
中国に対して危険なイメージを持っている日本人は多いと思います。
特に、日本のメディアを見ていると非常に危険なイメージを持つはずです。
しかし、実際に中国へ旅行・出張をしたり、中国で生活している日本人の感想を聞くと、日本で言われているほど危険とは感じていない人も多いです。
中国で生活している日本人駐在員の中には、日本への帰任命令が出たとき、日本に帰りたくないからと会社を退職して中国で転職してしまう日本人すら後を絶ちません。
実際ところ、中国の安全性はどうなのでしょうか?
本記事では、中国広州で3年弱生活した私の視点から、日本人が中国へ渡航することの危険性と注意点についてご紹介します。
中国政府にさえ逆らわなければ非常に安全
中国は政府の力が極めて強いです。
従って、政府にさえ逆らわなければ非常に安全ですが、政府を敵に回したら容赦ないです。
政府が嫌がることをしないよう注意が必要です。
治安は非常に良い
最近は、日本人学校を狙った事件や、街中での無差別殺人事件が報道されているため、中国の治安を心配する声が大きいですが、中国は他の国と比べて治安は非常に良好です。
中国は町中いたるところに監視カメラがあります。地下鉄に乗っていても、各車両に2~3台の監視カメラがあります。
街中でも農村部でも、全く隙がないほど社会の隅々まで監視カメラが網羅されており、たとえ整形をしてもAIで見抜かれるそうです。
また、長距離電車やホテル、飛行機など、あらゆる場面で身分証の提示が必要であり、チャットアプリやデリバリーサービス、タクシーサービスなど、どんなサービスを利用するにも身分証と紐づけたアカウントが必要になります。
つまり中国は、いつどこで誰が何をしたか、全ての情報が徹底的に管理されている清々しいほどの監視社会です。
スリや置き引き、痴漢などの犯罪は2010年代と比べて少なくなり、中国在住の女性に聞くと異口同音に「夜道を歩くなら日本より中国の方が安心」と言います。
無差別殺傷事件というのは、絶対に逮捕されて死刑になることを覚悟した犯罪なので、監視カメラでも防ぎようがないのですが、これはさすがに中国でも遭遇する確率は多くはないと思います。
日本でいうと、秋葉原の無差別殺人のようなものです。
中国は面積が日本の25倍以上、人口が10倍以上いますから、遭遇確率としては毎日それに怯えて暮らすほどではないと思います。
もちろん、その確率をどれほど敏感に捉えるかは人それぞれだと思いますが、日本で暮らして交通事故に遭う確率より高いとは言えないと思います。
日本人は狙われるか
日本人を憎んでいる中国人がいることは事実のようです。
但し、一般の日本人が中国を歩いていて日本人だと認識されることは多くないと思います。
少なくとも、私は(顔が中国人っぽいらしいのですが)日本人だと思われたと感じたことは一度もないです。
日本で中国人が固まって中国語を話してるとすぐ「中国人だ」と分かりますが、中国にはいろいろな少数民族もいて、地域によっては日本人と同じ顔立ちの人達もいます。
それに、言語も中国語と全く異なる少数民族の人達もいるので、中国国内で中国語以外の言葉を話していたからと言って直ちに「外国人だ」とバレるわけではないです。
日本人学校の場合、日本人だと明らかに分かりますし、スクールバスは時間も指定されていますから狙われやすいと思います。
私も、もし子供が中国の日本人学校に通っていたら、心配なので日本に帰国させたいと考えるはずです。
ただ、大人の日本人がそこまで狙われる可能性があるか?というと、どうでしょうか。
日本人に危害を加えたいと考える犯罪者の立場になった時に、いざ日本人を狙い撃ちしたいと思っても探すのが意外と大変で、日本人学校くらいしか確実に狙えるところが思いつかないので、日本人学校が狙われたのではないかと私は推測しています。
日本の居酒屋にも日系企業にも中国人が大勢いますから、誰が日本人か見分けがつきづらいはずです。
見た目が似てますから、アメリカのアジア人差別で聞くような、路上でいきなり日本人が殴られるなどという話を聞くことはないです。
また、街中監視カメラだらけですから、誰が殴ったかすぐわかります。
日本に対する印象は複雑
これは私の持論ですが、中国人の日本に対する印象は複雑です。
日本には中国の若者の文化(タレント、アニメなど)は殆ど入ってきてないと思いますが、中国では日本の文化はかなり一般的に浸透しています。
ちょうど、日本に韓国文化がたくさん入ってきていて、多くの人(特に若い人)が韓国文化を身近に感じるのと同じです。
なので、多くの日本人は今の中国を遠い国と感じていると思いますが、中国人は日本のことをもう少し身近に感じていると思います。
もちろん、過去の歴史のことを持ち出して日本のことを憎んでいる人もいますが、全体的な印象としてはそこまで悪い印象は持っておらず好意的です。
例えば、中国は不景気なので海外留学が盛んですが、欧米は遠いしお金もかかるので、日本留学が人気です。
日本は近いですし、漢字を使う国なので英語を学ぶより中国人には身近なのです。
しかし逆の立場で、日本人が「欧米留学はお金もかかるし英語を学ぶのは大変だけど、中国なら近いし漢字も使うから、中国へ留学して中国語を学ぼう」とはならないですよね?
