インド ラダック メインバザール

2019年8月5日に、ラダックがジャンムーカシミール州から分離されインドの中央政府直轄地とされることが決定しました。

この決定後、カシミールの中心地スリナガルでは暴動が起き観光できない状態となっているためラダックも危ないのではないかと心配されましたが、ラダックは極めて安全で観光には何の問題もありません。

この記事はNeo Ladakhの池田悦子さんからお伺いしたお話を元に、自分なりに調べたことをまとめています。

ラダックは2019年9月時点ではインド最北部に位置するジャンムー・カシミール州に属していますが、2019年10月末を以てジャンムー・カシミール州から分離され、ラダック連邦直轄領となることが決まりました。

この決定は2019年8月5日に行われましたが、かなり強引な決定だったため大騒ぎになっています。

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ジャンムー・カシミール州とは

カシミール地図

ジャンムー・カシミール州はインドで最も北にある州(上記地図の緑の部分)で、パキスタンや中国と領土争いが発生しています。

現在はインドは上記地図で色が塗られている地域全体をインド領として主張していますが、北西の茶色い部分がパキスタン、東側の紫の部分が中国に実効支配されています。

上記地図で緑に塗られている、インドが実効支配中のジャンムー・カシミール州は、さらに以下のように分かれています。

エリア 名称 住民の宗教
北西エリア カシミール地方 イスラム教徒が過半数
南西エリア ジャンムー地方 ヒンドゥー教徒が過半数
東エリア ラダック地方 主に仏教徒

イスラム教徒もいる

カシミール地方はイスラム教徒が多いため、イスラム国家であるパキスタンへの帰属を求めている住民が多数います。

カシミール地方が揉めることになった経緯については下記記事をご参照ください。

ジャンムー・カシミール州の連邦直轄化とは

上記のような複雑な経緯があったので、ジャンムーカシミール州はインド憲法370条により特別な地位が与えられていました。

憲法370条の重要性とは
外交や防衛、通信分野については中央政府の管轄となっている。一方で憲法370条は、ジャンムー・カシミール州に、独自の立法・行政・司法制度といった一定の自治性を認めており、法案作成も自由に行なえる。同州には、国旗とは別に、州旗が存在する。

市民権や財産所有権、基本的権利に関する独自の規定があるほか、州外からのインド人が、州内で物件を購入したり、定住することも禁止している。

これまでインドはカシミール州に対して特別な地位を与えてきましたが、憲法370条を廃止してカシミール州を中央政府によって直轄管理し、州外のインド人もカシミールの土地を自由に購入できるようにします。

州外のヒンドゥー教徒が自由にカシミールの土地を買えるようにすることでカシミール地方のヒンドゥー教徒比率を高め、イスラム教徒住民のパキスタン編入への動きを牽制してインドへの帰属を強めようとしているのではないか、と言われています。

今回、インド政府は

  • 何万もの兵士を追加配備する
  • 学校を閉鎖する
  • 電話やインターネット・サービスが停止される
  • 地方の政治指導者は自宅に軟禁された。

といった強引な方法によりジャンムー・カシミール州の自治権剥奪を強行しました。

カシミールの中心であるシュリーナガルでは観光客の訪問も禁止され、厳戒態勢が敷かれています。

なお、上述の通り今までジャンムーカシミール州は憲法370条によって保護され、他所の土地の人がラダックの土地を買うことができなかったのですが、今後はこの保護がなくなります。

しかし、ラダックはScheduled Tribe(指定部族)の地位にあるため、指定部族法という別の法律によって保護される可能性があり、ラダックの人々はそれを望んでいるようです。

Scheduled TribeはSchedule Caste(指定カースト)と似たような概念で、よくまとめて"SCST"と呼ばれます。

指定カーストの詳細についてはインド在住の私が感じるカーストの実情という記事をご参照ください。

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ヒンドゥー至上主義のインド人民行動党

インドは長い間、国民会議という政党によって統治されてきました。国民会議は、世界的に有名なガンディーやインド建国の父であるネルーなども属してきました。

イスラム教を前面に掲げるパキスタンに対し、国民会議率いるインドは多文化共生を重んじ、ヒンドゥー至上主義とは一線を画してきました。

しかし、2014年に政権を取ったインド人民行動党は国民会議とは異なり、ヒンドゥー至上主義を前面に掲げています。

首相であるナレンドラ・モディは、日本の天皇陛下にヒンドゥー教の聖典であるバガヴァットギーターを献納したり、安倍首相をヒンドゥー教の聖地であるバラナシへ招いたり、と、まさにヒンドゥー至上主義よ呼ぶに相応しい外交活動を行なっています。

そのようなモディ首相が、カシミールのイスラム教徒を押さえ込むために強引な手段に出ることは、ある意味当然かも知れません。

連邦直轄化を望んでいたラダック

今回、私が2019年の8月にジャンムー・カシミール州のラダックへ行くという話をした時、多くの方から

ジャンムー・カシミールは極めて危険と聞いているけど、大丈夫なの?
と心配するお言葉をいただきました。

結論としては、全く問題ありませんでした。

ラダックはジャンムー・カシミール州に属しながらも、カシミール地方とは異なり仏教徒が多く、全く異なる地方と言っても過言ではありません。

ジャンムー・カシミール州政府はラダックに対して予算の配分を少なくしたり、ラダック人の生活に必要のないウルドゥー語を学校教育で強制したり・・・といったことをしていました。

※ウルドゥー語とはパキスタンの公用語で、インドのヒンディー語と意思疎通ができるくらい似ているそうですが、アラビア文字で表記します。

こういった州政府の方針に反発するラダック住民は、30年近くに渡りジャンムー・カシミール州からの分離を求めてきました。

モディ首相はラダック住民のために強硬策を行なったわけではなく、カシミールのイスラム教徒を牽制することが目的だと思いますが、偶然ラダック住民とモディ首相との利害が一致する形になりました。

このような経緯により、ラダックではインド人民行動党が多くの住民に支持され、ジャンムー・カシミール州の自治権剥奪と中央政府による直轄領化がラダック住民に歓迎されています。

ラダック インド人民行動党集会

私がラダックを訪れた時には、レーのメインバザールでインド人民行動党の支持者集会が連日行われていました。

ラダック住民は仏教徒なので、もともとヒンドゥー主義のインド人民行動党を支持していたわけではなかったようですが、利害が一致していることに気づいてから支持者が増えたようです。

このようにラダックではインド政府の方針に対する反発はないため、治安は極めて良好に保たれています。

政治的に問題ある地域に囲まれる安全なラダック

ラダックは西へ行けばカシミールがあり、東へ行けばチベットがあり、北へ行くとウイグル自治区があります。

このように、政治的にセンシティブな問題を抱えるエリアに囲まれてはいますが、ラダックそのものは平和で安定している地域なので、チベット文化を感じに訪問されることをオススメします。

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