R.T.さんは2年半ほどバンコクで生活し、インタビューを受けて頂いた直前の2020年2月までバンコクで働いていましたが、このたび日本へ帰国されました。
バンコクの仕事で苦労した貴重な経験をリアルにお話ししていただきました。
なお2020年3月現在、1タイバーツ(THB)は約3.5円です。
旅行で気に入ったタイへ移住を決意
タイは旅行で来たときに気に入って、治安も良さそうだったので住んでみたいと思いました。
ベトナムも旅行したときに気に入ったので、タイとベトナムで仕事を探しました。
バンコクの会社は最終面接で会社を訪問しなければならないことが多いです。
一方ベトナムは最終面接までスカイプだけで内定が出る企業も多いようです。
タイはベトナムと比べて人気が高い国なので応募者が多く、採用側が有利な立場なので企業側の要求が高いのかも知れません。
なおタイでもバンコクではなくチョンブリ県の工場の場合には行きたがる人が少ないので、バンコクに比べると給料は良いものの応募者は集まらないようです。
「現地採用はすぐ日本へ帰っちゃう人が多いけど、本当に続けられるの?」という質問をよく聞かれました。
面接の件からは話が逸れますが、バンコクで営業として取引先を回っていたときも、取引先の担当者から「現地採用の人はすぐに辞めるから信用できない」という印象を持たれていると感じました。
しばらく時間が経ってから、あるいは何回か会ってから初めて信用されるケースがありました。
1〜2年で担当が変わる駐在員もたくさんいたので、なんで現地採用の人だけそんな呼ばわりされなきゃいけないんだろうとは思っていました。
日本では自動車関係の会社で働いていましたが、似ている仕事を選びました。
バンコクでの仕事は日系企業を顧客とした自動車関係の会社での営業です。
TOEICは750点で、タイにいる間は会話で困ったことはありませんでした。
英語力は高校のときにカナダへ2週間、アメリカに1ヶ月くらい留学した経験があるのと、あとは日本にいるときに自分で音読などをしていました。
駐在員とのコミュニケーションが大変
タイの仕事の進め方は日本と比べて全体的に緩かったです。
出勤時間は厳密で遅刻厳禁だったので、その点は厳しかったのですが、例えばタイ人は仕事中にお菓子や果物を食べていました。
また仕事でミスをしても日本と比べてあまり責められることはありませんでした。
社内評価も緩く、頑張っても頑張らなくても、しっかりと評価されている印象はあまりありませんでした。
タイ人の働き方は日本と比べて緩いので、例えば見積書の作成を依頼しても期日までに出てこないことがありフォローアップが必要なことはありました。
私が働いていた会社のタイ人は、タイの中では学歴が高く育ちの良い人達が集まっていたようなので、社内のタイ人とのコミュニケーションでストレスを感じることはあまりありませんでした。
しかしタイ人は仕事でミスをしても認めない人が多いので文化の違いは感じてやりづらい部分もありました。
タイは格差社会なので、工場勤務でブルーカラーの人達と接するとまた違うかも知れません。
正直なところ、日本人とのお客さんとのコミュニケーションでストレスを感じることが多かったです。
パワハラやセクハラの話は周りの人から聞くことが多かったです(社内、社外問わず)。
日本ではパワハラ、セクハラは厳しく禁止されていると思いますが、タイでは法律上の線引きも曖昧です。
日本だと大人しくしていたのに、自由に羽を伸ばせるバンコクだと古き良き昭和時代の悪いパワハラ・セクハラ文化に浸って壊れてしまうおじさんが多いようです。
私が経験した事例だと、ある取引先の方からゴルフに誘われて、断ったら「現地採用だとお金がないから、ゴルフなんて行けないよね」などと言われました。
「家賃いくらなの?」「どこに住んでるの?」などと細かい個人情報をしつこく聞いてくる人もいました。
私の収入を特定してマウンティングをかける意図ではないかと感じ、嫌な気分がしました。
このように現地採用のことをバカにしてくる駐在員は少なからずいます。
それ以外にも私が聞いた話では
- 不倫をしている
- 会社のお金を使い込んでクビになった