欧米やカナダ・オーストラリアへ留学する日本人と、中国へ留学する日本人は明らかにレイヤーが違うと思います。
ここからも、中国人の反日感情より、日本人の中国に対する嫌悪感の方が遥かに強いと私は感じます。
日本で暮らしていると本格的な現代中国文化は東京池袋の中華街などへ行かないと感じられませんが、中国で暮らしているともう少し日本のものに触れる機会が多かったです。
ユニクロ・無印・サイゼリア・イオン・セブンイレブンなどはどこにでもありますし、サントリーのウーロン茶やプリッツなども買えます。
私は中国で3年弱暮らしていて、タクシーやレストラン、美容院やマッサージ店などで出身を聞かれれば迷わず「日本から来ました」と答えていましたが、嫌な顔をされたのは2回だけです。
その嫌な顔をした2人も、話しているうちに仲良くなりました。
日本人の知人の中には「日本語を話していたらタクシーを降ろされた」という話も聞くので反日感情がゼロではないですが、そこまで深刻ではない印象です。
ただ、南京事件の日である12月13日、盧溝橋事件の7月7日、満州事変の9月18日など、センシティブになる日もあるので注意が必要です。
中国政府の外国人対応
中国政府は外国人を片っ端から捕まえたいと思っているわけではなく、活用したいとも思っています。
中国政府は外国人を活用したいと思っている
北朝鮮は金正恩政権の保身だけを目的とした国に見えますが、中国は共産党の保身だけを考えているわけでもなく、もう少し複雑です。
もちろん中国共産党の政権維持も必須だと思いますが、それだけでもなく、富国強兵を進めてアメリカを追い越したいという野望も持っています。
そのためには経済力を強くする必要がありますから、手当たり次第に外国人を締めつければよいとも考えていません。
- 外国人観光客にお金を落としてもらいたい
- 優秀な外国人に中国で活躍してもらいたい
- 外国企業に中国へ投資して中国経済を盛り立てて欲しい
という思惑もあります。
その証拠に、多くの国に中国へのビザなし渡航を許可していますし、外国人労働者への税制優遇策なども打ち出しています。
なので、外国人を締め付けすぎて外国人が逃げ出してしまい、経済が崩壊する事態も恐れています。
一方で、外国人を野放しにして国家機密を盗まれたり、中国共産党政権の転覆やチベット・ウイグルの独立運動を展開されても困るので、外国人に対する警戒心もあります。
中国政府は、外国人を活用する一方、外国人に暴れられないよう、バランスを取ることに苦慮している様子が伺えます。
中国政府が外国人を警戒する理由
中国政府は外国人を活用したいと思っている反面、外国人に対して極めて強い警戒心を抱いています。
ここは日本人には理解しづらいポイントなので、中国政府が外国人を警戒する理由を少し掘り下げて説明します。
百年国恥のトラウマ
中国は19世紀半ばにアヘン戦争でイギリスに負けてから戦後の共産党政権発足までの約100年間、欧米や日本と様々な戦争をし、領土を割譲されたり租界を作らされ、経済的にもダメージを負わされました。
大勢の一般中国人も命を落としました。
欧米列強や日本が中国に軍事介入や植民地化的な進出を行った際、しばしば「文明化」「近代化」「開化」を掲げる建前を使いました。
つまり、「遅れている中国の文明化を助ける」という建前を掲げて中国へ介入し、実際には中国の半植民地化や経済的搾取をしていた、と中国では理解されています。
人権尊重を理由に西側諸国が中国のウイグル、チベット、香港や台湾問題を批判している今の状況は、中国から見ると既視感があります。
つまり中国の立場から見ると

どうせ、人権尊重なんて建前なんでしょ?西側諸国は100年前と同じように、人権尊重を口実にして、本音では中国を侵略して搾取したいと思ってるんでしょ?もう欧米や日本の欺瞞には絶対に騙されないぞ!
