
中国で英語はどのくらい通じるのでしょうか?
結論から言うと、大都市の観光地以外ではほとんど英語は通じません。
北京・上海・西安の観光地くらいなら何とかなると思いますが、それ以外の場所を英語だけで個人旅行するのはかなり難しいです。
具体的に言うと、例えば3泊4日の上海旅行で
- 上海ディズニーランド
- 夜景スポット(外灘)でインスタ映えする写真を撮る
- 有名店で小籠包を満喫
- 五つ星ホテルに宿泊
という旅行プランであれば英語だけでも何とか乗り切れると思います。ところが
- 地方都市の博物館や美術館巡り
- 三国志やキングダムに縁のある史跡を散策
- 地元の人しか行かないようなローカルなお店で食事
- 費用節約のため格安ホテルに宿泊
という渋い旅行プランを組み始めると雲行きが怪しくなってきます。
台湾と同じ感覚で中国本土へ行ってしまうと戸惑うはずです。
日本人は漢字を読めるので、他の外国人に比べたら圧倒的に有利ではありますが、英語だけで中国を旅行しようとすると、かなり行動範囲が限られます。
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試しに中国の街角で英語を使ってみた
私は広州という、北京・上海・深圳に次ぐ中国第4の都市で生活しています(日本でいうと福岡くらいですかね)。
試しにスーパーやコンビニ、地下鉄などで全く中国語を使えないフリをして英語だけで押し通してみましたが、全く通じません。
トイレどこですか?("Where is a washroom / restroom / toilet?")も通じませんし、通じたとしても英語で説明してもらえるケースは少ないです。
英語がよく通じるのはスタバの店員くらいです。スタバは外国に興味がある人達が働きたがるそうです。
マックやケンタッキーの店員はほぼ通じませんでした。
ある友人が「深圳の店で買い物をしようとしたら、"One"は通じたが"Two"は通じなかった」と言っていました。
中国人の英語能力指数
「○○(国名)は英語だけで旅行できるのか?」というブログ記事でよく参照されるのがEFの英語能力指数です。
2024年時点では日本が92位、中国が91位で、いずれも「低い」とされています。
数年前に見た時は、中国は50位くらい、日本は78位くらいで

さすがに中国人の英語力が日本人よりも高いことはないと思うが・・・
と思った記憶があります。
中国では大学入学のための共通テスト(高考)で高い英語力を求められ、読む・書く・聞く・話すの4技能を全て求められます。
なので、大卒、特に有名大学卒の人だと、ペラペラと流暢な英語を話す中国人は日本人よりも多いと思います。
日本人は東大卒でも全く英会話ができない人は多いですからね。
しかし中国の人口は日本の10倍以上です。
このEFの英語力調査が誰を対象としたのか分からないですが、もし大卒の日本人と中国人を1万人ずつ集めてテストさせたら、もちろん中国人の方が平均点は高くなるはずです。
一方で、中国各地の
- 公園で太極拳を踊ってるおばさん
- 歩道で麻雀やトランプをやってるおじさん
- トイレの清掃員
などを集めてテストしたら、さすがに日本人の平均よりも高い点数を取るとは考えづらいです。
日本人は割と誰でもTOEICを受験する印象があるのですが、中国の方が格差が大きく、英語を勉強している時点で中間層より上というイメージがあります。
日本の公園でゲートボールをやってるおじいさん達と、中国の公園で太極拳をやってるおばあさん達を集めてきて英語テストを実施したら、恐らく日本のゲートボールおじいさん達の方が英語力は高いと思います。
もしくは、日本全国の駅員と中国全国の駅員で比較しても、日本の駅員の方が英語力は高い気がします(あくまで私の肌感覚です)。
中国語は英単語を全て翻訳している
日本人なら、いくら英語ができない人でも、さすがに"PASSPORT"という単語が分からないということはないと思います。
「パスポート」はそのままカタカナ発音をしても世界中で通じるはずです。
ところが中国語でパスポートは「護照」と言い、英語とは完全に異なります。
以前、インドの空港で"Show me your PASSPORT!"とインド人の係員に怒鳴られてキョトンとしていた50代くらいの中国人を見かけましたが、彼は恐らくPASSPORTという英単語を知らなかったのではないかと思います。
例えば、中国の高校英語の参考書を見ていたら”Vitamin C”という単語が高難度の単語に分類されていました。
日本人であれば、英語を全く理解しない方でも、義務教育でアルファベットを習った人ならVitamin Cというスペルを見て「ビタミンCだ!」と分かるのではないかと思います。
ところが中国語でVitamin Cは「微生素C」というので、Vitamin Cと言われても中国人は分からないんです。
「中国では英語が全く通じない」と言われる原因は、英単語を片っ端から漢字に翻訳しているからです。
例えば、お店で「クレジットカードOK?」と聞いても、「クレジットカード」が伝わりません。
明治時代は日本人も英単語を漢字の単語へ翻訳していましたが、日本では戦後に入ってきたビジネスやIT関連の単語はそのままカタカナで表現されました。
以前、中国人から

