漠然と「インドでの生活は大変」というイメージをお持ちの方は多いと思いますが、実際に大変です。何が大変なのか予め分かっていれば対策が可能なこともあると思うので、この記事では私がインド生活で大変だと感じていること8選をお伝えします。
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時間にルーズ
海外は概して時間にルーズと言われていますが、中国や東南アジアの在住者と話をしてもインドのルーズさは群を抜いています。時間にルーズで困った例を幾つかご紹介します。
インターネット・エアコンの工事が来ない
家に入居した時にWiFiの工事を申し込みました。9月10日の10時に来るというので待っていたら、11時になっても来ません。そこで工事業者に電話してみたところ
チェンナイで最も暑い季節(4月〜5月)に壊れたので、日中は40度を超え、夜でも毎日熱帯夜です。暑くて仕方がないので、ひんやりとした硬い床で寝たそうです。
ピザのデリバリーも来ない
"ZOMATO"という宅配アプリがあります。このアプリでは「調理中→配達中→配達完了」と、注文のステータスを確認することができます。
このアプリでドミノ・ピザのデリバリーを頼んだところ、30分ほどでステータスが「調理中」から「配達中」に変わりました。ところがその後1時間経ってもピザが来ません。
ZOMATOではドライバーに電話ができるので電話をしたところ
自分自身もルーズな時間感覚に慣れてしまう
初めて行くお客様や、日本人がいるお客様の所へ訪問するときはキッチリ時間通りに行くように気をつけます。ところが
- 定期的に訪問しているお客様
- オフィスにがインド人スタッフしかいない
という2つの条件を満たすと、感覚的に「時間通りに行かなくて良い」という感覚になりがちです。例えば「2時に行きます」と言っても、前の用事が押すとオフィスを出るのが2時を過ぎて、そこからお昼ご飯を食べて3時半に到着(しかも無連絡)・・・ということがあります。
逆に、前の用事が早く終わると1時間早く着いたりもします。
最初のうちは「すみません、1時間ほど遅れます」などと顧客のインド人に連絡していたのですが、「いちいちそんなことで連絡してこなくて大丈夫です」と遠回しに言われることもありました。
決して遅刻をして良いわけではないですが、どう見ても誰も気にしていないのが火を見るよりも明らかなので、訪問時刻を気にしているのがバカバカしく思えてくるんです。
むしろ、時間通りに到着したのにインド人スタッフが昼ご飯に行っていて不在ということすらあります。
これについてインド人からは何も言われたことがなく、訪問時間というのは参考程度の意味しか持たなくなっています。
よく待たされる
「時間にルーズ」というのと似ているのですが、店頭などでもよく待たされます。これについても具体的に経験したエピソードをご紹介します。
ケンタッキーが来ない
日本でケンタッキーへ行くと、カウンターで誰も並んでいなければ2〜3分で注文した食べ物が出てくると思います。
ところが、インドでは誰も並んでいないのに15分以上待たされることが珍しくありません。
スタッフは10人以上いるのですが、何をやっているのかいつも不思議です。
しかも、別の国のようにスタッフが談笑してサボっているという訳でもなく、みんな黙々と一生懸命「仕事らしい何か」をしていますので怒ることもできません。
なお、一番待たされるのは役所です。6時間とか8時間とか、そういう単位で待たされます。その件については下記記事をご参照ください。
お釣りが無いから待たされる
個人店舗で70ルピーのご飯を食べて100ルピーを払うと30ルピーが返ってくるわけですが、その30ルピーがないと言って待つように言われました。
そうすると、スタッフの1人が500ルピー札を持って店を出ていきました。近所の店で小銭の両替をしてもらうそうです。ここから何と1時間も待たされました。
山奥の秘境にあるお店ではなく、商店街なので周りにお店はいくらでもあります。
周囲のお店と余程仲が悪いのか、どのお店も小銭がないのか、どういうことなんでしょうか。
他のお客さんも10人くらい待っていました。みんな怒るわけでもなく、ケータイもせずにボーッと1時間待っていました。
頻繁に停電が起こる
以前よりは減ったそうですが、それでもよく停電になります。大抵は2〜3分で直りますが長いと1時間くらい停電したりします。
2015年の洪水の際は3日間停電が続いたそうです。
自家発電装置のない建物では40度近い猛暑の中エアコンが止まったりして地獄です。
携帯電話の基地局は動いているようですが、信号は止まることがあります。そうすると警官が手旗信号を始めます。
上の写真で、信号が消灯していて、画面左の方で警官が道の真ん中に立ってるのをご確認頂けるかと思います。
街灯やホテルの看板は点灯していますが、信号だけ何故か消灯しています。
信号の近くで警察官が何もせずにボーッと座っているのを時々見かけるのですが、ひょっとしたら停電に備えて座っているのかも知れません。
外を歩くのが大変
「インドで外を歩けない」と言うと、治安が悪くて白昼堂々刺されるとか、そういうことをイメージするかも知れません。しかし私が住んでいるチェンナイに限って言えば治安は非常に良いです(北インドの方はチェンナイより治安が悪いです)。では、どうして外を歩けないのでしょうか?
