
私が外国人から日本の宗教と並んでよく聞かれるのが天皇制のことです。
私は学生の頃に1ヶ月だけニューヨークで語学留学(実質・観光旅行)をしたことがあり、そのときに欧米人や韓国人と政治や社会について様々な話をしました。
その後、10年近く中国人と関わる機会が多く、また現在は1年ほどインドに住んで働いています。
欧米人、中国人、韓国人、インド人から日本の天皇制について様々な質問を受けたので、その内容についてご紹介します。
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日本の天皇はどういう権限があるのか(インド人)
中国人や韓国人で天皇のことを知らない人には会ったことがありませんが、欧米人やインド人はそこまで天皇のことを知らないようです。
- 日本に全く興味がない人→日本は共和制だと思っている
- 少し興味がある人→天皇の存在は知っているが、権限を知らない
- 日本に詳しい人→天皇が象徴であることを知っている
日本に興味がないインド人に「日本には天皇がいます」と説明すると「天皇は大統領と何が違うの?任期は何年?選挙で選ぶの?」と、矢継ぎ早に質問をされました。
天皇の存在を知っているインド人も、タイの王様のように天皇にある程度政治的な権限があると誤解している人が少なからずいました。
そういうインド人に対しては「イギリスの王室みたいなもんです(厳密にはちょっと違うのかも知れませんが)」と伝えるとピンとくるようです。
東アジア以外で日本の天皇のことがあまり知られていないのは寂しい気もしますが、日本人もイギリス以外の王室のことはあまり知らないような気がします。
と質問されたとき、即答できない人も多いのではないでしょうか?
東アジアを離れると、やはりイギリス王室の権威は凄いと感じます。
天皇は王ではないのか(韓国人)
ある韓国人から「天皇は日王と呼ぶのが正しいのではないか?」と言われたことがあります。
日本人からすると「なんで天皇が王なんだよ」とツッコミたいところですよね。
韓国政府の文書では「天皇」という文字が使われているものの、韓国の一部のマスコミやネットでは日本の天皇のことを「日王」と呼んでいるそうです。
(特に左派の)韓国人としては、日本が「皇」という文字を使っているのが気にくわないようです。
韓国の王は伝統的に中国皇帝の部下でした。
日本が「皇」という文字を使うと中国の皇帝と日本の天皇が対等になり、韓国が日本より格下ということになってしまいます。
韓国にとって「皇」という文字を使って良いのは中国の皇帝だけなので、天皇のことを「日王」と呼ぶことで韓国が日本より格下になってしまうことを防ぎたいという意図があるようです。
いまの国際社会は「全ての国が対等」という考え方ですが、現在の国際社会の価値観とはちょっと違う考え方です(全ての韓国人がそのような考え方だとは全く思いませんが)。
なお中国は政府も国民も天皇のことを「日王」とは呼びません。
中国政府は日本の首相のことを批判しても、天皇のことは絶対に侮辱しないよう建国以来かなり注意しているようです。
天皇制は前近代的だと思わないのか(ドイツ人)
一般人には憲法で保障されている「職業選択の自由」や「婚姻の自由」といった基本的人権が皇族には認められていないので、それは人権侵害ではないか?という趣旨の質問のようです。
私は普段インドのカースト制のことを「どうして差別が堂々と肯定されているんだ。どういう感覚なんだ」と不思議に思っています(詳しくはインド在住の私が感じるカーストの実情という記事をご参照ください)。
少なくともインドでは憲法でカーストによる差別が否定されていて、法律の建前上は全国民が平等ということになっています。
それに対して日本は憲法の第1章に天皇のことが書かれていて、法律上も平等ではありません。
インド人からも「インドにも昔のマハラジャ(日本の大名みたいなもの)の子孫が残ってるけど、法律的に特別な権限があるわけではない。日本はなぜ皇室を残しているんだ?」と質問されたことがあります。
もし私が(特に共和制国家出身の)外国人だったら、なぜ多くの日本人がこの「法の下の平等」と矛盾する差別制度を肯定しているのか不思議に感じると思います。
とはいえ、外国人から天皇制を「時代遅れだ」とか「差別的だ」と頭ごなしに否定されると(たとえ日頃天皇制に興味がなくても)反発する日本人は少なくないのではないでしょうか?
この感覚も不思議といえば不思議です。
なぜ首相よりも天皇の方が権威があるの?(by 中国人)
これは、日本に住んでいる中国人から聞かれたことです。
中国人にとって皇帝というのは最高権力者で、最も強い存在です。
皇帝は常に強くなければならず、力が衰えると容赦なく蹴落とされ、処刑されます。
中国は「強い人がトップに立つ」という国なので、中国的な感覚では選挙で選ばれた最高権力者の首相が最も偉くなります。
しかし日本では、首相の批判を自由できても、天皇や皇族への批判はマスコミ等でタブーとされます(ネットは自由ですが)。
中国人も天皇が重要な存在だということを知ってはいるものの、「なぜ実力で選ばれた首相より血筋で選ばれた天皇の方が権威があるのか」ということが不思議なようです。
私もこの感覚は「そういうものだ」としか説明できませんでした。
女系天皇についてどう思うか(フランス人)
英語で"What do you think about Female-line emperor?"と聞かれました。
当時"Female-line Emperor"というのが何のことか分からず、「女性天皇のこと?」と聞くと、その人から
と説明を受けました。
このフランス人はこちらがビックリするほど日本の政治や歴史について詳しい方で、「女性天皇」ではなく「女系天皇」について質問をしていたことが分かりした。
日本人でも、女性天皇と女系天皇の違いが分からない方は少なくないのではないかと思います。
この女系天皇は極めて奥が深い問題なので、次回の記事で詳しくご説明します。
外国人にとっては未知の天皇制
日本人にとって親しみのある天皇制も、外国人にとってはとても不思議なものです。
ぜひ、仲良くなった外国の方に日本の天皇制を紹介し、天皇制について話をしてみてください。