
比較的ビザを習得しやすいアジアでの海外就職や、フィリピンでの英語留学を通じて英語力の向上を目指したいと考えている方も多いと思います。
実際、アジアで留学をすればアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった英語圏の国よりは遥かに安い値段で英語を習得できますし、アジア就職であればお金はかかりません。このメリットは大きいです。しかし
という意見もあるかと思います。アジアで英語力の高い国・地域と言えばシンガポール、マレーシア、香港、インド、フィリピンなどが挙げられますが、それぞれに癖があります。
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確かに訛った英語が身につく
インドで英語を身につけている日本人は、知らない間にインド英語の影響を受けてしまうのは間違いありません。その理由をご説明します。
インド人にとって英語は外国語ではない
インドはとても広く人口も多いため、同じ国民同士でも地域によって母語が全く異なります。
例えば私が住んでいるチェンナイはタミル語という言語が母語ですが、北インドではヒンディー語という言語を母語としている人が多いです。
南インドだけでも、タミルナドゥ州はタミル語、ケララ州はマラヤーラム語、アーンドラプラデシュ州はテルグ語、カナルタカ州はカンナダ語・・・と、お互いに通じない全く異なった言語を話しています。
州を越えて会話をする場合には、インド人同士でも英語を用います。従って、インド人にとって英語は外国語ではなく、国内の日常生活で普通に使われている共通語です。
インドの言語状況の詳細については下記記事をご参照ください。
インド人の英語力は千差万別
流暢に英語を操るのはホワイトカラーなどの中間層~富裕層に限られ、食堂やオートリキシャー、清掃などの仕事をしている人たちは片言の単語しか分かりません。
そこで、それぞれのインド人の英語レベルについて簡単にご紹介します。
1. 街中のインド人
インドのインターネットやエアコンの工事業者、タクシードライバーなどは流暢な英語は話しません(とはいえ、日本や他の国の同じ職業の人々に比べたら遥かに話しますが・・・)。インドは英語ができるのは10人に1人と言われています。南インドでは英語のできない人でも最低限の英単語は知っていますので、インド式英単語の羅列でコミュニケーションを取ります。この英単語は発音も異なります。
日本語 | 英語 | ローカルインド式発音 |
水曜日 | Wednesday | ウェドネスデイ |
公園 | Park | パルク |
砂糖 | Sugar | スガール |
しかも(これはインド全体ではなく、チェンナイ限定ですが)タミル語の文法は日本語とほぼ同じらしいので、ドライバーに「水曜日に公園の門へ迎えに来てください」と言いたい場合は
“Could you please pick me up at the gate of the park on Wednesday ?”
ではなく
とカタカナ英語かつ日本語の語順で単語を羅列して伝えると
と、通じます。これは家のセキュリティとかリキシャードライバーなど、みんなそうです。
また、インドには変わったインド特有の英語があります。北インドのバラナシで「あなたの名前は何ですか?」という意味で
"What's your good name?"
と聞かれたことがあります。この"good"はヒンディー語の影響だそうです。個人的には"What's your name?"よりも"What's your good name?"の方が好きですけどね。こちらの動画では、インド特有の英語をネイティブに紹介していますが、全く伝わらないようです。
確かにインドのアパレルショップへ行くと"TRIAL ROOM"と書かれているので、それが正しい英語だと私も思っていました。
こうして、少しずつ訛った英語に侵食されていきます。
2. エリート層
日本人が仕事で関わるのは基本的にこの層になります。インド全体で大学を出ている人はほんの僅かなので、スーパーエリートです。この層の人たちは当然みんな英語を流暢に操りますが、独特な言い回しはあります。
例えば、「その件について、ご対応よろしくお願いします」と言いたい場合、インドの方は
Please proceed for the same
という言い方をよくしますが、"the same"を「その件」という意味で使うのは英語ではかなり固い表現になるそうです。しかし、インド人は電話でもよく使っています。
また、人によって間違った英語を使っていることも少なくなく、例えば「~についてご承知おきください」を
Please be noted that~
と表現する人が少なからずいます。しかし正しくは
Please be advised (or informed) that~
だそうです。
私は当初この"Please be noted that~"が正しい英語だと思って使っていましたが、ある日オンラインで英作文の添削を受けると
という指摘を受けました。
インド英語は独特の訛りがありますが、シンガポールやマレーシアの場合には中国語の影響を受けた独特な表現があったりと、アジアの国で英語を身につけるとどうしてもその国の母語の影響を受けるのは避けられません。
シンガポール、フィリピンといった国もインドと同様に、国内に複数の母語があり、異なる母語話者同士が会話をするための共通語として英語が採用されています。
訛った英語を身につけると何が問題か
インド英語には間違いが潜んでいるということで対策をご紹介しましたが、そもそも訛りのない完璧な英語を目指す必要はあるのでしょうか?その答えは、どうして英語力を伸ばしたいのかという動機によって異なります。
アジアでビジネスができるレベルを目指したい場合