日本語は英単語がたくさん入っているから、日本人は英語の学習が楽チンで羨ましいです
と言われたことがあります。
例えば中国人は"Car"と言われても、それが車を指すということが(学校で勉強しないと)パッとは分からないそうです。
なので、例えば”マイクをミュートにする”とか"アジェンダ"など、日本人が仕事でよく使う横文字のビジネス用語は中国では通じません。
中国はシステム化され過ぎている

観光旅行で語学を使う場面なんて道を尋ねる時くらいじゃない?言葉が通じなくて、そんなに困ることってある?
特に途上国の場合、言葉が通じなくても身振り手振りのボディーラングエッジで何とかなってしまうこともあります。
10年前までは中国もそうでしたが、今の中国は全てがシステム化されていて、意外と高度なコミュニケーションが要求されるシーンが多いです。
例えば私がある観光地へ行った時、こんなことがありました。
入口に「WeChatPayアプリで入場券をオンライン購入してください」と書かれています。
今の中国の観光地ではどこでも、このようなQRコードがドカーンと掲示されていて、「チケットは自分で買ってね」と中国語で書かれているのが普通です。
初めて中国へ個人旅行で来た日本人が、こんな看板を見たら面食らいますよね?
そして、有人のチケット売り場も見当たりません。
私がある観光地でWeChatアプリで入場券を買おうとしたところ、中国国籍の身分証が必要で、外国人はアプリで購入できませんでした。

外国人はアプリで購入できないんだけど、どうすればいいの?
と警備員に聞いたら

この道を30メートルくらい行って左手にチケット売り場があるから、そこでチケットを買いなさい。
と言われ、行ってみたら確かにチケット売り場がありました。
最近の中国の観光地はチケット売り場の場所が超わかりにくいことが多いです。
チケット売り場かと思って行ってみたら観光ガイドのカウンターだったりします。
しかも警備員のおじさんに英語で"Where is the ticket office?"と聞いても、「チケット」という英単語が伝わらなかったりします。
そして、やっと有人窓口でチケットを買い、観光地へ入場しようとしたのですが、エラーが出て入場できません。

有人窓口でチケットを買ったのに入場できないんだけど?!

ん?これは明後日のチケットじゃないか。なんで明後日のチケットなんて買ったんだよ

知らないよ。こっちは日付指定してないのに、このチケットを渡されたんだよ

じゃあ私が窓口担当へ行って、今日のチケットと交換してもらってくるから、ちょっと待ってなさい
そして、警備員が窓口スタッフと3分くらいゴニョゴニョ話していたのですが、明後日のチケットを手に持ったまま戻ってきました。

システム上、明後日のチケットしか発行できないんだって。なんでそんなゴミみたいなシステムになってるのか担当者も分からないらしい。担当者は権限がないからどうしようもない。また明後日に来なさい。
2日前のチケットが発行されて「おととい来なさい」と言われないだけマシでしたが、その日は結局入場できず、2日後に来たら無事に入場できました。
外国人が行かないようなローカルの観光地へ行くと、こういうややこしいコミュニケーションを中国語でやらなければなりません。
この例は極端ですが、中国の個人旅行(に限らず、仕事でも生活でも)ではアプリを使い倒さないといけないので、身振り手振りのボディーラングエッジでどうにもならないことが多いです。
中国は外国人観光客が少ない

