インドビジネスやインド就職に興味があっても、これから果たしてインドがどうなっていくのか分からず、二の足を踏んでいる方も多いと思います。そこで、実際にインドに住んでみて、インドの経済成長について感じることをお伝えします。

これまでのインドの経済成長

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の一員としてインドの経済成長が注目を浴び始めたのは2003年頃のことです。それから15年が経ちますが、すっかり経済成長を果たして国全体のGDPで日本を追い越していった中国に対し、インドはだいぶ遅れを取っているようです。

2018年の名目GDPを見ると、インドは2,7兆ドルに対し中国は13.4兆ドルと、およそ5倍もの開きがあります。

(参考サイト:中国 インド

しかしインドは毎年7~8%の経済成長をしており、21世紀後半にはアメリカのGDPを上回るという予想もあるようです。

2032年に中国のGDPがアメリカを上回ると予想されているので、21世紀後半にはインドが中国に次ぐ世界第2位の経済大国になると予想されています。

インドで大都市のショッピングモールへ行くと、多くの人が家具や家電を買っています。

グルガオン MGモール内部

中間層(年収USD5,000~35,000)と呼ばれる彼等の旺盛な購買意欲がインドの市場を牽引していると言われています。インド大使館の資料によると、2020年の時点でインドの中間層は約4.5億人と推測されています。

もともと殆どの人々が貧しかったインドでどのように中間層が台頭して来たのかというと、鍵はIT産業の成長にありました。インドは多言語の国で、国内でも出身が異なると言葉が通じないため、インド人同士でも英語で会話をします。

そのため国全体で英語に長けている人材が多く、またインド工科大学(IIT)などを中心に優秀なコンピューターエンジニアが多数いました。インドのエンジニアが注目されるようになったのは、コンピュータの2000年問題の時です。

2000年問題とは、20世紀のコンピュータは西暦を2桁(95年、98年、など)で表示していたため、2000年になると「00年」と表示され、2000年が1900年と認識されてしまい様々なトラブルが発生すると予想されていた問題です。

この作業は地道にバグを潰していく作業だったため、コンピュータと英語のスキルを有する大量の人員が必要になりました。当時インドのIT人材はまだ有名ではなかったため、欧米企業にとってインド人の実力は未知数でしたが、インド人の人件費は欧米人に比べれば格段に安かったため恐る恐る発注してみたところ、見事成功を収めました。

この成果が欧米から高く評価され、IT関係の仕事が欧米から大量に発注されるようになりました(その結果、シリコンバレーのエンジニアが大量にリストラされました)。こうして、21世紀に入り、IT産業を牽引役としてインドの経済は成長してきました。

インドの経済成長の課題

しかし、IT産業に依存する限り、インドの経済成長はどこかで限界が来るのではないか?と私は考えています。なぜなら、英語もコンピュータもできない貧困層は永遠に豊かさから取り残されるからです。

インドの産業別GDP構成比を見ると、2016年3月時点で第3次産業(サービス業)の構成比が53.3%と高くなっていることが分かります。

日本の第3次産業比率は72%となっていますので、それと比べると低いように思いますが、まだまだ貧しい農民が多いインドで第3次産業比率が53%というのは抜きん出て高いです。

これは、インドがIT産業に依存した歪な経済成長を遂げていることを示しています。つまり、IT産業に従事する一部の人だけに富が集中しているということです。

一般的に、経済成長が始まる前の社会では主な産業は第一次産業(農業)で、多数の人々は農民です。

そこから経済成長がどのように始まるかというと、都市に輸出のための工場を立てて、農村から貧しくて仕事がない人(お金はないが時間が余っている人)を集め、安い賃金で働かせて、人件費の安さを活かした安い製品を輸出します。

世界で初めて産業革命を成し遂げたイギリスでは、「囲い込み」によって土地を失った人が低賃金労働者として都市へやってきて働きました。日本の場合は明治時代の女工哀史などの歴史がありました。

