といった疑問にお答えします。
当ブログ(アジアで暮らす)を書いている私は妻と一緒に1年半ほどインドに住んでおり、インド各地を旅行し、Twitterでインド在住者の情報を見ています。
インド在住者の観点から、インドの治安状況と注意すべきことについてご案内します。
私自身はインドで酷い目に遭ったことはないのですが、身近で酷い目に遭った方の話はチラホラ聞きます。
結論から言いますと、インドでは人通りの多い場所での白昼堂々の強盗殺人などはまずありませんが、油断して大丈夫なほど安全ではありませんので警戒は必要です。
この記事では、インド在住者にもインド旅行者にも役に立つ治安の情報をご案内します。
この記事を読めば、安心してインドで生活や旅行をすることができます。
Contents
インドの治安概況
インド全体の治安状況について、注意すべきことをご紹介します。
インドで直面する問題
外務省の安全情報ホームページよると、インドの安全レベルは全土で「レベル1 十分注意してください」とされています(カシミールの一部はレベル2〜4のエリアがあります)。
インドの治安について下記のように書かれています。
都市部や観光地を中心に,窃盗,詐欺や睡眠薬を用いた強盗・強姦などの犯罪が頻発しています。日本人が被害に遭うことも多く,渡航される方は,常に防犯意識を持つことが重要です。
このように書かれると恐ろしく感じてしまうかも知れませんが、インドでは南アフリカやベネズエラで聞くような白昼堂々刺されたり強盗されるといったことはまずありません。
テロについては、パキスタンからのテロリストの侵入を警戒しており、日本に比べればテロのリスクは高く、念のため人混みは避けた方が無難です(インドを旅行している限り避けられませんが・・・)。
実際、2008年にムンバイ同時多発テロという大規模なテロがありました。
但し、国民みんなが日常的にテロの恐怖に怯えているといった状況ではないです。
では逆に、インドでは何に注意すべきかと言うと
- 街中で声をかけてくる人には着いていかない
- 夜道を歩かない
- 人通りの少ないところは歩かない
- 女性は肌の露出した服装を避ける
- 人前で大金を出さない
- 電車やバスで居眠りしない
といったことです。
私は、インド旅行の時はお札をセキュリティポーチ、財布、ポケットの3つに分けます。
細かいお金(10ルピー 程度)はポケットに入れておき、人前ではできるだけ財布は出さないようにしています。
海外で身を守るためには基本的なことですが、インドに少し慣れてきて油断した時が特に危ないので要注意です。
地域によって大きく異なる治安状況
インドの面積は日本の9倍ほどあり、地域によって治安状況は大きく異なります。
とてもざっくり言うと、北インドの方が危険で、南インドの方が治安が良いです。
上記の地図で言うと、ニューデリーやジャイプールのあるエリアが北インド、ハイデラバード・チェンナイやバンガロールがあるエリアが南インドです。
コルカタは東インドムンバイが西インドと呼ぶことが多いです。
西インドや南インドだけの観光なら、デリーからコルカタから入る必要はない。(中略)この地域には、デリーに比べると「だまされた」とか「トラブルに遭った」という被害が格段に少ない。まだインド慣れしていない初心者なら、この地域でインド慣れしてから北上するのも手かもしれない。
地球の歩き方 インド 2018-19 P57
最も雰囲気の違いを感じるのは地下鉄です。
北インドの地下鉄ではみんなシャキッと目を見開いて、日本人の私が乗っているとジロジロと見てきます。
私が見返しても全く目を逸らさないので驚きます。
一方、私が住んでいる南インドの都市チェンナイの電車では、居眠りをしている人が多く、起きている人も私をジロジロと見てくることはなく、ボーッとしていてどこを見ているのは分かりません。
南インドは南国気質でのんびりしています。
なお、南インドで平和ボケした南インド在住者が北インドへ行って油断して被害に遭ったという話も聞いたことがありますので、くれぐれも油断は大敵です。
インド在住者はデリー・グルガオンの治安に注意