と考えています。
100年前の領土分割の件があるため、中国は欧米や日本に不信感を抱いており、人権問題を指摘すればするほど中国側の態度は硬化します。
欧米や日本は中国へ不信感を抱いていますが、中国の側も同じように不信感を抱いているのです。
体制転換への不安
中国政府は、西側諸国が経済・文化・思想・外交など「平和的」な手段を通じて、内部から徐々に民主化させ、最終的に共産党体制を崩壊させることを心配しています。
これを中国語で「和平演変」と言います。
実際、アメリカは世界各国で民主化を目指して体制転換をしていますから、中国は警戒します。
西側からの影響によってソ連が解体され民主化しましたが、中国は学生の民主化運動を武力で鎮圧しました。
民主化後の東側諸国が経済停滞に苦しんだのに対し、中国は飛躍的な経済成長を遂げました。
中国にとって民主化は、中国が西側諸国を追い越さないようにさせるための罠だと中国では認識されています。
「西側の誘いに応じたら、ソ連解体後のロシアみたいに苦しめられることになる」と不安を抱いています。
国家機密の漏洩
中国は外国人による産業スパイ、軍事技術窃取、あるいは国内状況の調査を極めて警戒しています。
中国の国家安全法(2015年)や反スパイ法(2023年改正)では「外国組織や個人による国家安全への脅威」を広く定義し、摘発対象を拡大しました。
中国政府のレッドライン
中国政府は外国人に対する警戒心もある反面、外国人や外国企業を活用したいと思っていますから、誰でも彼でも外国人を取り締まるつもりでもないです。
外国人や外国企業が一気に撤退し、中国経済が崩壊して暴動が起こり、政権転覆が起こることへの警戒心もあると思います。
このように、外国人の扱い方については中国政府自身がバランスの取り方に悩んでいる印象を受けるので、中国政府が何を警戒していて、どこがレッドラインなのかを理解することが大事です。
レッドラインの明確な基準はない
中国は日本や欧米と異なり、禁止事項が明文化されていません。
中国でルールを定めると、日本人には思いもつかないような荒唐無稽な形で、法の網の目をかいくぐってやりたい放題する猛者たちが大勢現れます。
ある程度は法令の基準をグレーにしておかなければ収集がつかないという不安が政府の側にあるようです。
日本の価値観とは大きく異なり、多くの日本人にとっては理解に苦しむポイントだと思いますが、中国では個人の自由よりも社会秩序の安定が優先されています。
中国政府が嫌がること
結論を書きますと、中国政府が最も嫌がるのは
- 社会の動乱
- 国家機密漏洩
の2つです。
逆に、これに抵触しなければ大きな問題は起こらないと私は感じます。
中国に住む前の私は、中国は政府批判が一切許されず、人々は日々怯えながら暮らしている雰囲気なのかと思っていましたが、実際に行ってみると少し温度差がありました。
例えば、中国はどこでも路上喫煙が自由なので、私は中国人の友人にこんな質問をしたことがあります。

今の中国政府は、春節(旧正月)の爆竹を禁止したり、全ての駅にホームドアを設置したりと、人命や安全はコスト度外視で重視する印象があるけど、どうして路上喫煙は禁止しないんですか?
