですか?という程度の質問しか印象にありません。
逆に、私が会社に質問をして、会社からの回答で印象に残ったものがありました。
私は、日本にいた時は週末にも勉強をしてスキルアップしていました。
「マレーシアでもそのくらい頑張らないといけないんだ」と思いこんでいたのですが、マレーシア人のワークとライフのバランスをとる考えにカルチャーショックを受けました。
TOEICは680点くらいでした。
JACと面談した時、そして企業面接の時に英語力チェックがありました。
会社のHR(人事)がしっかりしていたので、ビザの手続きはスムーズでした。
私が準備したのは
- 卒業証明書
- パスポートのコピー
- 会社からのOffer Letterに私がサインしたもの
でした。
会社のHRがしっかりしているかどうかは重要です。
面接から内定までのプロセスで、迅速かつ丁寧な対応をしているかどうかを見極めてください。
HRの質が会社の質に直結します。
HRの質が悪い会社へ入社すると、ビザを申請しても下りないといった話も聞きます。
入社したいと思う国、会社には足を運ぶべきだと思います。
私は、実際の会社、働くメンバーを見ることを重視しています。
マレーシアの場合、1次、2次面接はSkypeでも「最終面接は現地へ来てください」という会社は多いです。
例えばマレーシアはコールセンターの求人が多く、ボンビーガールを見て「マレーシアイイじゃん」と思って下見をせずに来る方も多いのですが、ビザおりないとか、生活が馴染めないなどの問題が発生する場合も少なくありません。
従って、会社や生活環境を確認するために現地へ足を運んだ方がいいと思います。
世界第2位の海運会社へ就職
スイスに本社がある、物流業界の海運会社です。世界第2位のシェアを誇り、日本も含め世界中に支店があります。
日本でいうと、商船三井や日本郵船などが競合にあたります。
日本人は私1人だけ、外国人は私以外にフランス人が2人います。
オフィスにいる社員の99%はマレーシア人です。
私の直属の上司はマレーシア人で、更にその上司はフランス人です。
マレーシア人は長文を読むのが苦手なようで、ちょっと込み入った話になるとすぐ電話をしてきたり、WhatsApp(LINEのようなメッセージアプリ)でメッセージを送ってきます。
電話で詳細を決めた後にメールで内容を確認します。
幸い、社内も取引先も良い方ばかりで、理不尽な扱いを受けたことはありません。
ただ、取引先の方とオンラインミーティングをした時に「日野さんは現地採用で働かれてるんですか?」と聞かれたり、日本支店の人にも「現地採用の日野さんです」と、現地採用であることを強調されて紹介されることがあるので少しモヤモヤすることはあります。
定時は8:30から17:30ですが、直行直帰も問題ありません。
今はコロナの影響で2ヶ月以上在宅ワークをしていますが、普段は自分で車を運転して通勤しています。
営業なので会社から社有車を割り当てられています。
車が支給されないという方は電車で通勤します。
職種にもよりますが、運転免許は取得しておいた方が応募できる求人の幅が広がったり、選考において有利になったりします。
クアラルンプール市内だけなら電車でも行けますが、ちょっと郊外の企業へ訪問するには車がないと不便です。
※アジアの国で、多くの日本人が自ら車を運転して営業や通勤しているという国はマレーシア以外では聞いたことがありません。
- 月100RM(2,500円)までの医療費は会社が負担してくれます。1回の診察代は約50RM(1,250円)なので、月2回が目安になります。
- 入院や手術の時に下りる保険に会社で加入してくれています。
- 歯の治療も年間300RM(7,500円)まで会社が負担してくれます。
- 年に1回の健康診断を600RM(15,000円)まで負担してくれます。ただ40歳を超えると1,800RM(45,000円)まで負担してくれるそうです。
- 年に1回の帰国費用が会社負担です。
EPF(年金)は、外国人は任意加入です。
会社のHRによると、マレーシアで骨を埋める予定なら問題ないものの、2〜3年で帰国する可能性がある場合には払い戻しが大変なため加入しないことを勧められました。
マレーシアでは問題の根本解決が難しい
セールスマネージャーとして、日系企業と韓国系企業に法人営業をしています。
新規顧客獲得と既存顧客のサポートの両方がありますが、最近は既存のフォローアップが忙しく新規の獲得業務まで手が回っていません。
既存のフォローアップとは、船の手配や料金の交渉などです。
商工会などへ出向いて名刺交換をしたりすることが多いです。
以前は、人脈を広げるためにゴルフなどへも参加していましたが、最近は週末は自分のやりたいことをやりたいという思いもあり、ゴルフへは参加していません。
なお現在のマレーシアは、ベトナムやインドとは異なり市場は成熟しているため、決まったパイの中でのシェアの奪い合いとなっています。
日系の海運会社は対日、もしくはアジア域内のサービス展開は強いですが、マレーシアと欧米やアフリカ、南米などの長距離航路は外資系船会社の方が総合的にサービスが充実していると思います。
当社は世界中に支店があり、世界中の情報に精通しているのが強みです。
マレーシアから第3国へ輸送したい場合には、日系の海運会社ではなく当社が選ばれます。
