
「インドへ来ると人生観が変わる」と言われますが、その中でもガンジス河で有名なヒンドゥー教の聖地バラナシは「インドの中のインド」と呼ばれ、世界中から多くの人を惹きつけて止みません。
バラナシでは亡くなった人が火葬され、その遺灰をガンジス河へ流す様子を見ることができます。
バラナシへ来ると死がとても身近に感じられ、他人の視線や世間体などの小さな悩みはどうでも良いと感じられます。
私は1年ほどインドに在住しており、2019年の1月に4泊5日ほどかけてバラナシをゆっくり散策しました。
この記事ではバラナシの魅力を詳しくお伝えします。
Contents
バラナシとはどんな場所か
ヒンドゥー教では生きものは全て輪廻転生(死んでから生まれ変わること)を何百万回も繰り返すと考えられています。
しかしバラナシで死んで火葬され遺灰をガンジス河へ流すと輪廻転生から解放される(生まれ変わらなくて良い)と考えられているそうです。
と疑問に思う方もいるかも知れません。
日本ではよく「人生一度きりだから後悔がないように」といったアドバイスを聞きますが、もし人生が何百万回も繰り返される(しかも来世は何に生まれ変わるか分からない)と本気で信じているとしたら、また生まれ変わりたいと思うでしょうか?
人それぞれだとは思いますが、様々な責任を背負いながら生きていくことをあと何百万回も繰り返すと考えると私はとても気が遠くなり、もう生まれ変わりたくないと考えるのも少しわかる気がします。
そのような背景により、バラナシは
- インド中から遺体が集められて火葬されている
- 宗教上の理由で火葬できない遺体がそのまま流されている
- バラナシで死ぬことを望んでインド各地からやってきてただ死を待っている人達がいる
という、インドの中でもズバ抜けてディープな場所となっています。
インド人の同僚に聞いたのですが、昔は鉄道も飛行機もなかったので、徒歩でバラナシへ向かうしかなかったそうです。
インドは広く、例えば私の住んでいるチェンナイからバラナシまでは1,800キロ近くも離れています。
昔は、50歳を過ぎて死を予感した人は家族に永遠の別れを告げて徒歩でバラナシへ向かい、バラナシで死を待っていたそうです。
バラナシの火葬場は日本と異なりオープンになっており、布でくるまれた人が3時間かけて薪で火葬されて灰になっていくところを誰でも見ることができます。
バラナシ観光でやるべきこと8選
バラナシは「インドの中のインド」とも言うべき濃い場所で、見所が満載です。1つずつご紹介します。
ガンジス河に昇る日の出を拝む
バラナシはガンジス河の西側に位置しているので、対岸に昇る朝日を拝むことができます。日の出を見るには朝5時半くらいに起きる必要があります。
この時間は大勢のインド人が沐浴をしており、1日のうちで最も綺麗な時間帯です。
河岸には祈る人、沐浴をする人、洗濯をする人など様々な人がいます。そして、ある場所ではインド中から運ばれた遺体が薪で燃やされていたり、サドゥーと呼ばれる出家した修行者が瞑想していたり、蛇使いがいたり、明らかに麻薬らしきものを吸っている人もいます。牛もいればヤギ、犬、猿など、色々な動物もいます。
日の出は河岸から見ても素晴らしいですが、ボートから眺めるのが最高です。
ボートについては「バラナシ観光補足情報」「ガンジス河でのボートについて」の項目でご紹介します。
ガンガーアールティー(祈りの儀式)を見学する
バラナシでは毎晩18:30頃からガンガーアールティーと呼ばれるプージャ(祈りの儀式)をやっています。仏教のお経のように静かで厳粛なものではなく、インドらしい非常に明るくて賑やかな儀式です。
このプージャは河に向かって行われるため、日の出と同様にやはりボートから見るのがオススメです。
火葬場を見学する
バラナシにはガートと呼ばれるガンジス河へ降りる階段が84あります。このうち、ハリシュチャンドラ・ガート(以下、「小さい火葬場」と言います)とマニカルカー・ガート(以下、「大きい火葬場」と言います)と呼ばれる2つのガートには火葬場があります。