インド英語は訛りがあり所々訛っていますが、シンガポールやマレーシア、フィリピンの英語にもそれぞれ特徴があり、ネイティブからすると違和感はあるようです。
しかしインド人の英語力に問題があるからといって、「アジアで十分ビジネスができるレベル」を目指すのであれば全く問題ないと思います。
旅行をしたり、現地の人と英語で会話をしたり・・・といったことができるようになるだけでも、世界はだいぶ広がります。
もしそういったことが目的であれば、訛った英語や文法的に一部間違ったを身につけることについては全く躊躇する必要はありません。
英語ができないことにコンプレックスがある場合
「欧米人と話すと気後れしてしまうから、完璧な英語を話せるようになりたい」という方もいるかも知れません。しかしその場合には、むしろインド人の「間違っていても欧米人を相手に堂々と主張するメンタルの強さ」をアジアで学んでも良いかも知れません。
先日、「英語ネイティブの英米人が変なインド英語に触れるときの感覚って、こういう感じなんだろうな」という感覚を体験しました。インドでタクシーに乗った時のことです。
と言って何度も聞き直したところ、「日本の寿司は有名ですね」と言いたかったようです。
自信満々の態度に少しイラッとしたものの、自分の英語が通じないときにまだ恐縮してしまう自分にとっては、この堂々としたインド人の態度は見習うところもあると感じました。
訛ってるインド日本語を堂々と話すインド人と出会って「訛ってても(ちょっと大変だけど)コミュニケーションできるじゃん。それでバカにされたら、バカにする方の問題なんじゃないか」と改めて考えさせられました。
1つ参考になる動画をご紹介します。全て英語の動画ですが、インド人がインド英語について質問されます。それに対して
「私は私の英語が訛ってるとは思わない。適切な英語を話している」
「私の英語は理解してもらえるんだから、ネイティブがどう思おうと関係ない」
「アメリカ人の英語は下品だ。外国人は我々から英語を学ぶべきだ」
といった回答を、インド訛り全開の英語で自信満々に話します。
この物怖じしない姿勢は、英語に対してコンプレックスのある日本人も学ぶものがあるように感じました。
いま英語はグローバル化していて、アメリカやイギリスの英語だけでなく、シンガポール英語やインド英語など、世界各地で独自の英語が広まっています。21世紀後半にはインドの経済力がアメリカを凌ぐと言われていますが、将来はインド英語が世界で強い影響力を持つようになる可能性もあるのではないでしょうか?
本当に英語を極めるべき人とは
完璧な英語を目指すのは、本当に英語が好きで極めたい人だけで良いと思います。
英語が心から好きなわけでもない人は、罪悪感や劣等感コンプレックスに刺激されて無理に英語を頑張る必要はないでしょう。それよりも、好きなことや楽しいことを追求した方が良いのではないでしょうか。
という方は、確かに更に英語力を上げる必要があると思います。但し1つ注意したいのが「どうして欧米人と対等にビジネスができるようになりたいのか?」ということです。
もし「アジアより欧米の方が優れているので、私は上に行きたい」という理由であれば、(それは個人の自由なので否定しませんが)英語の勉強は大変苦しいものになると思います。前項で言及した「コンプレックス克服のために英語を勉強している人」に似ています。
それに対して、もし「欧米の文化が好きで、本当に欧米に行きたい。欧米のことを考えるだけで気分が明るくなって楽しい」ということであれば英語の勉強がワクワクしたものになるはずです。
私は、英語は「ビジネスで使う機会が多いから」やっているのに対して、中国語は本当に好きで勉強しています。英語は「こんな表現も覚えなきゃいけないのか」という気分で勉強しますが、中国語は「こんな表現もあるのか!面白い」と感じてどんどん吸収します。
中国語より英語の方が時間をかけて頑張ってきた気がしますが、私は中国語の方が英語より自信を持って喋れます(但し、ビジネスでは使ったことがないので日常会話だけです)。
中国の歴史や文化そのものに興味があるので、中国語の勉強は本当に楽しいと感じます。「英語を極めたいけど苦しい」と感じる方は、まず「自分はどうして英語力を磨きたいのか」を考えてみてはいかがでしょうか。
嫌いな分野で頑張っていても苦しくなってしまうと思うので、むしろ自分の好きな分野を探して時間を投資することをが重要だと思います。
完璧な英語を身につけたければ追加対策が必要
もしアジア人の訛った英語では満足できず、英米人のように訛りなく英語を使えるようになりたいという方は、単にアジアで英語を使っているだけでは足りないのではないでしょうか。
その場合には、空いている時間を利用して
- オンライン英作文添削サービスを利用して正しいライティングスキルを磨く
- オンライン英会話を利用してネイティブと会話をする
といったことが必要になります。
しかし、そうであったとしても日本でオンライン英会話をするよりも早く上達できるのではないでしょうか。
なぜなら、フィリピン人、シンガポール人、インド人にはアメリカ人・イギリス人の英語をほぼ完璧に聞き取れ、英語の映画なども楽しめるレベルの人が大勢います。
従って、たとえ相手の発信が訛っていたとしても、皆さんがオンライン英会話で身につけた訛りのない英語を実践で使う場が豊富に用意されています。
日本にも英語が流暢な方は大勢いますが、日本で普通に暮らしていて訛りなく英語を身につけるのは難しいのではないかと思います。
完璧主義が成長の足かせになる場合がある
アジアで訛った英語を身につけることが不安になり、アジアでの留学や就職に躊躇してしまう方もいると思います。しかし
- そもそもなぜ完璧な英語を目指したいのかを考える
- 訛った英語でも役に立つ
- どうしても訛りが気になるなら対策も可能
ということを考慮すると、完璧を目指して何も行動しないよりは、行動した方が目標に近づけるのではないかと思います。