経理未経験者がアジアで会計事務所へ転職すると直面する3つの問題

海外就職の職種の中でも会計事務所は営業や一般事務などと比べると比較的給料が高いので、チャレンジしたい方も多いのではないでしょうか?

アジア諸国の場合、会計関係の日本人が不足しているため、未経験の職種でもチャレンジすることが可能です。

転職エージェントもこの点を売りにしていて、「アジアでは30代前半でも未経験職種へキャリアチェンジが可能です」といったことを言うエージェントは少なくありません。

アジア就職でキャリアチェンジが可能なのは間違いではありませんし、経理や会計分野での職務経験がない未経験者でもタイミングが合えば会計事務所などから内定は出ます。

しかし会計や税務関係の職種の場合はできれば日本で少なくとも1年くらい実務経験を積んでから海外へ来ることをおススメします。

未経験での海外会計事務所就職が大変な理由
  • 実務を習得する機会がない
  • 経理よりも営業要員の可能性が高い
  • 日本の経理との比較がしづらい

私は日本で経営企画や経理を数年経験してからインドの会計事務所で働いています。

もし未経験だったら大変だろうと思っていたのですが、経理未経験でアジア各国の会計事務所で働いている人達の話を聞くとやはり大変なようです。

そこでこの記事では、未経験の方がアジアで会計事務所・事業会社の財務経理へ就職した時に苦労する可能性が高いポイントと対策をご紹介します。

この記事を読めば、未経験の方が海外経理でどのようにキャリア戦略を考えれば良いかが分かります。

経理未経験者がアジアで会計事務所へ転職すると苦労する3つの理由

経理未経験の方がアジアの会計事務所(または事業会社の財務経理担当)へ転職した時に苦労することになる理由を3つご説明します。

実務を習得する機会がない

アジア諸国の会計事務所や一般事業会社の財務経理職種では日本人が実務レベルの仕事をすることはほぼありません。なぜなら、仕訳入力などの実務はローカルスタッフでもできる仕事だからです。

多くのアジアの国では、日本人の給料はローカルスタッフの何倍もすることが多く、アジアの中で最も給与が高いシンガポールや香港ですら、日系企業ではまだ日本人の給与の方が高いケースが多いです。

高い給与を日本人に支払ってローカルスタッフでもできるような仕事を任せたのでは余計なコストがかかるだけなので、日本人は日本人にしかできない仕事をします。

日本人にしかできない仕事とは、会計事務所の場合は日系顧客とのブリッジ役、事業会社の経理の場合は日本本社と現地ローカルスタッフとのブリッジ役です。

日系のお客さんの中には英語が全くできない人もいますし、ローカルスタッフは日本のお客さんの期待値を理解していないので、間に入ってコミュニケーションをサポートしたり、ローカルスタッフの仕事の進み具合を確認したりします。

日本本社の経理部門から

TDS receivableって赤字決算の場合はどう処理するんですか?

といった質問がバンバン飛んできます。

もちろん、日本人は現地の会計税務の専門家ではないため、ローカルのスタッフに質問して確認するのですが、経理経験がないとローカルスタッフの説明を理解するのにかなり苦労します。

日本での経理経験があると、現地スタッフの話を暫20-30分聞いているうちに

なるほど。インドでは日本と違って法人でも源泉所得税があって、控除された源泉税が期末まで資産計上されて、法人税支払時に調整されるのか。そうすると、赤字の場合は返金か費用計上になるはずだ。

と、ピンと来ます。

「借方・貸方」「売上・費用・資産・負債・純資産」というのが肌感覚で分からない状態だと、ローカルスタッフの言っていることを理解するのに非常に時間がかかってしまいます。

日商簿記検定2級などを持っていても、英文経理と実務の理解を同時に進めなければならず、非常に負荷は高くなります。

海外ではゼロから手取り足取り仕事を教えてくれない場合が多いので(中には教えてくれる親切な事務所もありますが)、かなり努力してキャッチアップしなければなりません。

インド人スタッフの言っていることを理解しないままお客さんに伝えると伝書鳩のようになってしまいスキルがアップしません。

私は新卒の頃に伝書鳩のような仕事の仕方をしていたことがありました。

私は新卒の頃インターネットのことを何も知らないままWeb関係の企業に入社し、お客さんから

顧客
Webサイトが表示されないんだけど

というお問い合わせがあり、エンジニアに質問したところ

エンジニア
TCPのポート番号が8081番だからって伝えて

と言われたので、それをそのままお客さんに伝えると「ありがとうございました」と感謝されました。

問題は解決しましたが、自分がいる必要性が感じられませんでした。

そのあと職種をチェンジしたのでTCPが何なのか、ポートが何なのかは未だによく分からないのですが、全くの経理未経験で海外へ来てしまうと、これに近い状況になってしまうリスクはあります。

