北京

中国人と関わると

どうして中国人はこういう発想をするのだろう?

ということに直面することがあると思います。

私は学生の頃、中国人の学生団体とイベントを企画したことがありました。

日本人は前々から何度も打ち合わせをしてキッチリと計画を立てて準備を進めていたのですが、中国人学生は直前まで全く準備に参加しません。

イベント当日になると、やはり準備不足により段取りが決まっていないことが色々とありました。

ところが中国人は、リーダーの学生が的確に判断をし、臨機応変に次々と問題を解決していきます。

一方の日本人は、不測の事態が起こると話し合いに時間がかかってしまい、モタモタしてしまいました。

そこで、日本人と中国人の間では以下のような違いがあるように感じました。

日本人 中国人
段取り 事前準備を念入りに行うが不測の事態に弱い 事前準備よりも、その場の状況に応じて臨機応変に対応
意思決定 みんなで相談して決める リーダーの決定に従う

例えば、中国人は日本の稟議決裁に何週間もかかることを理解できませんので、中国の取引先が

「明日、社長のハンコください」

などと言ってくる可能性があります。

日本人と中国人の考え方違いを知っておくと、中国人と関わるときに余計なストレスを抱えずに済むのではないかと思います。

また、日本と中国は政治面や歴史面で政府同士が衝突することがあります。

もちろん、中国人と仕事をしていて政治問題や歴史問題の話をすることはないと思います。

しかし中国人の対日感情や歴史認識を知っておくことで、中国人の地雷を踏むリスクを避けることができたり、スムーズにコミュニケーションをすることができるかも知れません。

私は、学生の頃から10年以上様々な中国人と関わり、中国出身の妻と結婚したため、中国人と日本人の価値観が根本からかなり異なるということを痛感しています。

なぜ中国人の価値観が日本人と著しく異なるということについては 中国人が共産党の一党独裁や人権侵害を肯定する3つの理由という記事にまとめましたので、ぜひご覧ください。

この記事では、上記の記事で書いたことを深掘りするために役立つオススメ書籍10選をご紹介します

いずれも、表面的に最新の情勢を追いかける本ではなく、中国人の価値観を深く理解し、時代が変化しても戸惑うことのない知識が得られる本です。

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異文化理解力

最初にご紹介するのは、エリン・メイヤーの「異文化理解力」という本です。

中国だけをターゲットにした本ではなく、欧米、日本、中国、インド、中東からアフリカまで様々な国が登場します。

統計データに基づいて8つの指標で各国を評価し、各国のコミュニケーションの違いを浮き彫りにします。

8つの指標とは、例えば以下のようなものです。

ハイコンテクストか?ローコンテクストか?

言い換えると、誤解があったときに「きちんと説明しなかった方が悪い」と考えるのがローコンテクスト、「空気を読まなかった方が悪い」と考えるのがハイコンテクストです。

世界で最もローコンテクストなのがアメリカ、最もハイコンテクストなのが日本とされています。

直接的なネガティブフィードバックか?間接的なネガティブフィードバックか?

部下や生徒に悪い評価を伝える時、「君はここがダメだ!」と直球に伝えるのが「直接的なネガティブフィードバック」です。

オランダやフランスなどが最も直球なのだそうです。

逆にアメリカ人は間接的なネガティブフィードバックを好むようで、たとえばアメリカ人の上司が部下を説教したい場合には

アメリカ人
あなたは〇〇がよくできている。△△も卓越している。そのうえ、□□ができるようになれば、さらに素晴らしいね!

などと、徹底的に褒めたうえで「□□ができれば更に良い」という言い方をするそうですが、アメリカ人上司の本音は「あなたは□□がダメだ」と伝えたいだけなんだそうです。

著者によると、フランス人の先生とアメリカ人の生徒、といった組み合わせは最悪で、アメリカ人はフランス人の直球なダメ出しにかなりダメージを受けるそうです。

日本人と中国人の違いは?

さて、この本に書かれている8つの指標で、中国と日本はどのように書かれているのでしょうか?