日本人が多く在住するのはデリー・グルガオン、ムンバイ、バンガロール、チェンナイの4都市ですが、このうち高い警戒が必要となるのはデリー・グルガオンです。
それ以外の3都市(ムンバイ、バンガロール、チェンナイ)については物騒な話はあまり聞きません。
インド旅行者が多く訪れる観光地はいずれも要注意
一方、日本人旅行者が訪れるデリー、アグラ、バラナシ、ブッダガヤ、コルカタといった観光地は、上記の地図で言うといずれもデリーとコルカタを結んだラインにあります。
残念ながら、いずれの都市もあまり治安は良くありません。
もし安全な観光地へ行きたければ、レーやハンピといった知る人ぞ知る素晴らしい場所がインドには色々ありますが、初めてインドへ来た方が行くには少しハードルが高いです。
とはいえ、上記の有名な観光地でもこの記事でご紹介している内容を踏まえて気を引き締めていれば大丈夫です。
在住者がインドで安全に生活するための注意事項
インド在住者が安全に生活するための注意事項をご紹介します。インド旅行を検討している方は読み飛ばして頂き、次の項目へ進んでください。
家を選ぶ前に地域の治安状況を確認する
当たり前のことですが、治安の悪いエリアに住んでしまうと苦労します。
駐在員が住むような、月の家賃が10万ルピー以上もするようなマンションが治安の悪いエリアに建設されることはまずないので心配ないと思いますが、現地採用や起業家の方などは要注意です。
特に注意すべきなのはムンバイです。
というのも、チェンナイやバンガロールであれば特に治安上の心配はいらないと思いますし、デリー・グルガオンであれば、治安の良いエリアであっても3万ルピー程度で家を借りられます。
ところがムンバイは家賃が高いので、家賃を節約するために比較的治安の悪いエリアに家を借りてしまい、女性の場合はストーカーに遭ってしまったという話もあります。
これはムンバイに限りませんが、似たような地域でも少しずれると治安が良くないといったこともあるので注意が必要で、できれば家を決める前に勤め先のインド人の同僚などにエリア毎の治安状況を確認した方が良いです。
また女性の場合には一人暮らしよりもルームシェアや下宿をするとより安全です。
日没後は歩かない
北インドについては、男性であっても夜の歩行は厳禁です。特にグルガオンは新興都市で人通りが少ないため、日没後の極めて危険です。
私の知人がグルガオンで午前2時にオートリキシャへ乗ったところ、暗闇へ連れていかれ、逃げようとしたら頭に石を投げつけられて意識を失い、そのうちに財布を取られたという方がいました。
幸い、通りかかった学生に病院へ搬送され命に別状はありませんでした。
UBERやOLAを利用して移動することをオススメします。
バンガロールやチェンナイの場合には、夜まで比較的街中に人通りが多く、夜に出歩いたからと言ってそこまでの危険は感じません。
南インドでは、夜11時くらいまで1人で出歩いているインド人の女性をよく見かけます。
観光客がインドを安全に旅行するための注意事項
正直なところ、在住者よりも旅行者の方がトラブルに巻き込まれやすいため多くの注意が必要です。
ここからは、旅行者が安全にインドを旅行するための対策をご紹介します。
旅行先の治安状況について念入りに調べておく
地域毎に「典型的な詐欺事例」があります。先日、下記のツイートをしました。
インドでよく聞く詐欺
・ニューデリー駅で「その切符は無効」と言われ怪しい旅行業者に連行される
・バラナシの火葬場でインチキ無料ガイドに薪代をカツアゲされる
・ブッダガヤで学校設立の寄付をせがまれる
・コルカタでラージという人の実家に誘われる他に有名なのがあったら教えてください。
— たつや@インドwith中国妻 (@asia_kaigailife) February 17, 2020
特にニューデリーの詐欺はとても有名で地球の歩き方にも書かれています。
従って多くの旅行者が警戒心を持って訪れるのですが、それなのに警戒していても詐欺に遭ってしまいます。
彼らの手口は信じられないくらい巧妙で、他のことに頭を使え!と思います。
観光客の多いデリーとバラナシの具体的な安全対策については下記記事をご参照ください。