そのような状況を避けるためには、石にかじりついてでも理解する覚悟が必要です。

但し、逆に言うとそれだけの覚悟を持って努力すると、日本で経理をやる場合よりも遥かに短期間で成長できる可能性があり、ハイリスクハイリターンと言えます。

経理よりも営業要員の可能性が高い

もし1人あたりの担当クライアントが数百件もある会計事務所だと、とても1つ1つの企業の財務諸表までは確認できません。

日本人は日系企業に対し新規営業をし、案件が受注できたらローカルスタッフへ引き継いで、それ以降はローカルスタッフと日系のクライアントが英語で直接やり取りする、という会計事務所もあります。

その場合、受注後にローカルスタッフとクライアントがどういったやり取りをしているのかは全く分かりません。

そして、ローカルスタッフがトラブルを起こした時に突然お客さんから電話がかかってきて謝罪を求められるものの、何が発生しているのか理解できないままとりあえず謝る・・・といったこともあります。

「経理のスキルを活かして営業をしたい」という方にはピッタリの職場ですが、「会計・税務の専門性を磨きたい」という感覚でいくと、入社後にギャップを感じるはずです。

日本の経理との比較がしづらい

経理未経験のまま海外へ来て経理を担当すると、日本の会計基準や税法を知らないまま現地の会計基準や税務を理解することになってしまいます。

もし日本の会計・税務について一通りのことを知っていると、例えば

日本では決算の時に仮払消費税と仮受消費税を相殺して未払消費税に振替をしますが、インドでは付加価値税の申告を毎月するので、期末でも未収と未払が両建てになるんです。

といった具合に、日本の経理実務と比較した上での説明ができ、本社の人とのコミュニケーションがスムーズです。

会計や税務の制度は国によって異なるものの、大元の基本はそこまで変わりません。

そこで、日本で基礎を身につけ、日本と比較しながら海外の制度を理解した方がスムーズであるのは事実です。

初めての海外生活、初めての経理を英語で学び、しかも日本の制度ではなくローカルの会計・税務制度となると、かなりハードルが高く大変かも知れません。

未経験から海外経理職を目指す方法

ここからは、未経験から海外で会計関係の仕事を目指す方法をご説明します。

基礎から経験を積める会計事務所に入る

ベトナムやインドでは未経験でも会計事務所や経理関係の仕事で内定が出ますが、経理の専門性を身につけるというより新規営業での成果を求められる場合が少なくありません。

一方で、着実に力がつくよう未経験から丁寧に育ててくれる会計事務所も類い稀ながらあります(インドでは聞いたことがありませんが、他の国で聞いたことがあります)。

入社後にギャップで苦しまないようにするため、事前に面接で業務内容を詳しく確認した方が良いです。

では、何を確認すれば良いでしょうか?それは担当クライアント数と売上ノルマの有無です。

面接で確認すべき事項
  • 担当クライアント数
  • 売上ノルマの有無

担当クライアント数が300件、売上ノルマあり、などという会社の場合は完全に営業職と考えて間違いありません。

1人で300社もの財務諸表を見られるはずがないので、こういった事務所は上述した通り日本人は新規営業に専念する可能性が高いです。

一方、経理職種として採用する会計事務所の場合には担当クライアントがせいぜい20件程度です。

会社の売上規模にもよりますが、財務諸表などには全て目を通すことができるので、何か問題が発生していれば事前にキャッチすることができます。

良い会社や会計事務所の場合は、最初の数ヶ月間は仕訳入力を担当させてもらうことができ、慣れてきたところでローカルスタッフのマネジメント業務を担当することができます。

それであれば未経験でも安心して就職・転職して大丈夫です。

日本で海外子会社のある会社の経理へ就職する

海外に住める保証はありませんが、日本で海外子会社のある会社での経理職として就職すれば海外との関わりを持ちながら経理を学ぶことができます。

経理職で駐在できる可能性がある会社は少ないですが、出張ベースで海外子会社管理などを行える可能性があります。

しばらく経理を経験し、それでもどうしても海外へ住みたかったら改めて現地採用として経理へ就職した方が良いかも知れません。

他職種で海外就職し、現地で経理を勉強する

とてもハードルが高い話ではありますが、良い会計事務所が見つからず、それでもどうしても海外に住みたければ、営業職などで現地採用として働きながら日商簿記や米国公認会計士などの資格を学習するのも良いかも知れません。

しかし慣れない仕事で英語を使って新しい仕事をしながら資格の勉強をするというのは、いくら余暇時間が多い海外とはいえ大変なことですので、それ相応の覚悟が必要です。

なお米国公認会計士の詳細についてはアジア海外就職とUSCPA(米国公認会計士)という記事で詳細にご説明していますのでご参照ください。

但しこの場合には、どうして経理を希望するのかはじっくり考えた方が良いかも知れません。

もし「世界のどこへ行っても通用するスキルをつける」ということであれば、プログラミングやライティングを身につけてクラウドソーシングで副業として仕事を受けた方が良いかも知れません。

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まとめ

経理未経験のまま海外で会計事務所へ転職し「聞いていた話と違う」と言ってすぐに帰ってしまう人も少なくありません。

未経験で経理へ転職するにしても、海外へ転職するにしても、きちんと戦略を立てれば不可能なことではありません。

この記事を読んだ皆さんが理想的なキャリアを手に入れられるよう心より応援しています。

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