バラナシの火葬場はオープンで、遺体が火葬されているところを誰でも見ることができます。布にくるまれた遺体が次から次へと運ばれてきて、おそらくバラモン(僧侶)が祈りをしてから火葬されます。
大きい火葬場の場合、1日に火葬する人数は200~300名ほどで、24時間稼働しており、全て薪で火葬されます。1人の人を火葬するのに所要時間は3~4時間ほどだそうです。小さいガートの方は一部電気も使われているそうです。
火葬はヒンディー教徒に限定され、インド全土から遺体が運ばれます。火葬された後の遺灰はガンジス河へ流されますが、バラナシから遠く火葬場まで遺体を運ぶことができない人は地元で火葬してから遺灰をバラナシへ運びガンジス河へ流すこともあるそうです。
但し13歳以下の子ども、妊婦、蛇に噛まれて死んだ人、動物、事故に遭った人などは火葬されず、石に縛られて河の真ん中で沈められるそうです。
火葬場は写真撮影NGです(バシャバシャと自撮りをしているインド人は大勢いましたが、撮影禁止だといろんな人から言われたので、外国人の私達は控えた方が無難だと思います)が、ボートからは撮影して問題ないようです(本当に問題ないのか、単に黙認しているだけなのかは分かりません)。
なお話が逸れますが、ボートが火葬場の前を通るとき、国柄の違いがよく出ていました。
インド・バラナシのガンジス川でボートに乗って火葬場の前を通る各国観光客の比較
欧米人:一眼レフカメラを構えて最高の一枚を追求
日本人:とりあえず全員で集合写真
タイ人:亡くなられた方に全員で黙祷
中国人:火葬場よりカモメの餌やりに夢中
インド人:1人ずつ自撮り#バラナシ #インド pic.twitter.com/zvlHj4jXrE
— TATSUYA@アジアで暮らす🇯🇵🇮🇳🇨🇳 (@asia_kaigailife) November 19, 2019
路地を散策する
デリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイといったインドの大都市は非常に広いため、移動にはメトロやタクシーが必須です。
それに対してバラナシはそんなに広くなく、見所は狭い路地に密集しているため徒歩で観光をすることができます。
バラナシは細い路地に様々な個人商店が密集していて、歩いているだけでも非常に面白いです。細い路地の至るところに牛や犬、猿、ヤギがいます。古い建物が並んでいて非常に趣があります。
但し、細い路地にバイクが突っ込んでくるため通行には注意する必要があります。また、そこらじゅうに牛がいて糞が落ちているので地面を注意深く見ながら歩かないと踏んでしまいます。
なお、迷路のように路地が入り組んでいるので迷いやすいです。念のためGoogle Mapで場所を確認しながら移動することをおススメします。
そして深夜は絶対に路上を散策してはいけません。極めて危険です。
「不浄の地」ガンジス河の対岸でラクダに乗る
ボート漕ぎに依頼すると、対岸まで漕いでくれます(サンタナゲストハウスのボート漕ぎには依頼していないので、サンタナで対応してくれるかどうかは分かりません)。
対岸はムガルサライと呼ばれる場所で、広い砂浜が広がっていて何もありません。建物は1つもありません。
複数の日本人の方から「バラナシの対岸に建物が1つもないのは対岸が不浄の地とされていて、インド人も行きたがらないからだ」という噂を聞きました(「バラナシ 対岸 不浄の地」でググると様々な記事が出てきます)。
しかしこの件について現地のインド人複数名に聞いたところ、
という話も聞きました。
私がバラナシへ行ったのは乾季だったので対岸へ渡ることができました。そこでは馬やラクダに乗ることができます。
500ルピー(約800円)だと吹っかけて来ますが、100ルピー(約160円)で乗れました。かなり気合いを入れて値段交渉を頑張る必要があります。
沐浴をする
沐浴というのは、ガンジス河に入ることです。私は沐浴はしていませんが、ゲストハウスに泊まっていた人で沐浴をしている人が4〜5人いました。また、バラナシの街中を歩いていたら