と質問したら
と言われてビックリしました。
彼は特に反体制派というわけでもなく、普通の中国人なのですが、この程度の政府批判は普通です。
他の友人も、「ゼロコロナ政策中のPCR検査でお金を使いすぎて財政が赤字がヤバいから、最近は税金の取り立てが厳しくて困る」とか「本当に景気が悪くてお先真っ暗」のような話は普通にします。
それも、周りに聞こえないようにヒソヒソ言う感じでもなく、地下鉄の車内など公共の場で大声で普通に話しています。
つまり、たとえ街中に監視カメラや盗聴器が仕掛けられていたとしても、少しでも中国政府を批判した瞬間にすぐ警察が飛んできて捕まるような温度感ではなさそうです。
批判を拡散するのは危険
私の印象では、一切の批判が許されていないのではなく、政府批判が大きなウェーブとなって暴動や動乱になることが警戒されています。
逆に言うと、社会不安に繋がらないような、影響力のない個人がちょっと政府批判をする程度のことではいちいち目くじらを立てられないです(それを取り締まるほど中国政府も暇ではなさそうです)。
政府批判を中国国内のSNSで拡散するような動きをするのは危ない可能性があります。
拡散しなければ特に大きな問題にはならないと思いますが、中国国内にいる日本人が、わざわざリスクを冒して中国政府を批判する必要はないと思います。
国家機密の漏洩も危険
社会不安を煽ること(政府批判の拡散など)の他に、国家機密の漏洩も危険です。
一般の日本人観光客や出張者が中国の国家機密に触れる機会は少ないと思いますが、軍事施設や軍人、警察などを撮影したり、センシティブな場所でドローンを飛ばしたりするのは危険です。
中国の統制の目安については、こちらの動画でも分かりやすく説明されています。
やはり、社会不安を煽ることと国家機密の漏洩がレッドラインだと開設されています。
この「中国まる見えちゃんねる」さんは、中国本土に住みながら実名顔出しで中国の闇(不景気、格差問題、暴動など)を発信し続けていますが、全く逮捕されずに何年間も活動を続けています。
2022年の頃には、広州での暴動や、上海での反習近平デモなども取り上げていたので、さすがに大丈夫かと心配になりましたが、大丈夫なようです。
中国はあらゆる個人情報が管理されているので、もしNGな発信があれば、たとえYouTubeでの発信だろうと容赦なく捕まるはずですが、捕まらないということは中国政府のレッドラインは超えてないということです。
私自身が、中国国内にいる時からこのブログで中国政府の問題点も書いていましたが、機密情報に触れることはなく、一般に公開されている情報から私見を書いていただけなので、特に問題はないだろうと考えていました。
中国での具体的な注意事項
ここまで、中国政府の思惑と基本方針についてお伝えしました。
ここからは、具体的にどんな行動は大丈夫で、どんな行動が危険なのかについて私個人の考察をご紹介します。
反スパイ法関連以外の注意事項についてもご紹介します。
私個人の意見なので、保証はできかねる旨ご了承ください。
個人で動画を見るくらいなら大丈夫
中国はネット規制があり、中国のインターネットではYouTube、Google、LINE、X、ChatGPTなど海外のインターネットサービスは軒並み使えません。
そして、中国のインターネットで「天安門事件」など中国政府に都合の悪い情報を調べても何も出てきません。
しかし外国人のほぼ全員が、VPNを使って中国国内にいながら海外のYouTubeなどを楽しんでいます。
私も中国にいる約3年間、YouTubeで「中国経済崩壊」「習近平いよいよ失脚」のような動画を毎日のように見ていましたし、中国在住の友人にLINEでシェアしたりもしていましたが、身の危険を感じたことは一度もありません。
政府からショートメッセージが来るとか、入出国審査で引っ掛かるとか、警察から電話が来たり、警察官が訪ねてきたりといったことも全くありませんでした。
法律ではVPNは禁止されていて、VPNをチェックされるなどの噂もありますが、中国在住の外国人はほぼ全員がVPNを使っていると思います。
ちなみに、私がオススメするVPNは【中国渡航】日本で準備すべきネット規制対策【VPN/ローミング】の記事で紹介しています。
先ほど書いた通り、中国政府からすると外国人に全員帰国されても困るので、外国人が個人で静かにVPNで海外のYouTubeを楽しむことまで取り締まろうとはしないようです。
