【インドの中間層の生活】インドの経済成長を牽引する中間層の生活

経済成長が進むインドでは中間層が急増していると言われます。私が仕事で接するインド人の殆ども中間層です。

しかし日本に住んでいると、「インドの中間層」と言われてもピンと来ないのではないでしょうか。

この記事では、インドで1年ほど働いている私が中間層の彼らと話しをして感じた、彼らの価値観や生活の様子などをご紹介します。

なお、格差の激しいインドにおいて富裕層は私にとっても雲の上の存在なので、よく知りません。

急増するインドの中間層

インドの経済は戦後の長い間極貧の状態にあり、中東諸国などへ出稼ぎに行った親族からの仕送りに頼っている人が多いという有様でした。

その後、2000年前後からIT産業が急成長し始めますが、ITや英語を使えない人達は経済成長とは程遠い状況にありました。

2014年に首相に就任したモディ首相は"Make in India"を掲げ、インドでの製造業の振興を進めています。

工場で働く人が増えれば、ITや英語を使えない人にも仕事が落ちてきますので、インド全体が豊かになっていく可能性が高まります。

完全に私の個人的な感想になりますが、インドの農村部へ行くと急速に経済成長をしている様子を実感できます。

私は個人的な旅行でインドの地方へ行ったり、インド人の知人の故郷に招かれたり、仕事で郊外(農村部)へ行く機会があります。

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私が知人の故郷に招かれた時に聞いた話ですが、2013年頃まで知人の故郷はとても貧しく、みんな上記の写真のような茅葺屋根の家に住んでいたそうです(写真の家自体は街中で撮ったもので、知人の家とは関係ありません)。

写真の家はまだ壁がしっかりしているので良い方で、酷いものになると雨風を凌ぐのも難しいような状態だそうです。

しかし2014年ごろから経済が発展し、都市部での求人が多くなったため、出稼ぎに出る人が増え、急速に豊かになったそうです。インド農村の新しい家

この写真は知人の家ではなく通りすがりの知らない人の家ですが、最近の新しい家はこのようなコンクリート造りの丈夫な家が標準的です。

車で農村部を飛ばしていると、茅葺屋根の家と新しいコンクリート造の家を多数見かけましたが、コンクリート造りの家はここ1〜2年で建てられたと思われる新しいものが多く、急速に発展している様子が感じられました。

新しいコンクリートの家が増えている様子は、インドの郊外へ行くとよく見ることができます。

インド最北端のラダックへ行ったときも、同様に新しい家が次々と建てられている様子を目にする機会が多く、実際に現地の方から「急速に所得が増えている」という話も聞きました。

在インド日本大使館の資料によると、2020年の時点でインドの中間層は約4.5億人と予測されています。

インド中間層の生活

上述の在インド日本大使館の資料では、インドの中間層は世帯の可処分所得が(年間)5,000ドル以上35,000ドル未満だそうです。

ルピーの月収に直すと3万ルピーから20万ルピー(4.5万円から30万円程度)です。大卒の新卒初任給が2万ルピー程度で、管理職レベルであれば8〜10万ルピー程度の印象です。

私が観察する範囲での、彼らの生活の様子を紹介します。

インド中間層の普段の生活

インドの貧困層は10ルピー(約15円)のチャイを飲み、50ルピー(約80円)のご飯を食べて生活しています(貧困層については別の記事で詳しくご説明していますのでご参照ください)。

しかし、私が近所のスターバックスへ行くと大勢のインド人がいます。私がスターバックスでアイスティーを注文したら、何と400ルピー(約600円)もしましたが、スターバックスにいるインド人達も次々と200~300ルピーの飲み物を注文します。