【これで万全】インド旅行ニューデリー駅DTTDC詐欺の傾向と対策
治安の悪い時期でないかを事前に調べておく
インドにはお祭りなどのため旅行を控えた方が良い時期があります。
代表的なものは3月頃に北インドで行われるホーリー祭です。ホーリー祭のときは色のついた粉や液体を通行人の誰に対しても投げつけることができます。
皆さんも、ホーリー祭の時期にインドを歩くと色のついた粉や液体を投げつけられて服は台無しになります。
このホーリー祭の時期は避けた方が無難です。
液体や粉を顔に投げつけられ、前が見えなくなった状態で身体を触られたり財布や携帯電話を盗られたりといった被害を聞くことがあります。
それ以外にも、インドは地域毎に、様々な時期に様々なイベントがありますので、状況を事前にチェックしておきましょう。
なおホーリーの雰囲気は、こちらの動画を見れば分かります。
声をかけて来る人は無視し、撮影し、逃走し、怒鳴る
インドの観光地では怪しい人が声をかけてきます。
- 「無料ガイドだ」といって一通りガイドをした後に土産物屋へ連れて行く
- 「あなたの持っている切符は無効だ」と言って旅行代理店へ連れて行く
- 親切そうにパシャパシャ写真をとってくれたあとでお金を請求される
- "Nice to meet you"と言って握手を求められ、握ると金を払うまで手を話してくれない
など、無数のパターンを聞いたことがあります。
無視する
基本的に向こうから声をかけて来る人は全員無視が鉄則です。
歌舞伎町のキャッチを振り払うようなノリで、楽しく会話をしながらお断りをする・・・などという甘い考えではダメです。
観光地のインド人は、歌舞伎町のスカウトの100倍くらいしつこいと考えてください。
新大久保で知人と焼肉を食べた後、新宿駅まで歩くと例の通り
「お兄さん、キャバクラの方は?」
が来ます。
前は「ウザい!」と思ってたものの、デリーで遥かにウザい人々を振り払う経験値が貯まったので
「え?歌舞伎町の勧誘ってこんなにアッサリしてた?😀」
と驚きました。
インドに感謝🇮🇳
— たつや@インドwith中国妻 (@asia_kaigailife) February 3, 2020
私がニューデリー駅を渡るときも、いつも大勢のインド人が次から次へと声をかけてきます。
と感じたらどんどん寄ってきます。
日本人であっても、堂々と歩いていれば詐欺師はそこまで寄ってきません。キョロキョロと不安そうな顔をしながら歩いていると、どんどん寄ってきます。
ニューデリーや観光地では、向こうから声をかけてくるインド人と目を合わせたり1言でも会話をしたら死ぬと思ってください。
ゾンビを倒すゲームみたいなものです。
携帯のカメラを向ける
無視してもしつこく付きまとってくる詐欺師に対しては、ケータイのカメラを向けると大抵は逃げ去ります。
彼らも、怪しいことをやっている証拠は掴まれたくないようです。
逃げる
カメラを向ければ大抵は収まりますが、それでもついてきたら全力で逃げ去りましょう。
怒鳴る
インドでトラブルに遭った時や大勢に囲まれて困ったときの鉄則は、面倒でも大声で怒鳴る、”NO!”を連発する、という対策が必須です。
最悪、英語が出てこなければ日本語でも構いません(但し、暴力はNGです)。
インドではニコニコと大人しくしていると「問題ない」と判断されてしまいますが、大声で怒鳴っていると周りの人が「なんだなんだ」と寄ってきて助けてくれる場合もあります。
詐欺師の側でも「こいつは手ごわい」と思って警戒します。ナメられないようにするには大声で怒る覚悟が必要です。
詐欺師が多数出没する地域は大抵は人混みの場所です。従って、大声で騒ぐと周りの良心的な人が助けてることもあります。
但し、助けるフリをして「ここは危ないから安全な場所へ連れて行ってあげる」と言って変なところへ連れていく人もいますので、助けてくれた人を無邪気に信用してついていかないように気をつけてください。
オートリキシャに乗る時は事前に値段交渉をする
観光地のオートリキシャは、客を乗せて降ろす時に値段をふっかけてきたり、走り出してから「素晴らしい土産物屋があるから案内する」などといって土産物屋に連れていかれることがあります。