中国の場合には上海や広州などの沿海部に工場を立て、農村から安い労働者が出稼ぎに来て働きます。彼等の安い賃金を利用して製造した安価な中国製製品は世界中へ輸出され、中国は「世界の工場」となりました。

工業が軌道に乗ると、産業構成が第1次産業(農林水産業)から第2次産業(鉱工業)中心へと移ります。徐々に工場労働者も豊かになり、人件費も上がっていきます。

中国の場合も、国全体で金持ちが増えてくるため中国人向けに物やサービスを売る企業も増えてきて、中国は「世界の工場」から「世界の市場」へと変わります。こうして産業の中心が第2次産業から第3次産業へと移ってきます。

インドに比べて10年以上早く経済成長をした中国の場合、2000年時点での第3次産業の構成比率は30%台、2005年でも40%台、そして第2次と第3次の比率が逆転したのは、ようやく2012年になってからのことです。

参考サイト:中国経済の構造変化と日中経済関係

インドの話から少し逸れますが、中国の農村にはまだまだ年収20万円未満の貧しい人々がいます。

参考サイト:【経済インサイド】中国農村部「中間所得層拡大」で日本経済にも朗報?(1/4ページ) - 産経ニュース

「中国の人件費が上がった」と言われていますが、農村から貧しい人を集めてきて低賃金で働いてもらい、製造した製品を輸出すればまだまだ経済成長の余地がありそうです。

しかし、政府は農村住民の都市部への流入にストップをかけようとしています。なぜなら、中国は大都市に人が集まりすぎて都市機能が限界を超えており、家賃も高騰し、大気汚染も深刻化し、これ以上は都市に人を入れないからです。

中国の貧困層を貧困から脱出させるには、農村そのものを豊かにしていくしかなく、農民の不満が爆発して政権が転覆しないよう共産党は農村の発展にも力を入れようとしています。

ではインドも中国と同じように都市に人が集まりすぎて限界を迎えているかと言うと、そんなことはありません。グルガオンもバンガロールもチェンナイも、まだまだ荒地はあり土地に余裕はありますし、家賃も高騰していません。

インドの都市人口は30%ほどとされており、まだまだ農村に膨大な貧しい人がいることが分かります。中国の都市人口は53%だそうです。つまりインドは農村の貧しい人々が放置されたまま、都市部で英語を使えるITエンジニアだけが豊かになってしまいました。

中国のように工場を建設して農村の人を雇用する場合、学歴の低い未熟練労働者にも就業の機会が与えられます。しかしIT産業の場合、英語とコンピューターが扱えない人には任せられる仕事は何もありません。

インドで英語を自由に扱える人は10%ほどだそうなので、いまインドが高い経済成長率を誇っていても、IT産業のみに依存している限りは限界がきます。

「インドは13億人の市場」などとよく言われますが、 このままだと貧困層の9億人は豊かになる機会がありません。インドには国連が定める貧困ライン(1日1.9ドル以下)の人々も(アフリカに次いで)大勢いますし、文字が読めない人々の比率(文盲率)も高いのが現状です。

この問題を解消するためには、貧困層を雇用して製品を製造し、安い人件費を武器にインドが「世界の工場」となっていく必要があるのではないかと私は考えています。

中国の場合には香港、台湾や日本向けの輸出が中心でしたが、インドには既に多くの中間層がいるため、彼らに向けた製品の製造をインド国内で行うことによって貧困層にも就業のチャンスが与えられるのではないかと思います。

これからのインドの経済成長

インドはIT産業に依存した経済成長から脱却して初めて国全体が豊かになり、持続的な経済成長が可能になると思います。現在のインドは、2014年に就任したモディ首相の下、"Make in India"を掲げて製造業振興に力を入れています。

そして製造業は確実に成長しており、日系企業も多くの製造業が進出しています。中国に比べてゆっくりではありますが、インドの経済成長は質を転換して持続していくのではないかと思います。

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