- 夜のお店のお姉さんを自分の会社に雇ってクビになった
など、バンコクで壊れてしまった駐在員の事例には枚挙にいとまがありません。
例えば、家が広くドライバー付きの車が用意され、事務所にいる駐在員が自分1人で他のスタッフがタイ人しかいないとなると、自分が偉くなったと勘違いして過剰サービスを求めるようになるのではないでしょうか。
また、バンコクに多数ある夜の女性のお店に行ったとき、お金を持ってるからチヤホヤされてるだけなのに、自分に魅力があるからモテていると勘違いしてる痛い人もいます。
いくらタイが経済成長していると言っても、タイ人の初任給は月2万バーツ(約7万円)程度です。
またタイは貧富の差も激しいので、お金のある日本人と結婚したいと思って駐在員のことをチヤホヤしてるタイ人女性も大勢います。
40〜50代の駐在員男性で勘違いしている人が多い印象です。
もちろん、日本で働いていた時にも変な人はいました。またバンコクの駐在員が全員壊れているわけではなく、立派な駐在員の方も大勢います。
しかし、日本で真面目に働いて家庭的に過ごしていたはずの人が、なぜかタイへ来て壊れてしまうという例がとても多いので残念です。
タイに10年以上もいると感覚がおかしくなる人も多いようです。
タイ人女性からモテるためにタイ語の読み書きを頑張って、LINEを駆使してタイ人女性と連絡を取る男性もいます。
女性の現地採用の法人営業は「女性の現地採用」というだけで(特に40〜50代の)駐在員男性から特別扱いされますので、注意が必要です。
私の場合は160社お客さんがいたので、変な人がいるところはできるだけ避けるようにしていました。
慣れて来たら大丈夫でしたが、最初は結構大変でした。
男性からチヤホヤされるのが好きな女性にとっては嬉しい環境かも知れませんが、私は全く興味がないので困りました。
そう考えると、男性の現地採用の方がまだ働きやすいかも知れません。
現地採用も男性の方が長くタイに住んでいる人が多い印象です。
夜飲みに行くのが好きだったり、タイ人女性が好きだったりする方には快適かも知れません。
タイ人女性と日本人男性で結婚するカップルはとても多く、駐在でもタイ人女性と結婚する人はいます。
タイで働いたことを通じて、日本で働いていただけでは知ることができなかった世界に触れることができ、視野が広がりました。
例えば、日本ではなかな話す機会のない高い役職の人と話す機会に恵まれます。
何故なら、日本だと課長レベルの人がタイで部長になるなど、タイでは日本国内よりも高い役職で働くことができるからです。
またタイの日本人社会は狭いので、日本ではなかなか会うのも難しいような、自分より役職が上の人や年齢が違う人と話す機会も多かったです。
考え方が違ったり、自分より年齢が高い人と話すことで勉強になることは多かったです。
一方、タイ人から学んだこともあります。例えば、タイ人はプライベートも仕事も大切にする人が多いです。
タイは女性がよく働くし、出産してもすぐに職場復帰する人も多くて「すごい」と思って見ていました(しかしタイも日本も少子化なのは興味深いところです)。
タイは何でも日本より緩い印象ですが、逆に日本の方が緩いと感じることもありました。例えば、タイは思ったより学歴社会で、日本はその点が緩いと感じました。
またタイ人は日本人と比べて起業マインドが高い印象でした。
なぜだろうと考えてみると、日本の会社員は福利厚生が恵まれているのに対し、タイでは会社員をやっていても福利厚生が日本ほど恵まれていません。
タイ人は会社を辞めても日本の会社員と比べて失うものが少ない分、かえってリスクを取って起業などの新しいことにチャレンジすることへのハードルは低いのではないかと感じました。
日本人とタイ人の考え方が違うと感じることは色々ありましたが、タイの気候はいつも暑くて、天災も少ないので、タイ人の考え方は気候とも関係しているかもしれません。
このように、タイと日本とは色々な所が違うので面白かったです。
英語ができると手当がつく制度がありました。
病院の診察を受けたときは1回3,000バーツまで補償される医療保険に会社負担で加入していました。