従って、事前に値段交渉をして「これ以上は絶対に払わないぞ」と念入りに確認してから乗る必要があります。
また、行き先と違う方向へ進んでいった時には途中で飛び降りる覚悟も必要です。
インドでオートリキシャを利用するときの注意点はインド旅行 インド生活 オートリキシャを利用するメリットと注意点をご参照ください。
なお、料金の交渉が面倒臭い場合にはオートリキシャよりもUBERやOLAといった配車アプリの方がオススメです。
配車アプリは自動的に料金が決まるので、料金交渉の煩わしさはありません。
不安なときにはお金をケチらない
インドは想像を絶する格差社会です。 目が眩むような大金持ちも大勢いる一方で、国際貧困ラインのギリギリで生活している人達もいます。
※インドの貧困層についてはインドに1年住んで感じた、インド貧困層の想像を絶する生活実態の記事をご参照ください。
従って、何事も富裕層から貧困層まで階層別のサービスが分かれています。
例えば長距離の寝台列車でいうと、空調のついたファーストクラスから激安のスリーパーズクラスまであり、値段が何倍も違います。
そして、値段の差に応じて客層も異なります。
インドの富裕層、中間層と貧困層は身なりからして全く異なり、外国人観光客の私達にも一目瞭然です。
みすぼらしい身なりの貧困層がファーストクラスをうろちょろしていたらいかにも怪しいので、ファーストクラスにはファーストクラスらしい身なりの人しかいません。
高い階層の人はお金に困っていませんし、悪いことをした時に失うものも大きいので、ファーストクラスにいれば盗難などの心配はあまりありません。
一方、貧しい人達の車両に乗ればどんな人が乗っているか分かりませんし、日々の生活に困っている人も乗っている可能性があり、外国人がいると目立ちやすく狙われます。
旅行の費用を抑えるためにローカルのものを取り入れるのは良いですが、あまり節約をし過ぎると危ないです。
インドの中間層が利用しているサービスであっても日本人にとっては目玉が飛び出るほど高いわけではないので、初めてのインドの方は中級クラス以上のホテルやサービスを利用することをオススメします。
人前で大金を出さない
インドも都会と田舎で物価が違いますが、あまりにも大きな現金を街中で出すと目立ちます。
私はインド旅行の時は、500ルピー札をセキュリティポーチと財布に分けて持ち、小銭や10ルピー札をポケットに突っ込んでいます。
街の食堂やオートリキシャ、電車などに乗る時はポケットの小銭だけで十分です。
電車のチケットを買う列やバスの車内で財布を出すのはリスクを感じます。
写真撮影に無闇に応じない
タージマハールやラールキラーといったデリー近郊の観光地では、東アジア系の顔が珍しいのか、日本人であれば様々なインド人から「一緒に写真を撮ってください」と求められることがあります。
家族づれだったり子どもであれば基本的には問題ないと思いますが、若いインド人男性集団が日本人女性に写真撮影を求める場合、密着して胸などを触ってくる場合があります。
「若い男性集団なんかと一緒に写真は撮らないよ」と思うかもしれませんが、狡猾な人になると家族づれを装って後から男性集団が来ることがあります。
例えば、若い男女カップルと赤ちゃんの家族づれを装って写真撮影を求められ、応じると赤ちゃんを渡され「この子を抱いて一緒に写真を撮ってください」などと言われます。
それに応じて赤ちゃんを抱いて逃げづらい状況になったところへ周りから男性群がやってきてベタベタ触られるなどといったことも聞いたことがあります。
ちょっとでも隙を見せれば触って来ると思って十分に警戒してください。
十分注意すればインドは安全
冒頭で述べたことの繰り返しになりますが、インドでは無差別テロや白昼堂々の殺傷事件・強盗といった避けようのない事件はほぼありません。
従って、事前にトラブルの傾向を知り、十分に対策を講じて注意すればインドは安全に旅行・生活をすることができます。
とはいえ、インドは油断をしても大丈夫なほど安全ではありませんインドに慣れて油断してきた頃が最も危険です。