貧困層とは明らかにお金の使いっぷりが異なります。レストランも、ローカルのインド料理だけでなくイタリアンレストランや日本食レストランにも顔を出す人もいます。

週末になると、大都市のショッピングモールは中間層で溢れかえります。

インド モール

電気製品や衣服を買っていますが、デリー・グルガオンでもバンガロールでもチェンナイでも、ショッピングモールの熱気は凄いものがあります。

インドは平均年齢25歳と言われており、実際に都市でも農村でもお年寄りはあまり見かけず若い人が多い印象なので、若い活気に溢れています。

インド中間層の移動手段

インドの道路横断

四輪自動車を持っているという人はあまり聞かないです。

統計局の世界の統計2019というデータによると、インドの乗用車の保有台数は2800万台、一方で二輪車の保有台数は1億5000万台だそうです。

乗用車として車を持っていてもタクシー(UBERやOLAなど)のドライバーもいると思いますし、13億人のうち2800台ということは自動車を持っている人は極めて少ないです。

IRF, World Road Statistics 2017というデータが基になっているそうなので2017年のデータかと思いますが、この数字は私の生活での実感とも一致します。

周りのインド人で四輪の自動車を持っているという人は滅多に聞きません。いたとしても、中古で買ったと聞きます。

一方、二輪車は周囲のインド人ほぼ全員が保有しています。2019年時点では、二輪車が中間層の一般的な乗り物のようです。

貧困層は二輪車も買えないと思うのでバスや電車で移動します。

中間層の旅行など

日本にも外国人旅行者が増えてきましたが、インド人旅行者はまだそこまで大勢は見ないのではないでしょうか?

以前より増えてきたとはいえ、インド人中間層の海外旅行はまだまだ一般的ではないようです。

インド人の海外訪問経験といえば、東南アジアや中東諸国への出稼ぎ経験が多く、純粋な海外旅行はあまり聞きません。

しかし話を聞いていると海外に興味がないわけではないので、もう少し豊かになると中国人と同じくらいインド人を世界各地でよく見かけるようになるかも知れません。

10年後には2015年頃の中国人のように大勢のインド人が日本へ爆買いをしに来る可能性もあります。

「インド人は日本に興味がない」と言われますが、日本製の製品に対しては「高価だから手が出ないけど品質は抜群」というイメージがあります。

メイソウ

インドの製品はまだまだ粗悪なものが多く、私が住んでいるチェンナイでも日本風の中国ブランド「メイソウ」がショッピングモールへ出店すると噂になって大繁盛するような状況です。

インド人は東南アジアのように「何でもかんでも親日」というほどではないものの、製造業や日本製品に対しては良いイメージを持っています。

従って、今はショッピングモールへ行くとMade in Chinaの製品をよく見かけますが、もう少しインド人の所得が上がると日本製品への興味が増すかも知れません。

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親の面倒を見る中間層

インドでは生活保護や年金制度が整備されておらず、頼れるのは親族のみです。定年後の親の面倒は子どもが見ないといけません。

私の知人は実家を新築しましたが、庭付き1戸建てで100平米程度、土地代が300万ルピー(約480万円)で建物代が290万ルピーだったそうです。

つまり土地と建物が合わせて590万ルピー(約950万)ですが、このうち150万ルピー(約240万)をその知人が、そして140万ルピーを知人の弟さんが準備したそうです。

この知人はまだ20代なのですが、日本人でも貯金するのが大変なこの金額を両親のために20代で貯金するというのは凄いことだと思います。

繰り返しになりますが、インドには年金制度がないため引退後の老人は貯金を切り崩すか自給自足をするか子どもに養ってもらうしかありません。

若い中間層は親世代に比べれば遥かに収入がありますので、親孝行をしようと必死に働きます。同じような状況は90年代以降生まれのベトナム人からも聞いたことがあります。

その知人は親に苦労をさせたくないという理由で10代の頃から必死に節約をして貯金をしたそうです。

まとめ

統計上の数字はともかく、雰囲気としてはインドの経済成長は中国よりもマッタリとしています。

しかし、確実に中間層の人口は増えており、多くのインド人が長年の貧困から脱却しつつあります。

これからも変化するインド中間層の様子を観察していきます。

低所得層の生活については インドに1年住んで感じたインド貧困層の生活実態をご参照ください。

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