中国政府は他に取り締まらなければならないことがたくさんあるので、何の影響力もない一般の外国人のVPN使用を取り締まるほど中国政府も暇ではないと思いますし、VPNで動画を見ている外国人を全員捕まえても、その人たちを収容する収容所を作るのも大変だと思います。
それに、そこまで手当たり次第に外国人を捕まえていたら、全ての外国人や外国企業が中国から撤退して中国経済が崩壊し、却って社会動乱を招いてしまいますから、労力がかかる割に中国政府にとって何もメリットがありません。
中国政府が防ぎたいのは社会の動乱(からの共産党政権の転覆)と国家機密の漏洩であり、最も効率的にそれらを取り締まる方法を模索しています。
一説には数万人の監視員がインターネットを取り締まっているなどとも言われていますが、いくらAIを駆使しても、さすがに14億人の通信を全て監視するのは骨が折れるはずです。
外国人がVPNを使って海外のYouTube動画を閲覧してても、国家機密の漏洩や中国社会の動乱は起こりませんから、それらを取り締まるのは中国政府にとって優先順位が低いはずです。
観光旅行であれば問題ない
通常の観光旅行で、観光地だけを回っているのであれば全く問題はありません。
むしろ、他の国よりも安全かつ快適に旅行できます。
私も、新疆ウイグル自治区なども自由に旅行しましたが、とても安全に旅行できました。
チベット自治区だけは特別な許可が必要で、外国人はツアーでなければ立ち入りができないので注意が必要です。
今の中国は不景気で、外国人観光客にお金を落としてもらいたいという思惑もあるので、政府に反抗しない範囲で観光するのであれば歓迎されます。
立ち入り禁止のエリアへ入ったり、一般的な観光を超える取材活動をしなければ問題ありません。
現地の人達とお喋りするくらいであれば(私もやりましたし)問題ないと思いますが、ウイグル自治区などセンシティブな地域での民家訪問などはスパイ活動とされる可能性もあるので、控えた方が無難です。
また現地の人と接触して内部資料を受け取ったり、政府の公式発表と異なる発言を聞きだしたりするのもリスクがあります。
写真撮影時の注意
中国の街中で写真を撮影する時には、軍事施設や警察など、国家機密に該当するものが映らないように注意する必要があります。
観光地での撮影は問題ない
観光地なら、多くの中国人が自撮り写真を撮影していますし、むしろ積極的に写真を撮ることが推奨されてすらいるので、問題ありません。
ごくまれに観光地のど真ん中に軍事施設があることがありました(私が訪れた中では、広東省広州市の黄埔軍官学校や湖南省長沙の岳麓山など)。
観光地のど真ん中に軍事施設がある場合、「撮影禁止/No Photo」と大きな看板で書かれているので、そこでは絶対に写真を撮影しないようにしましょう。
人が少ない場所での写真撮影は控える
観光地や屋内以外での、人が少ないところでの写真は控えた方が良いと思います。
海の景色が綺麗だからと写真撮影をしたら軍艦が映っているかもしれませんし、田舎の風景写真を撮ったら軍事施設が紛れているかも知れません。
実際のところ、そういう私も街中のあちこちで写真は撮っていて、特に問題になったことはないためそこまでセンシティブになる必要はないと思いますが、明らかに軍事施設や警察の施設がある場合は避けた方が良いです。
事件や事故、暴動などは撮影しない
中国で事件や暴動などに遭遇することは滅多にないと思いますが、珍しいからとデモに近づいて写真を撮影すると、関係者だと誤解され拘束されるリスクもあるので、できるだけ離れた方が安全です。
また、事件や事故などを撮影することがあっても、SNSで拡散しない方が良いです。
特に血が流れている写真や動画などは不安を煽る可能性があるため、当局から警戒される可能性があると言われています。
自分自身が事故などに巻き込まれた時、証拠用に動画や写真を撮るのはやむを得ないと思います。
ドローンは飛ばさない
中国人もあちこちでドローンを飛ばしていますが、禁止エリアでドローンを飛ばすとスパイ活動とされることもあるので、どこで飛ばして良いか分からない一般観光客の方はドローンを飛ばさない方が無難です。
中国国内で地図を作成したりすることも、国家機密収集のスパイ行為と見做される可能性があります。
現地の中国人にケンカを売らない
駅や空港で並んでいる時など、日本人だと分かると

日本人は過去の戦争や福島の処理水についてどう考えているんだ?