ガンガーには死体が流されるほか、下水や工場排水などが流れ込んでいるため、免疫のない日本人が沐浴するには注意が必要。実際に沐浴したあとに発熱や下痢の症状を訴える人も少なくない。また、雨季には水量が増えとても危険なので、絶対に泳がないようにしたい。
地球の歩き方 インド 2018-19年度版 P227
と書かれています。細菌はあらゆる粘膜から入ってくるようなので、沐浴をする場合には旅行の日程に余裕をもって細心の注意が必要だと思います。
またインドへ来る前に日本で予防接種を受けるのもお勧めです。詳しくは在インド日本大使館のホームページをご参照ください。
信頼できる病院を探すだけでも一苦労なので、インドで体調を壊したらシャレになりません。知人のインド人に聞いたところ、インド人ですら体調を壊す人はいるそうです。
初転法輪の地サールナートで仏教寺院を参観する
バラナシからオートリキシャで30分ほど離れた場所にサールナートという場所があります。
サールナートは釈迦(ガウタマ・シッダールタ)が初めて説法を行った場所で、いわば仏教発祥の地と言えます。サールナートの他、釈迦が悟りを開いたブッダガヤ、釈迦生誕の地ルンビニ(ネパール)、釈迦入滅の地クシナガラが仏教4大聖地とされています。
上記の写真の場所が、釈迦が最初に説法をしたとされている場所です。
近くには、250ルピーで入場できる鹿の苑や、初転法輪を模した像などがあります。敷地内には、スリランカ人の僧侶が建てたムーラガンダクティ寺院がありま。内部の壁画は日本人の野生司香雪氏が描いたものです。また各国の寺院があります。
こちらの写真は日本寺です。日本人の僧侶は常駐していないそうですが、一歩足を中へ踏み入れると日本へワープしたかのような不思議な感覚でした。
こちらはチベット寺です。ダライ・ラマ法王の肖像画が飾ってあり、趣がありました。夏はラダックにいる僧侶たちが、冬になると(寒いので)サールナートへ来るそうです。ラダックの詳細については【秘境】インドのチベット・ラダック旅行でオススメの楽しみ方5選をご参照ください。
こちらは中国寺です。現地ガイドによると、1962年の中印国境紛争のときに中国人僧侶は全員帰国し、それ以来はタイ人などの僧侶がメンテナンスをしているそうです。
安くて美味しい日本食を食べる
私が住んでいるチェンナイを始め、日本人の多くが住んでいる大都市で日本の定食や丼を食べようと思った場合には、安くても500ルピー(約800円)ほどします。
ところがバラナシでは100ルピー(約160円)で美味しい日本食を食べることができます。日本人観光客が多いこともあり、日本食レストランは至るところにたくさんあります。
これは観光客よりも、(私のような)インド在住者にとって非常に衝撃が大きいことだと思います。インドで日本食に困っているインド在住日本人や長期バックパッカーにとって、日本食を食べられるというのもバラナシの楽しみの1つかと思います。
バラナシ観光補足情報
バラナシの観光に役立つと思われる補足情報をご紹介します。
バラナシの気候と観光にオススメの時期
バラナシ観光のベストシーズンは11月から2月頃です。
冬がオススメの理由1:乾季である
バラナシには雨季と乾季があり、冬の時期は乾季です。
バラナシはガンジス河沿いにある84の階段(ガート)が最も重要な観光地ですが、雨季には階段の真ん中あたりまで浸水します。
従って、1つの階段から隣の階段へ移動するには、一度階段を上って迷路のような街中を抜け、隣の階段を見つけてから降りてこなければなりません。
乾季であれば階段の下まで水は来ないので、河沿いを歩いて移動することができます。
また、バラナシは細い路地に牛が歩いていて至る所に牛の糞が落ちています。乾季であれば道端に糞が落ちているだけですが、雨季は牛糞が雨に溶けて濁流となって坂や階段を流れ落ちてきます。
冬がオススメの理由2:熱中症にならない
イメージ通りだと思いますが、インドの夏は容赦無く暑いです。あまり日陰もないので、楽しいからといって歩き回ると熱中症になります。