日本と中国は隣国ということもあり多くの指標で似たようなポジションにあったのですが、中には全く正反対の指標もありました

各8つの指標全てに日本と中国は名前が載っており、本の最後には丁寧に日本と中国の違いを(フランスとドイツの違いと比較して)並べて説明しています。

この本を読むことで、中国人の思考様式を他の国とも比較しながら学ぶことができます。

中国に限らず、外国人と関わる機会のある人には必携の1冊と言えます(私はいまインドで働いていますが、インドでも役に立っています)。

ワイルドスワン

ユン・チアンという、中国からイギリスへ移住した女性が書いた体験記です。

祖母、母、著者の3代に渡る壮絶な体験をまとめた本で、清末から1978年の改革開放まで約100年に渡る中国の激動ぶりがよく分かります。

中国の人達は「いつどこから誰が攻めてきて、いつ殺されるか分からない。いつ友人が自分のことを密告して、死刑になるか分からない」という、いま正に北朝鮮やシリア、アフガニスタンの人達が置かれているような厳しい状況を100年以上も経験してきました。

リアルな状況を伝えるため、残酷な経験も生々しい表現で容赦なく書かれており、トラウマになりかねない内容ではあります。

しかし、著者は父母が共産党の高級幹部だったため、自分の身の回りで発生しているミクロな出来事と中国全体で起こっているマクロな出来事をリンクさせて叙述しており、ここまで当時の中国の雰囲気を感じ取れる本は中々ないのではないかと思います。

1991年に出版されると、すぐ全世界でベストセラーとなりました。

著者のユン・チアンは他に毛沢東と西太后に関する本も書いています。

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「反日」中国の文明史

東京大学大学院法学政治学研究科でアジア政治外交史を専門としている平野聡教授による、中国人の歴史認識や愛国主義に関する総合的な解説本です。

新書本なので気軽に読むことができます。もし1冊でサクっと中国人の思考様式を理解したい場合には、この本がオススメです。

新書本ですが非常に濃い内容で、この一冊だけで中国人と歴史問題や政治問題を話したときに感じる違和感の正体がよく分かります。

タイトルに「反日」と書かれていますが、決して感情的な対立を煽るような内容ではありません。

以下に挙げるような、以前から私がモヤモヤと抱いていた素朴な疑問に対して、明快な説明がされていました。

  • 最初にアヘン戦争で中国に残酷なことをしたのはイギリスなのに、どうして中国は日本ばかり責めるのか?
  • どうしてチベット人やウイグル人は命がけで中国政府と戦う人達が大勢いるのか?
  • どうして中国政府は国際的な非難を受けてもチベットやウイグルを徹底的に弾圧するのか?
  • どうして中国政府は台湾の独立を絶対に認めないのか?
  • 中国は沖縄を日本から奪おうとしているのか?
  • どうして中国は経済発展しても民主化しないのか?

いまの日中関係を理解するのに必要な古代からの歴史、そして周辺地域(日本、台湾、韓国、琉球、ロシア、内陸騎馬民族など)と中国との関係について重要なポイントを押さえて書かれています。

チベットやウイグルの問題は日本とは無関係に思っていましたが、この本を読むと日本からの影響が間接的に及んでいることを実感しました。

決して一方的に中国を非難したり日本を擁護したりする内容ではなく、それぞれの視点に立って「どのような経緯でこうなってしまったか?」を独自の解釈で説明しています。

中国の歴史認識はどう作られたのか

次におススメなのは、中国育ちの米国政治学者ワンジョンの「中国の歴史認識はどう作られたのか?」という本です。

なぜ中国人はアメリカや日本に対して強気なのか?なぜ中国人の若者には愛国主義者が多いのか?ということが分かりますが、それだけではありません。

例えば、日本人はオリンピック選手が金メダルでも銅メダルでも、あるいはメダルを取れなくても一生懸命頑張ったことに対して敬意を表します。

それに対し中国では、金メダル以外の選手には存在価値がありません。

命を懸けてでも1位を目指さなければならない、落ちこぼれれば叩かれる(落后就要挨打)という意識が強く根づいています。

どうして中国はここまで激しい競争社会になっているのか?

どうして中国人は1位を目指したがるのか?