と論争を仕掛けてくる人がたまにいます。
中国語を聞き取れない場合、ご丁寧にも近くにいる全く関係ない赤の他人が英語へ翻訳してくれることもあります。
中国国内で中国人とセンシティブな問題で論争をするのは危険がですから避けましょう。
ヒートアップすると人が集まってきて、大事になると警察が出てくる可能性もあります。
中国人は日本にも大勢いますから、もし中国人と本音で議論したいのであれば日本の中華料理屋で中国人を捕まえた方が良いと思います。
パスポートコピーは常時携帯する
反スパイ法とは関係ありませんが、中国を旅行する時には必ずパスポートコピーを常時携帯しましょう。
万一パスポート原本を紛失した時、コピーがないと中国の警察が紛失証明を発行してくれず、出国できなくなる可能性があります。
パスポートコピーは原本とは別に保管してください。
私はパスポートとビザのコピーを3部ずつ用意し、カバン、セキュリティポーチ、財布に入れていました。
日本大使館のホームページにも、パスポート原本を紛失した時にはコピーが必要と書かれています。
公安局の各分局に行き「护照报失证明(=パスポート紛失証明)」を申請することになりますが,以下のとおり,その場合の必要書類には『パスポートのコピー』が含まれています。
【出入境管理局が必要とする資料】
写真、报案证明、パスポートのコピー、臨時宿泊登記(4)紛失したパスポートのコピーは,あらかじめ準備をしていない限り用意できない書類であり,上述4点の資料を用意できない場合,公安分局出入境管理大隊側は「护照报失证明」の申請を受理しないとしており,極めて困難な状況になります。
「極めて困難な状況になります」とは具体的にどうなるのか分からないのですが、日本の外務省にもどうにもできないようです。
中国で拘束された場合
2025年6月28日にBappa Shotaさんがウイグル自治区に関する旅動画を公開し、その後2か月間音信不通になったことから、中国当局に拘束されていたのではないかと心配されていました。
Bappaさんはウイグル自治区へ行く前、香港、重慶を取材し、その後は22兆円かけた内モンゴルのゴーストタウンなども取材していました。
中国社会の問題点に深く切り込む動画を上げ続けていましたが、当局に拘束されることはなく、旅行を続けられていたようです。
これらの動画は、先ほどご紹介した「中国まる見えチャンネル」と同じく、中国の経済問題を批判する内容であり、中国社会の民族問題や国家分裂を煽る内容ではなかったため、中国政府のレッドラインを超えていなかったようです。
中国国内のSNSでアップロードされている動画の中にも、中国の景気の悪さや失業者の多さを取り上げている動画は多くあることから、中国政府の経済政策への批判は(限度はあると思いますが)全く許されていないわけではなさそうです。
しかし、ウイグル問題は民族間の分断や国家主権に関わることなので、センシティブさの次元が経済問題とは全く異なり、中国政府のレッドラインを超えてしまったようです。
この動画の中でBappaさんは
- 武装警察や軍人を撮影する
- 取材ビザではなく観光客として入国したにも関わらず、無許可でウイグル人に接触し、取材を試みる
- センシティブな地域でドローンを飛ばす
など、本記事でレッドラインを超えている危険行為としてご紹介したことを複数やってしまっています。
Bappaさんは身を賭して、プロのジャーナリストでも切り込めないレベルの深い取材をされています。これは極めて危険です。
なお、たまたま私も、Bappaさんが重慶とウイグルの動画を公開した2025年6月に重慶とウイグルを旅行していました。
ウイグルは、Bappaさんが訪問したウルムチとカシュガルを旅行しましたが、一般の観光客に過ぎない私が観光地を旅行する分には、当局から後をつけられている感じも全くなく、身の危険は全く感じずに自由に旅行できました。
また、ウイグル自治区でもVPNで海外のYouTubeを閲覧していましたが、これも全く問題ありませんでした。
従って、たとえウイグル自治区であっても普通に旅行する分には過度に恐れる必要はありません。