夜は冷えますが、夜に外を歩き回ることはとても危険で有り得ないので、冬の方がオススメです。
1〜3月は昼間でも気温が10度以下に下がります。コートが必要です。また、冬は空気がとても悪いです。
北インドでは燃費の悪い車などから吐き出されるPM2.5などによって大気汚染が酷いですが、バラナシも例外ではありません。
私は空港を降りた瞬間に喉が痛くなりました。冬にバラナシを観光される場合はマスクが必須です。
インド旅行のシーズンについては下記の記事をご参照ください。
インド旅行のベストシーズンは冬!その理由と注意点を解説します
バラナシでの治安
バラナシは南アフリカやベネズエラのように白昼堂々刺されることはありませんが、油断して大丈夫なほど安全な場所ではありません。
- 火葬場で薪代と称してお金を取られる
- 親切なガイドのフリをして土産物屋へ連れて行き買うまで返さない
- クスリを勧められる
などの話をよく聞きます。向こうから馴れ馴れしく話しかけて来るインド人は基本的に無視しましょう。
バラナシの治安上の注意事項についてはガンジス河は危険?女性1人でもバラナシを安全に楽しむポイントをご参照ください。
ガンジス河でのボートについて
バラナシ観光最大の目玉は、ボートからの日の出やプジャーの見学です。
河岸を歩いていれば大勢のボート漕ぎから声をかけられますので、400ルピー(600円)程度で乗ることができます。
※ネットで旅行会社の現地ツアーをいくつか調べましたが、早朝ボートに乗るだけで6500円もするようです。
ホテルでボートを手配してくれるかも知れませんので、予約の時にメールで聞いてみてはいかがでしょうか。
私が宿泊したサンタナゲストハウス(後述)では250ルピーでボートを出してもらえます(2019年1月時点)。
ボート漕ぎの方は日本語がペラペラでした。
バラナシでの宿泊
バラナシには高級ホテルがたくさんあります。インドの個人旅行はトラブルの連続で非常に疲れるので、インド旅行では敢えて高級ホテルへ泊まってエネルギーを補充するのも1つの戦略かと思います。
しかしバラナシに限っては「ルドラ」「久美子の家」「サンタナ」という日本人宿があり、高級ホテルというわけではないものの快適に過ごすことができます。
日本人宿に宿泊するメリットは、日本人バックパッカーが宿泊しているので旅行の情報交換をすることができることです。
値段は安く設備も「日本人の許容範囲ギリギリ」というところかも知れませんが、高級ホテルでは決して味わうことのできない、お金で買うことのできない価値があります。
バラナシは決して安全な場所ではありませんが、日本人宿に泊まっている限りは安全で、1人旅でバラナシへ来ている女性も何人もいました。
私はサンタナゲストハウスに泊まりました。サンタナに関する詳細は初めてのインド個人旅行にオススメ サンタナゲストハウスをご参照ください。
サンタナゲストハウスはバラナシの他にデリー、コルカタ、プリーにあります。サンタナゲストハウスについては他の記事で詳しくご紹介します。
空港からバラナシへの移動
バラナシの空港から市内への移動は、OLAで700ルピー、プリペイドタクシーであれば1200-1500ルピー程度です。
バスなら50ルピー程度で行けるそうですが、乗ったことがないため、乗り方等の詳細情報は分かりません。
私はバラナシの空港まで送迎をお願いしました。2名で行きは1500ルピー、帰りは1200ルピーでした。
※空港からの移動が可能かどうかは分かりませんが、市内ではUBERも利用できました(2019年1月時点)。インターネットの情報では「OLAは使えるがUBERは使えない」というものが多かったので意外でした。
必要な準備と警戒を怠らなければインド旅行は怖くない
インドは油断して大丈夫なほど安全ではありませんが、必要な準備と警戒を怠らなければ怖くありません。

インド旅行の計画と準備、現地で気をつけるべきことなどについて初めてのインド旅行に必要な情報まとめ!これでインド旅行は実現可能にまとめていますのでご参照ください。