そんな状況じゃ、外国人観光客は中国を自由に旅行できないじゃないか!
そうなんですよね。
中国は、中国語を少し理解できて中国のアプリを使い倒せれば世界一コスパ良く快適に旅行できる国だと思うのですが、外国人にはハードルが高いです。
最初のハードルさえ突破すれば世界一快適なのですけどね。
中国は意図的に外国人を排除しているわけではなく、むしろ外国人観光客は大歓迎なのですが、外国人のことが全く眼中にありません。
外国人を困らせようと意地悪をしているわけではなく、外国人が何に困っているのか純粋に気づいていないというか、理解できないようです。
その結果、中国旅行は外国人から敬遠されるのですが、当の中国人達は「なんで外国人が中国へ来てくれないんだろう」と深刻に悩んでいるようです。
中国側に全く悪気はなく、少し天然っぽい感じで、個人的にはアメリカと似ていると感じます。
あるシンクタンクが全世界の人々に以下のようなアンケートを行った。
「世界のほかの国々の食糧不足を解決する為に意見をお願いします」
しかし、このアンケートは大失敗に終わった。なぜなら・・・・。
アフリカでは「食糧」の意味が理解されなかった。
ヨーロッパでは「不足」の意味が理解されなかった。
中東では「解決」の意味が理解されなかった。
日本では「意見」の意味が理解されなかった。
そしてアメリカでは「世界の他の国々」の意味が理解されなかった。
中国も「世界の他の国々」という言葉の意味を理解できないのではないかと感じることは多いです。
コロナ前の2019年までは中国もまだある程度は現金社会だった(2018年くらいには既にキャッシュレスが主流ではありましたが)のですが、コロナで接触感染を防ぐこともありコロナ禍からシステム化が一気に進みました。
そしてコロナ鎖国をしていた2020-2022年は外国人が中国へ全く来なかったので、その間に外国人には使いづらいシステムが作り上げられてしまいました。
2024年以降、不景気のため、中国政府はノービザ渡航の許可を多くの国へ大盤振る舞いしています。
コロナ前にビザなし渡航が認められていたのは日本、シンガポール、ブルネイの3か国だけだったのですが、2024年末時点では日本を含む38か国にビザなし渡航が認められています。
それだけノービザを大乱発しているので、2024年に入ってからはさすがに中国の観光地で外国人をチラホラ見かけるようになりましたが、日本に比べたらまだ外国人観光客は圧倒的に少ないです。
ですので、北京・上海・西安など大都市の有名観光地を除けば、中国語ができない人が中国を個人旅行するのはまだハードルが高いです。
世界中どこを旅行しても欧米人はいるもので、インドの山奥へ行った時すら欧米人のバックパッカーが大勢いましたが、中国のマイナーな場所は本当に欧米人がいないので、それだけ外国人にはハードルが高い国なのでしょう。
日本人は他の外国人に比べてまだ中国旅行がしやすい
そうは言っても、欧米人と比べたら日本人はまだ中国旅行のハードルが低いです。
なぜなら、漢字が読めるからです。
例えば、これは鉄道の駅の行先表示ですが、行先は中国語だけで表示されており、英語には切り替わりません。
日本人以外の外国人は行先や状況を読めないので、列車番号(C7621など)と改札口(A22, B22など)だけを手掛かりに列車に乗らないといけません。
これは電車の座席の表示で、日本人なら硬い座席の車両だと推測できますが、YINGZUOCHE(硬座車の中国語読み)と書かれても外国人には分かりません。
鉄道の他にも、例えば農村のトイレへ行くと単に「男」「女」とだけ書かれている場合もあり、日本人以外だとどっちへ入ったら良いのか分からないですね。
ローカルのお店のメニュー表はこんな感じです。
昔ながらの日本の蕎麦屋のメニューと同じで、外国人が注文することは想定していません(ローカルのお店は世界中どこでもそんなものかも知れませんが)。
日本人なら「白馒头」は白まんじゅうだと何となく分かると思います。
日本人以外の外国人もGoogleレンズを使えば理解できるのかも知れませんが、ハードルは高そうです。
このメニューを見て中国語で注文するのですが、日本人ならメモに漢字を書いて店員に渡すことも可能ですね。
地方の観光地へ行くと、こういうお店しかないところだらけです。
「地球の歩き方」に載ってる観光地も、そういう場所が多いです。
英語のメニュー表なんてありませんし、写真付きメニューもありません。
筆談でどこまで中国旅行できるのか?