例えばマレーシアには家電や車の部品などを生産している日系企業の工場が多数ありますが、マレーシアで生産した製品をタイ、インドネシア、中東、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパなどへ輸出することがあります。
またマレーシアはムスリムの国ですが、マレーシアのハラルマーク(ムスリムの規律に反しない食品であることを示すマーク)は中東諸国からも信頼が厚いです。
そこで、マレーシアで日系企業がムスリム向けの食品を生産し、マレーシア政府のハラルマーク認定を受け、その食品を中東へ輸出するといった取引があります。
マレーシアでは、日本にいた時のように100%の意思疎通をするのが難しいです。
これは語学力の問題もあるかも知れませんが、それよりは考え方の違いが大きいと感じます。
問題が発生した時に、表面的な解決だけで済ませようとする傾向があり、根本解決をするのが難しいです。
事例を2つご紹介します。
【親知らずは痛くなってから抜く】
マレーシア人の同僚に「今週末に親知らずを抜くんだ」と話したところ、同僚からは「なんで今抜くの?痛くなってから抜けばいいじゃん?」って言われました。
マレーシア人の同僚には「痛くなる前に、事前に問題を解決する」という必要性が分からないようです。
【水平展開ができない】
仕事で1つ問題が発生して、同僚と話して解決する道筋ができたことがありました。
別の仕事で似たような問題が発生しそうだったので「こっちの問題も一緒に解決した方がいいよ」と言ったら、「そっちは、その問題が起きてから考えればいいよ」と言われました。
「どうして根本解決が必要なのか」を伝えきるのは難しいです。
そもそもマレーシアの人達は、自分で問題を解決しようという意識が薄く、周りに解決してもらうのを待っている傾向があります。
国の政治についても、政治家がどうにかしてくれるのを待っている受け身の姿勢を感じます。
これは中華系・マレー系・インド系のみんなに当てはまります。
中華系は、商売は一生懸命するかも知れませんが、政府のトップがマレー系であるということもあり、政治に対しては受け身の姿勢です。
有給が取りやすいのは良いところです。
また、日本にいた時は自分の仕事が終わっても上司や同僚が残っていたら「手伝いましょうか?」って聞いてから帰らなければならないという文化がありました。
しかし今の会社では、自分の仕事が終わったら帰れます。
仕事の99%は英語です。
社内には日本語が分かる人がいません。
クライアントは日系企業ですが、実務担当者はマレーシア人が7割なので基本は英語です。
日本語を使うのは、たまにクライアントの日本人と話をするときと当社の日本支店とやり取りをする時のみです。
TOEICは640点から800点に上がりました。
英語を使ってメールや電話をすることに抵抗は無くなりました。
今後は留学も考えているので、IELTSの勉強を始めて英語能力を更に伸ばしたいと思います。
なお、マレーシア英語を聞き取れるようになったからと言ってすぐにアメリカやイギリスで英語を使えるようになる訳ではないと思うので注意が必要です。
自分の考えを言語化して伝えるのに慣れました。
日本だと、自分から積極的に発信しなくても周りが察してくれることがありましたが、マレーシア人はどんどん意見を言うので、その影響を受けました。
海外留学をして人道支援物流を学びたい
今後は一度留学をして、物流の専門知識を深めたいと思っています。
現在の仕事は日本で仕事した延長にあるので、現職で物流に関する専門性が深まったかというと、実は微妙です。
現在の仕事はキャリアなので、フォワーダーほどの専門知識は要求されないというのが正直なところです。
「日本とマレーシアではこの荷物のやり取りができなくなりました」といった情報は、自分から取りに行かないと自動的には私のところまで落ちてきません。
また、この5年間で物流に関する資格を取得したわけではないので、専門性が深まったとは言い切れません。
これまでの仕事では数字に追われてきたので、大学院では人道支援物流を学びたいです。
人道支援物流とは、災害の被災地や戦場へどうやって必要物資を届けるかという研究です。
企業の中には人道支援物流をやってる会社もあるため、そのような場所で働きたいと考えています。
物流業界は慢性的に人手不足ですので、正直なところ将来の就職についてはあまり心配していません。
物流業界では、即戦力として活躍できるだけの知識がつくまでには3〜4年くらいの時間が必要ですが、物流の基本的な知識を身につければ世界中どこの国へ行っても活躍できます。
もし未経験から物流業界へチャレンジしたいのであれば、日本の基礎の実務をつけてから海外就職へチャレンジするのがオススメではありますが、海外でもちゃんとした研修とか学びを提供してくれる会社であれば良いと思います。
海外就職をする時には日系企業にフォーカスしがちだと思いますが、仕事の裁量や待遇などの面で外資やローカル企業の方がチャンスはあると思います。
外資(欧米)の文化を自分の中に取り入れるのもありではないでしょうか。
日野さんの体験談を読んでアジアでの海外就職に興味を持った方は、ぜひ【はじめてのアジア海外就職】実現までの道のりまとめの記事をお読みください。
情報収集の方法から、海外就職実現までの段取りをご紹介しています。