全国民が加入しないといけない健康保険があり、それは月に保険料として確か750バーツが給料から引かれていました。
しかし、それだとクーラーも付いておらずタイ語しか通じないようなどローカルの病院しか通えなかったので、利用しませんでした。
また会社負担で健康診断が年に1回ありましたが、これが会社独自の福利厚生なのかタイの法律で定められているのかは分かりません。
社内のスタッフとのやり取りは英語ですが、お客さんは日系企業の日本人なので、社外は全て日本語でした。
たまにクライアント企業のタイ人と会うこともありましたが、その場合には英語を使います。
タイ人同士はメールも会話もタイ語でやり取りしており、日本人とタイ人が話すときだけ英語になります。
中には日本語を喋るタイ人が多い会社もあり、そういう会社の場合は全く英語を使わずに仕事ができます。
逆に、地方の工場などへ行くとタイ語しか話せないスタッフしかいない場合も多く、その場合はタイ語で仕事をする必要があります。
バンコクのタイ人はよく英語を話せますが、地方へ行くと英語を話せる人は減ります。
日本へ帰国後のキャリア
タイのご飯は苦手で、日本の食材は日本国内の3倍くらいするので、日本へ帰りたいと思いました。
また、タイの仕事は種類が少なく、待遇の良い仕事はタイの滞在歴が長い人達が取っていってしまいます。
外国人の最低賃金5万バーツでも生活はできますが、タイの滞在歴が長くなってくるともっと給料を上げたくなります。
しかし現地採用はあまり昇給しません(会社によりますが)。
良くも悪くも男性中心社会だと感じました。
ただ中には何度も転職して給料を上げていく人もいて、その場合には役職も上げていきます。
長く滞在するとマネージャーになる現地採用もいて、マネージャーになると月10万バーツ貰える人もいるようです。
自動車関係の仕事はタイ国内では現地採用の給料が高い傾向にありますが、2019年後半から景気が悪く(特に自動車)コロナウイルスの影響もあり2020年の見通しも不明です。
タイ景気の低迷に加えて、バンコクに住みたい日本人は多いので今後も待遇が上がらない傾向はあると思います。
バンコクにいる間は「日本に戻りたいなぁ」と思っていたので、もう日本に戻って、しばらくは日本で暮らしたいと考えており、海外の現地採用は考えていません。
大きい会社で堅い業界(メーカー、建築、不動産など)のBtoB事業では女性が昇進するのは難しいと感じました。
それもあって、次は男女比半々の会社で、営業も女性が多い会社にしました(まだ入社してないから色々分からないですが・・・)。
海外展開などをしていないドメスティックな企業では「なんでタイに行っちゃったの?」と完全に変人扱いされ、落とされました。
内定先の会社は変人扱いされなかったから良かったです。
展示会関係の会社で海外と関わる機会もあるようなので、英語を使う機会もあるかも知れません。
バンコクの仕事を退職して日本へ戻ってから転職活動をしようと考えていました。
しかし周囲に「次の仕事を決めてから退職した方が良い」と強く説得され、仕事を決めてから退職することにしました。
私は実家が首都圏なので良かったですが、もし実家が地方にある場合、日本での仕事が決まってないと日本で家を借りることができず、東京での就職活動もできないということに気がつきました。
バンコクへ来る前に、戻るときのことも考えておく方が良いと思いました。
R.T.さんの体験談を読んでタイ就職のイメージを持ってもらえたかと思いますが、以下のような不安もあるかと思います。
- タイで自分に合った仕事があるか?
- タイでビザは下りるか?
- タイに適した履歴書や職務経歴書の書き方
- 面接でのアピール方法
- 将来のキャリア戦略
こういう不安を一人で抱え込むのはつらいですよね。
タイ就職の進め方に不安がある方は、海外就職に特化したキャリアコンサルタント・グローバル人材塾の無料キャリア相談を受けてみることをお勧めします。
百人いれば百通りのキャリア戦略がありますので、ぜひプロの力を活用してタイ就職を実現してください。
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