といった中国人の日常的な価値観についても、歴史認識を紐解いていくことで見えてくるものがあります。

この本は、中国人の思考様式の背景を理解する手がかりとしてとてもオススメです。

現代中国の父 鄧小平

エズラ・フォーゲルというアメリカ人の社会学者が著した本です。

エズラ・フォーゲルは1979年に「Japan as No.1」という本で日本のことを絶賛したことで、日本では有名です。

彼は今世紀に入って中国の研究を進め、中でも鄧小平の研究を行いました。

鄧小平は1978年から中国のリーダーとなり、経済は市場経済だが政治体制は一党独裁という現在の中国の政治体制を固め、彼のお陰で中国は急速な経済発展を果たしました。

鄧小平の功罪が公平に書かれている印象でしたが、率直に言って中国共産党に対する印象がかなり変わりました。

激しい人権弾圧と言論統制は決して認められるものではありませんが、共産党が保身のためだけに独裁を敷いているのではなく、国家百年の計を真剣に考えて現在の一党独裁体制を採用しているということは強く実感しました。

鄧小平の功績の一つに集団指導体制の導入があります。

毛沢東の時代は、毛沢東への個人崇拝が全国で進められていたため、毛沢東が暴走をすると誰も止められず数千万人の人が亡くなりました。

このような事態を防ぐため、特定の人に権力が集中しないよう集団指導体制を導入しました。

国の状況に応じて共産党が変化していく様子がよくわかります。

もちろん、それが正しい判断かどうかはまた別ですし、私が共産党を支持するわけではありません。

鄧小平の後の江沢民、胡錦濤は基本的に鄧小平の路線を受け継いでいるので、この本を読めば北京オリンピックや上海万博へ至るまでの中国の基本スタンスが理解できます。

一方、2012年に習近平が国家主席へ就任してから、従来の鄧小平路線から大きく転換したと言われています。

十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争

共産党内の熾烈な権力闘争を経て習近平が中国のトップへ勝ち上がっていくプロセスを詳しく取材した本です。

峯村健司という朝日新聞の記者が共産党の中枢部へ深く入り込み取材した結果をまとめた貴重な記録です。

ここから習近平について読み取れることは、鄧小平が導入した集団指導体制の否定です。

習近平は、毛沢東の暴走を反省して鄧小平が始めた集団指導体制を否定し、自分への権力集中を進めています。

「十三億分の一の男」と「鄧小平」をセットで読むと、習近平が就任してからの中国が鄧小平時代と比べてどのように変化したのかをよく理解できます。

China 2049

政治学者でありアメリカの歴代政権で対中国関係の参謀を務めてきたマイケル・ピルズベリーが著したベストセラーです。

マイケル・ピルズベリーは中国が発展すれば民主化し、脅威がなくなると考えてきましたが、実際の中国は経済発展を遂げても一向に民主化しません。

その結果、中国は欧米や日本からの技術・経済支援を取りつけ、実際には中国建国から100年後の2049年にはアメリカを追い越して世界一の覇権国家になることを目指していることに気づいたそうです。

以前(鄧小平時代)の中国は韜光養晦(とうこうようかい)と言って、黙ってコソコソと力をつけていましたが、習近平になってから「中国夢」というスローガンを掲げ、覇権主義を隠さなくなりました。

そこで、この本では中国の覇権化について警鐘を鳴らしています。

一言で表すと「私は中国に騙された!」ということを訴える本です。

しかし個人的には、たとえ中国が平和的に民主化した場合であってもアメリカの覇権を脅かすことには変わらないのではないか?と疑問に思うところはあります。

大地

パールバックの「大地」という、中国を理解するためにオススメの小説です。

パールバックは1892年にアメリカで生まれ、中国で育ちました。

この小説は、19世紀末から20世紀前半にかけて彼女が経験した激動の中国の雰囲気を感じとることができる貴重な本です。

1938年には、この小説でノーベル文学賞を受賞しました。

この小説は、貧しい農民だった王龍が運と努力により財を築き上げ、富豪にのしあがるところから話が始まります。

その後、王龍の息子たちは地主、商人、軍人となり、孫の世代にはアメリカ留学なども果たします。

この小説には農民、商人、召使い、軍人、学生など、本当に様々な登場人物が登場し、それぞれの立場から見た激動時代の中国を感じとることができます。

中国のことを深く知りたいという方にはぜひ読んで頂きたいです。

岩波新書 シリーズ 中国近現代史

全6冊からなる岩波新書のシリーズで、清末から現代までの中国の近現代史の歴史を概観することができます。

ここまでご紹介してきた本は、特定のスポットを深く掘り下げる内容でしたので、中国近現代史の流れ全体を知りたいという方にはオススメです。

中国の社会

皇帝や王朝の話ではなく、16世紀から20世紀に至る中国社会の変化を記述した本です。

中国人の家族や人間関係に関する意識などを深く知りたいという方にはオススメの本です。

 

以上、中国と関心のある人、中国人との関わる機会のある方にオススメの書籍10選でした。

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