ただ、レッドラインを超えたら容赦ないので、一般の方は絶対にBappaさんのマネすべきではありません。
Bappaさんは、約3か月後の9月20日に釈明動画を公開し、今は日本へ帰国して安全に過ごしていることを報告しています。
しかし、この動画の内容が奇妙であったことと、動きが不自然な箇所も複数あったことから、この動画は中国当局が作成した生成AIで、実はBappaさん本人はまだ中国で拘束されているのではないか?という憶測も流れています。
Bappaさんの公式発表では何も問題はなく、日本へ帰国していると報告しているので、実際にそうなのかも知れません。
しかしBappaさんのウイグル自治区の動画はかなり危険な取材をしているので、たとえ中国当局に拘束されていても不思議ではありません。
Bappaさんは登録者数の多いYouTuberで、SNSでかなり話題になっていることから、日本の外務省には問い合わせが殺到しているのではないかと思われますが、日本政府やマスコミからは特に何の反応もありません。
今回の件で私が最も驚いたのはこの点でした。
Bappaさんが日本へ帰ってきているのであれば日本政府は入国の事実を把握しているはずで、その事実がなければ中国から帰国していないことになります。
もちろんBappaさんの個人情報なので入国状況を一般公開することはできないかも知れませんが、これだけ多くの国民が心配しているので、少なくとも日本政府から「調査中です」「状況ははあしていますので安心してください」など、何かしらの回答があっても良さそうです。
しかし何が起こっているのか誰にも分からない状況で、真相は闇の中です。
中国で2014年に反スパイ法が施行されてから拘束された日本人は17名と言われており、直近ではアストラス製薬の社員が拘束されていると報道されています。
アストラス製薬社員の件は中国政府からも公式に発表されていて、日本でもマスコミで大々的に報道されています。
ですから私は、「反スパイ法で拘束された日本人は累計17名しかおらず、しかも中国と深くかかわっている方たちだから、中国では反スパイ法で拘束されるリスクよりも交通事故に遭う心配をした方が良い」と思ってきました。
実際、この記事でご紹介した通り、中国政府が嫌がることをしない限り拘束されるリスクは少ないと思います。
ただ、それでも捕まってしまった場合、日本政府やマスコミの対応については少し不安があります。
つまり、登録者数138万人のBappa Shotaさんの動向ですら状況が分からず多くの人が不安に思っているのに、何の影響力もない一般の日本人が中国で拘束されても日本政府やマスコミは何も動いてくれないのではないかということです。
無名の日本人が捕まるリスクは低いですが、それでも捕まってしまった時に政府やマスコミが動いてくれる可能性は低いでしょう。
仕事や留学なら会社や学校が安否確認してくれると思いますが、個人旅行だと中国で捕まっても誰にも気づかれず発覚が遅れる可能性があります。
念のため中国渡航前に家族や友人に中国へ渡航する旨を伝え、毎日WeChatかLINE等で生存報告をし、一定時間連絡がつかなければ外務省へ連絡してもらうようお願いしておきましょう。
反スパイ法で拘束されている日本人は公式発表で歴代17名ですが、ひょっとしたらそれ以外にも、未公表の事例が存在する可能性もあります。Bappaさんの件で、そのことが心配になりました。
NGO「Safeguard Defenders」が、中国で失踪した場合に備えたハンドブックの日本語版を用意していますので、渡航する場合には目を通しておきましょう。
中国を安全に旅行するために
私自身は、約3年にわたる中国生活で身の危険を感じたことは一度もなく、日本で騒がれてるほど危険な国ではないと感じています。
中国政府も外国人観光客は歓迎ですから、安全で快適に旅行を楽しめます。
しかし、だからと言って日本と同じように全く自由に行動できるわけでもありません。
油断して良い国ではないですし、中国政府のレッドラインを超えたら本当に容赦なく何でもやってきます。
中国政府の意図とレッドラインを理解して、中国政府に逆らわず、安全に行動することが重要です。