漢字が使えるなら、筆談すればいいんじゃない?
日本語の漢字を並べたからと言って中国語になるわけでもなく、逆に混乱を招くかもしれません。
例えば「私は明日飛行機に乗って北京へ行きます」から平仮名だけ省いて「私明日飛行機乗北京行」と書いたら理解できるのか?と中国人に聞いてみましたが、「意味不明だ」と言われました。
ちなみに中国語で「私は明日飛行機に乗って北京へ行きます」は「我明天座飛機去北京」と書きます(厳密には中国本土の漢字は異なりますが)。
地名や人名などの単語だけなら筆談でも問題ありませんが、文章となると筆談よりも翻訳ソフトを使った方が良いかも知れません。
ただ、いざという時にササっと単語を筆談できた方が便利なので、旅行でよく使いそうな中国語の単語をいくつかご紹介します。
トイレ | 洗手間 |
レストラン | 餐館 |
ホテル | 酒店 |
チケット売り場 | 售票処 |
地下鉄の駅 | 地鉄站 |
国鉄の駅 | 火車站 |
バスの駅 | 公交車站 |
空港 | 機場 |
中国で使われている漢字は日本の漢字と少し違うのですが、日本の漢字でも理解はしてくれます。

せっかく中国を旅行するなら、少し中国語を勉強してから行こうかな
と思った方には、以下の記事がオススメです。
【中国旅行・赴任者必見】サバイバルに最低限必要な中国語の学習法
中国語は発音の習得が極めて大変で、非常に時間がかかります。
サクッと勉強するなら発音は無視して文法と単語だけをサラッと勉強し、駅や観光地の掲示を読めるようになることだけを目指した方が効率が良いかも知れません。
言葉で困ったら若い人を捕まえる
毛沢東の時代に育った50代以上の人達には英語を話せる人が少ないです。
一方、鄧小平の改革開放(1978~)以降、中国でも留学が盛んになり、英語を学習する人が増えました。
20-30代の大卒であれば英語は比較的話す人も多いので、街角で高齢者と話をしなければならない時は道行く若い人を捕まえて通訳をしてもらうのも良いかも知れません。
若い人でも、大卒でなければ英語を話せない人が多いし、日本人と同じく大学入学以降は全く英語を使わず錆びついてしまっている人も多いので、若い人なら誰でも英語を話せるというわけではありませんが。。。
最近は愛国主義の観点から英語よりも中国語を重視するようになり、10代の子たちは20-30代に比べて英語力が下がっているという話も聞いたことがあります。
中国語ができなくても旅行ができないことはない
中国は基本的に治安が良いです。
日本では殺傷事件が大きく報道されていますが、さすがに殺傷事件に遭遇する確率は高くなく、日本国内で交通事故に遭う確率の方がまだ高いと思います。
中国は欧米に比べてスリや引ったくりは少なく、電車の中で居眠りをしている人も多いです。
インフラもよく整備されていて停電なども発生しないので、大きなトラブルはありません。
タクシーで変な所へ連れていかれるとか、詐欺に遭うことも今では殆ど聞かなくなりました。
今の中国は清々しいほどの監視社会で、隅々まで実名認証や監視カメラが行き渡っており、悪いことをするのは難しくなっています。
中国の個人旅行のハードルの高さは、英語が通じないことよりも、現金が使えないことだったり、観光地の入場をWeChat経由で購入しなければならない点ではないかと思います。
なので、日本でWeChatペイやアリペイの使い方を調べていけば、中国語ができなくても旅行できないことはないと思います。
中国語が通じなくて困ることと言えば
- 行きたかった観光地に行けない(入場できない)
- 食べたいものを注文できない
くらいかなと思います。
中国語が通じないからと言って、命や財産が取られるようなリスクに晒される可能性は低いです。
初めての中国個人旅行で地方都市へ行くことはお勧めしませんが、まずは北京か上海から旅行してみるのが良いと思います。
できれば少しでも中国語を学んでから旅行した方が良いです。
以下の記事で、最低限(10時間)の中国語学習で少し中国旅行を楽にする方法をご紹介しています。