詳しくは下記の記事にまとめていますのでご参照ください。
水と空気が汚い
インドに来ると日本の綺麗な水と空気がいかに貴重なのかを実感します。
深刻な大気汚染
デリーの大気汚染は世界一酷いと言われています。特に11月から2月頃は最悪です。
大気汚染指数(AQI)が100を超えると健康に悪いと言われていますが、東京は80程度、中国の北京は500程度、ニューデリーは酷いと999などと表示されます。
私は2018年5月にニューデリーへ行きました。5月は比較的マシと言われていますが、それでも外を歩いているとすぐに喉が痛くなりました。ニューデリー・グルガオンにいるならマスクは必須です。しかしインド人は滅多にマスクをしません。
グルガオンにある大抵の日系企業や家庭には空気清浄機があるそうですが、外資系やインド系には空気清浄機はありません。従って、屋内でもPM2.5のリスクに晒されます。デリー・グルガオンで就職する場合には、面接の際に空気清浄機があるかどうかを確認した方が良いと思います。
ある日本人に聞いたのですが、マスクをして会社に出社したらインド人から「インドをバカにしてんのか!」と怒られたそうです。しかし自分の身を守ることは第一ですから、怒られてもマスクはしましょう。
チェンナイは海沿いで大気が滞留しないため、デリー・グルガオンに比べれば空気はマシです。しかし日本に比べれば遥かに悪いです。
ビーチ沿いを歩いていれば特に問題は感じませんが、大通り沿いを歩くとすぐに喉が痛くなります。
燃費の悪いオートリキシャやバイクが原因ではないかと思います。
水が酷い
水道水を飲めないのは日本以外のアジア諸国であれば当たり前ですが、インドの水道水は特に酷いです。
シャワーから突然赤錆びた水が出てきたりします。
水が汚いため、洗濯をしても綺麗にしてるのか汚してるのか分からないような状況です。従って、大切な服はインドへ持って来ない方が良いです。これは洗濯屋へ出しても大して変わりません。
飲み水については20リットル75ルピー(約120円)でデリバリーしてもらうことができます。これをウォーターサーバーに挿せば、水を安全に飲むことができます。
大事なことを連絡してくれない
自分から積極的に情報を取っていかなければ連絡が来ないことがあります。
例えば、鉄道の出発ホームが出発10分前に突然変更になったり、空港で搭乗口が無連絡で変更になったりすることがあります。
他の国であれば考えられないことですが、インドでは普段から空港のフライト情報や駅の電光掲示板を念入りにチェックしなければなりません。
この問題に関する詳細は インド旅行で飛行機を利用するときに注意べきこと5選をご参照ください。
日本の食材・調味料を入手しにくい
日本の調味料は滅多に手に入りません。ブルドックソースが1本1000ルピー(1600円)で売られていたりします。
必要なものはスリランカのコロンボやタイのバンコクへ買い出しに出かけなければなりません。
チェンナイで入手できる食材・日用品については下記をご参照ください。なお、インドの他の大都市も大差ありません。
祝日が複雑
インドでは色々な大変なことがありますが、最もカルチャーショックを受けたことを1つ挙げろと言われたら間違いなくこれです。
インドの祝日は州によって異なる
インドでは祝日が州によってバラバラです。全国で毎年必ず祝日になるのは下記の3日です。
1月26日 共和国記念日(インド憲法発布日)
8月15日 独立記念日(インドがイギリスから独立した日)
10月 2日 ガンディーの誕生日
それ以外の祝日は州によって、年によって異なり、カレンダーで確認する必要があります。インドでは州ごとの祝日カレンダーが用意されています。
- 毎年10月下旬から11月初旬に行われる「ディワリ」というお祭りは北インド最大のお祭りなのですが、北インドでは長期で祝日が連続するのに対し南インドでは1~2日しか休みになりません。
- 1月中旬に行う「ポンガル」というお祭りはタミルナドゥ州最大のお祭りは、スリランカやシンガポールでもお祝いをします。しかし北インドでは何もなく通常通りの平日です。
私は2019年のポンガル休暇を利用してバラナシへ行きましたが、バラナシではポンガルとは関係のない凧上げのお祭りをやっていました。
バラナシのインド人に「チェンナイはポンガルて祝日なんです」と言っても「ポンガルって何?」という反応でした。私がいるタミルナドゥ州の場合は下記のサイトになります。
Tamil Nadu Government Holidays
祝日が突然決まることがある
突然祝日が発生する場合もあります。
2018年11月の例
2018年11月21日、大雨の日でしたが、会社へ出勤するときに道が非常に空いていたので「今日は大雨だからみんな休みなのかな?」などと思っていました。
昼休みにオフィスの周りを歩いた時も銀行などが閉まっていて「銀行が雨だから休むとは・・・」などと思っていました。私以外の社員もインド人含め全員出勤していました。
翌朝出勤すると、同僚から「昨日、祝日だったらしいですよ!」と衝撃的なサプライズがありました。ホームページの祝日リストを見たときには確かに11月21日が祝日になっていました。
11月15日に同じリストを見たときには「次の祝日はクリスマスか」と思った記憶がありますので、突然祝日が追加されたのは間違いありません。
インド人スタッフも「え?昨日祝日だったの?」という反応です。急に祝日になるなんて、インドの大統領に孫でも生まれたのか、誰か偉い人が急に亡くなったのかと思ったら、イスラム歴でムハンマドの誕生日だったのだそうです。
1500年くらい前の人の誕生日がどうして急に祝日になるのか全く分かりません。日本の常識ではとても考えられず、よく社会が混乱しないなと不思議に思うのですが、実際に混乱します。
最近は「社会が混乱しない」のではなく「社会が混乱する程度のことはインド人にとって大した問題ではない」のではないかと感じています。
いやむしろ、インド人の辞書に「問題」という単語はないかも知れません。
日本人の私たちから見たら明らかな大問題でも、インド人にとっては問題ではないということがよくあります。
さて、祝日が突然決まって混乱した例をご紹介します。
2019年1月の例
私の住んでいるタミルナドゥ州では2019年1月の15日(火)、16日(水)、17日(木)が3連休でした。
18日(金)は平日でしたので、取引先へ訪問して書類を受け取り、それを社内で処理してからその取引先の日本本社へPDFで送付する予定でした。
11日(金)の午後3時に取引先のインド人スタッフに連絡をしたときには「もちろん問題ありません!来週金曜日にお待ちしています」という回答でした。
ところが、11日(金)の夕方になって突然14日(月)と18日(金)も祝日となり、9連休になりました。
その代わり、2月9日(土)が平日となりました。
驚いた私は取引先のインド人に電話をしましたが既に帰宅しており連絡がつきません。
民間企業は政府の定める祝日に拘束される義務はないので、私の勤めていた会社は従来通り15日から17日まで3連休でしたが、取引先は9連休になってました。
取引先には日本人は常駐しておらず、インド人しかいないので当然の決定かも知れません。
仕方がないので私は取引先の日本本社に連絡をして書類の提出を21日(月)に延期してもらいました。
月初でも容赦なく突然祝日になることがあるので、経理の人は決算スケジュールが狂います(インド人は気にしませんが日本本社が困ります)。
このように、明らかに社会が混乱していますがインド人は気にしません。
インドはメリットもデメリットも大きい
インドは本当に信じられないことが次から次へと起こって大変です。この記事を読んで
と感じた方もいるかも知れません(私は後者でした)。
実際、インド人はトラブルに慣れているので、日本人がミスをしたり遅れたりしてもインド人から責められることは滅多にありません。
インドでは色々なチャレンジをすることができますが、人によっては無理すぎて倒れるのでインド就職を決断する前に必ず下見に来ることをお勧めします。
スカイプだけで内定を決めてしまって、「来てビックリ」では時間とお金が無駄になってしまいます。
インドの生活は大変ですが、その分メリットも大きいです。
この記事ではインドの悪いところばかり列挙しましたが、インドの良いところについては下記の記事をご参照ください。
一方、駐在の方などで実際にインドでの生活を始められて、インド生活が耐えられない場合の乗り切り方については下記記事をご参照ください。